踊る小児科医のblog

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バンダジェフスキー『放射性セシウムが人体に与える医学的生物学的影響』短評

2012年10月18日 | 東日本大震災・原発事故
以下の文章は、ユーリ・バンダジェフスキー『放射性セシウムが人体に与える医学的生物学的影響: チェルノブイリ・原発事故被曝の病理データ』について「読書メーター」に載せた感想です。

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扱いが難しくわかりにくい本だが、これを読んでも「チェルノブイリでは甲状腺がんしか増加せず、セシウムでは何の健康障害も生じなかった」という公式の説をそのまま信じていられるなら、よほど楽天的か、よほど疑い深いか、あるいは疑いを知らないかのいずれかであろう。

確かにn数もエラーバーもないし、有意差があるのか傾向なのかも記載がないことが多く、ときに断定的であり、万人にお勧めの本とは言えない。

しかし、おおまかな傾向としては数十ベクレル/kgの蓄積があれば何らかの臓器や機能の異常が出てくると推測できそうだ(何ベクレルなら大丈夫かはわからない)。

1日1Bq摂取すると200Bq(20kgの子で10Bq/kg)まで蓄積されて平衡に達するとされているので、新基準値などは問題外で可能な限りベクレルフリーを目指すべきだろう。

(7/10)

寺田寅彦の「正当にこわがる」がなぜ誤用・悪用されたのか。「正しく恐れる」では意味も目的も大きく異なる

2012年09月29日 | 東日本大震災・原発事故
寺田寅彦の「正当にこわがる」がなぜ誤用・悪用されたのか。
昨年から何度か文章を書きかけて放棄していた。
原文は『小爆発二件』寺田寅彦(青空文庫)
http://www.aozora.gr.jp/cards/000042/files/2507_13840.html
「正しく恐れる」ではなく「正当にこわがる」が正しい。

「ものをこわがらな過ぎたり、こわがり過ぎたりするのはやさしいが、正当にこわがることはなかなかむつかしいことだと思われた。○○の○○○○に対するのでも△△の△△△△△に対するのでも、やはりそんな気がする。」
寺田寅彦『小爆発二件』より(伏字は不明のまま)

この場合の「正当にこわがる」は、爆発している浅間山からおりてきて「なんでもない、大丈夫」と言っている学生や、平気で登っていった登山者に対して、むしろもっと危険性を知ってもらう必要性があるという文脈で書かれている。
正常性バイアスに対して警告を発していたと言える。

震災・原発事故後に、いわゆる安全側の学者(御用・エア御用)が頻用した「正しく恐れる」は全く逆のベクトルに作用させようとしたもの。
最初に「寺田寅彦の正当にこわがるがなぜ誤用・悪用されたのか」と書いたが、「なぜ」の答えは簡単だった。その「目的」があったからだ。

2009年の新型インフルエンザ騒ぎのときに、私もこのフレーズを用いて当時の状況に対して批判的に書いた。
「正当にこわがることはむつかしい。2009年5月1日」
http://blog.goo.ne.jp/kuba_clinic/e/ce001b7e7d6b1977172eb24d22d00a45

2009年のブログでは、原発後の御用学者と似ていて、過剰反応を抑える目的で書かれたものだ。
ただし、その標的は国民ではなく政府で、用語も「正しく恐れる」ではなく原文の「正当にこわがる」を用いている。
寺田寅彦のこのフレーズは、取り出してしまえばどちらの目的にも使うことが可能だった。

2009年のブログの中で、「放射線科学者が原発推進擁護のために用いているのはちょっと違うかもしれません」と書いていることに、今読み直してみてちょっと驚いた。
当時からその危機感はあったんだ。

「正当にこわがる」と「正しく恐れる」とでは言葉の意味合いやニュアンスは全く異なる。
このあたりは榊邦彦氏の文章が参考になる。
→「正しく恐れる」と「正当にこわがる」
 http://www.sakaki-kunihiko.jp/page048.htm

榊邦彦氏の文章を読んで成る程と思ったのは、「正しく恐れる」は「恐れない姿勢」まで含み、「正当にこわがる」は「こわがることを前提」としている、という指摘だ。
そう読めば、「正しく恐れる」は「閾値あり」、「正当にこわがる」は「閾値なし」を表現しているようにも思える。

榊邦彦氏:「正しく恐れましょう」と言われたなら、「そんなに恐れる必要はないんですよ」という方向に導かれ、「正当にこわがりましょう」と言われたなら、「甘く見てはいけませんよ」という方向に導かれるように、感じないだろうか。

榊邦彦氏:当然、用意された結論に向けて、「正しく恐れる」と「正当にこわがる」は、自然と使い分けられるだろう。
←やはり「目的」に沿って「正しく」言葉が選ばれ使われていたのだ。

榊邦彦氏:思えば、この「正当にこわがる」は奇妙な言い方だ。「正当に」という知的な語彙と、「こわがる」という感覚的な語彙が同居している。しかし、この知性と感性の同居こそが、肝要なことなのではないか。

伊東乾「寺田寅彦とソクラテス あれから1年、正しく怖がる放射能」
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20120426/231416/
←参考になるところはほとんどなかった。
この著者の写真に見覚えがあると思ったらtwitterで早川先生から批判されていた人か。
http://togetter.com/li/136427

『喫煙四十年』寺田寅彦
http://www.aozora.gr.jp/cards/000042/files/42257_18493.html
「もしあの時に煙草を止めていたら胃の方はたしかによくなったかもしれないが、その代りにとうに死んでしまったかもしれないという気がする」
←喫煙者の非論理性は今に始まったことではないが。

寺田寅彦「煙草の「味」とは云うもの、これは明らかに純粋な味覚でもなく、…いわゆる五官の外の第六官に数えるべきものかもしれない。してみると煙草をのまない人はのむ人に比べて一官分だけの感覚を棄権している訳で、眼の明いているのに目隠しをしているようなことになるのかもしれない」(>_<)

当時タバコの害に関する医学的知識が不足していたとは言え、寺田寅彦もタバコについて「正当にこわがる」ことはできなかった。
江戸時代に貝原益軒がすでに依存症について警告しているので、博識で論理的思考のできる(はずの)寺田寅彦なら自分の状態を把握できたであろうに。

話がそれた。伊東乾氏や御用・エア御用の面々は、国民の側で「正しく理解」して「正しく怖がる」必要があると強調するが、実際には多くの人たちは情報を主体的に取捨選択して判断し、「正当にこわがる」ことができるようになっている。
ヒステリックにゼロリスクを求めている人などどこにもいない。

そもそも今日の混乱を招いた最大の原因は、「国民は愚かで情報をストレートに出せば「正しく理解」することが出来ずにパニックが起こる」という前提の元に、情報を隠蔽し事実を過小評価して誤摩化そうとした政府や学者の側にある。
それを信じて被曝を強要された国民の怒りは決して消え去ることはない。

結局、「正当にこわがる」にせよ「正しく恐れる」にせよ、誰が言っているかで簡単に判断できたはずだ。
原発事故の責任は政府・官僚・事業者・学者・マスゴミという原子力ムラにあることは明らかなのだから、その犯人が自らの罪状を軽くするために隠蔽し過小評価を行うのは当然すぎる行動だった。

原発ゼロでも核燃サイクル堅持を喜ぶ青森県の悲喜劇 中間貯蔵施設をどうするか 最低→最悪政権の次の選択は

2012年09月20日 | 東日本大震災・原発事故
 昨年の福島原発事故以来、子どもの低線量内部被曝の問題についてずっと考え続けてきた。この原稿もそれに関連した内容にするつもりだったが、締切直前に飛び込んで来た呆れ果てた一連のニュースに触れざるを得ない。経緯をざっと見直してみよう。

 九月六日、三村知事が細野原発相と会談したが成果なく、七日、六ヶ所村議会がガラス固化体受け入れ拒否・使用済み核燃料搬出の意見書を可決。十三日、原発ゼロ目標を掲げるも再処理事業は継続。十四日、大間原発・中間貯蔵も継続、MOX工場建設も容認。十六日、東電の東通原発には慎重姿勢(完全には否定せず)、という県内原子力施設の全面解禁宣言と言える結末だ。

 原発ゼロ目標と核燃サイクル推進とが両立し得ないことは小学生でもわかる理屈であり、どちらの立場から見ても無責任・無定見で、選挙目当ての方便としか言いようがない。

 原子力ムラでは、嘘・まやかし・空約束・問題解決先送りによる虚構の上に神話を築き上げてきた。福島原発事故によって神話が崩れ去り虚構が明らかになったにも関わらず、恥ずかしげもなく同じことを繰り返そうとしている。しかもその選択は、敗戦が決定的となった後も本土決戦を叫んで犠牲者を増やし続けた旧日本軍と同じように、青森県にとって最悪の結果を招く可能性が高い。

 全くの絵空事である「第二再処理工場」を前提としたむつ市の中間貯蔵施設をどうするかが今後一つの焦点になるだろう。

 個人的意見としては、この空約束を盾として全国の原発からの搬入を拒否すれば、六ヶ所のプールはすぐに満杯になり、原発の再稼働はほとんど不可能になる。その上で、六ヶ所の使用済み核燃料は返還せずに金蔓として残しておき、少しでも安全性の高い中間貯蔵施設に移していくという案を考えている。

 無論、脱原発を目指す人の多くはこの意見に反対するだろう。私自身、自宅から車で十五分のところにこんな施設ができるとすれば絶対に反対する。解決不能の問題の一つだ。

 ここまで書いたところで、十九日には原発ゼロ目標が棚上げとなり、もんじゅ廃炉も覆された。昨年夏のポスト菅政局の時に「最低と最悪の選択」と書いたが、末期状態にある野田政権の後に、どのような選択を示すのか、見通しは暗いが希望を捨てることは出来ない。

(青森県保険医新聞掲載予定)

「福島のメル友へ 長崎の被爆者から」をみて 「福島の人間だからできること」とは何か

2012年08月25日 | 東日本大震災・原発事故
録画しておいたNHK「福島のメル友へ 長崎の被爆者から」をみた。
(8/5放送、再放送も8/12に終わってます)
http://www.nhk.or.jp/etv21c/file/2012/0805.html
以下は気になった部分のメモであり番組全体の要約ではありません。

この番組、いろいろな断片、側面が切り取られていて、制作意図が読み取りにくい。
現実を追っていったら現実の複雑な様相をそのまま映し出したのだろうと思いますが。
この女子高生達は、福島の小児科医の講演と母親の説明にも関わらず、「低線量被曝の影響は殆ど無いに等しい」とは受け止めていない。(当然だが)
最後の「福島の人間だからできることがある」というのは難しい問題提起で、人によって逆方向の解釈も可能かもしれない。

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福島の女子高生の母親が学校の講演会に。

福島県小児科医会・市川陽子医師「昨年から今まで確かに要らぬ放射線を私たちは浴びています。実はそれは将来に不安を残すような健康被害を起こす可能性というのはもうほとんどないに等しい。将来結婚して妊娠された場合に赤ちゃんを産んで大丈夫だろうかという心配はほとんどないに等しいと考えて下さい」

この後、母が娘に「一度に100mSvは少し影響は出るが1mSvは超えても気になることはない」と説明。
http://pfx225.blog46.fc2.com/blog-entry-1297.html

4月、信夫山、母娘で花見。2mSv/h。
これまで放射線量の高いところを避けてきたが思い切って気分転換。
今まで通りの故郷の景色。。
(撮影のためではないだろう、他に誰も映っていないが)メールでは「他に人もたくさんいた」と。。
進学先を福島県内にするかどうか。。

(女子高生同士の会話)
大学に行く時に福島から来たと言えない。感染症じゃないのに。
芸能人も岩手や宮城の方に行って福島にはあまり来ない。

(過去のニュース映像)被爆者が結婚を反対され自殺。

(長崎の被爆者の団体)
福島のために何ができるか。手紙を出したらどうか。何を書いたら。。

長崎の被爆者が福島の高校生に送った手紙。
福島の高校では生徒に見せていなかった。
先生方で回覧。過剰に心配しすぎるのではないかと。
手紙の中には将来のガンや低線量被曝の影響を強調する部分も。

広瀬さん(長崎の被爆者)と女子高生の直接対話。
結婚も難しいのか。生まれてくる子どもは。。
低線量被曝の実験の対象になっているのでは、と。

広瀬さん「被爆者手帳は黙っていて手に入ったものではない。20年30年と検査し続けて未然に発見していくために福島の人が声を上げて」

福島の女子高生(友人3人)からのメール
「福島の人間だからできることがある。どんな第一歩を踏み出せばいいのでしょうか」
自ら行動を起こそうとする強い意志が芽生えていた。

広瀬さん
心が通じた。これで終りではなく始まり。
放射能に正面から向き合って生きる心の輪が広がり始めている。

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低線量長期被曝は全部修復できるという「山下・市川説」はDNA損傷メカニズムから説明できない机上の空論

2012年08月17日 | 東日本大震災・原発事故
多くの人は、何となくおかしいような気がするけど、そうなのかな、たぶん専門家が言うからそうなんだろうと納得させられている(納得できないでいる)のではないかと思います。

簡単に言うと、1回の高線量で100の細胞が障害されると、99個は修復できても1個は完全に修復できずに将来がん化する可能性がある。一方、低線量長期被曝なら細胞が1個ずつ障害されても、一つずつ完全に修復できるので何年住み続けてもがんは増えないという理論。(仮説と言っても良いだろう)

こんなの証明されているのかと思い色々読んだけど、そんな説明はどこにも出て来ない。例えば1つの細胞レベルで「1/100の確率で修復エラーが起こる」と仮定すれば「100個×1/100」も「1個×100×1/100」も同じ1のはず。算数の問題。ペトカウ効果では低線量長期被曝の方が危険。

低線量長期被曝はほとんど全て修復できるという「山下・市川理論」が正しければ自然放射線の危険性は考える必要がないということになる。そんな荒唐無稽な話はない。だから1mSvという基準がある。1mSvですら「原発が爆発したんだからそれくらい我慢しろ」という理不尽は話。

福島県立医大・福島市の小児科医・大川小学校の演題から 東北学校保健・学校医大会報告(7/7青森市)

2012年08月14日 | 東日本大震災・原発事故
 7月に開催された標記の学会の出張報告を転載します。(「八戸市医師会のうごき」掲載予定)
 なお、以下の要約が演者の意図と異なっている部分がある可能性があることをおことわりしておきます。

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第24回東北学校保健・学校医大会
 平成24年7月7日~8日 青森市 ホテル青森

「すこやかな子ども達の成長を願って~学校健診のあり方~」をメインテーマに開催された。
 青森県からは、一般演題で国立病院機構青森病院の和賀忍院長による「成育医療研修会活動について」の発表があり、シンポジウム「これからの学校健診と健康教育」では弘前大整形外科・石橋恭之准教授による「岩木地区小中学校における運動器検診の取り組み」が紹介された。
 ここでは震災関連の講演・演題のみを報告する。

「震災・原発事故と子どもの健康について」
    福島県立医科大学小児科学講座 細矢光亮 教授

 震災後、超急性期(~3日)、急性期(~14日)を経て、放射線被曝対策を中心とした慢性期が現在進行形で続いている。当初は水の確保から、DMAT拠点としての機能、避難地域からの患者の中継基地、医療従事者の放射線被曝対策などに追われたが、小児の救急患者は目立たなかった。5日目頃からガソリン不足の中で各チームによる巡回診療などを実施した。
 SPEEDIでは甲状腺等価線量100mSvの範囲が北西に広く分布した。文部科学省による学校20mSv基準と内閣参謀の辞任発言が県民の不安を助長した。現在、約20万人が避難し、4万人が県外に避難しているが、住民票を移していない人も多数いるものと推定される。
 原爆やチェルノブイリの経験から、福島では甲状腺がんリスクの増加だけに注意が必要であり、他の疾患は増えないものと想定されている。
 県民健康管理調査は震災時に県内に居住していた全員に基本調査を行い、小児36万人には3年間で甲状腺超音波検査を実施し、2年毎にフォローする。リスクの高い地域から順に検査が行われ、コロイド嚢胞や結節が一定の割合で検出されているが、要再検となった少数例以外は放射線の影響とは関係のない元々あった所見であり、本格調査は3年後からとなる。(数値のメモや公表は控えるよう求められた)
 県外に避難している人も各地域で検診が受けられる態勢になる。生活スタイルの変化による影響や心の健康度についての調査・対応も実施し、心身の健康を見守る態勢を整えている。

(追記:36万人の内訳は、浪江・飯館・川俣の先行調査4千人、避難地域3万6千人、全県民の子ども32万人であり、小児36万人ということではないようです。)

「学校管理下に子どもを亡くした保護者に対するグリーフ・ケアの経験 ~石巻市・大川小学校の事例に基づいた提言~」
    宮城県医師会:たかだこども医院 高田 修 先生

 多くの児童が死亡し行方不明となった大川小学校において、共感を元としたグリーフ・ケアが必要とされるはずだが、遺族の間でも事情の違いがあり、学校・教育委員会側の説明も二転三転するなどの難しい状況にあった。
 NPOのサポートチームの活動を通じて、学校管理下で子どもの命が最優先に守られるべき状況で起こった惨事であることを共通認識として、子どもの存在を中心において、まず事実を知り理解することによって、背負いきれない荷物を整理して少しずつ前に進むことにつながってきている。

「震災後の心身の健康を守るために ~福島県の小児科医として~」
    福島県医師会:いちかわクリニック 市川陽子 先生

「放射線と子どもの健康」講演会を通して、予想以上に正しい情報が伝わっておらず、安全情報はウソだという思い込みがあることを感じた。
 放射線被曝は蓄積されずほとんどは修復されること、福島の子ども達には下痢や鼻出血などの症状はあり得ないこと、日本の食品の暫定基準値は旧ソ連の事故直後よりも遥かに低いこと、チェルノブイリとは事故の規模、対応、医療・経済事情が異なり、福島の子ども達に甲状腺がんやその他の健康被害が出る可能性は極めて低く、胎児への影響もないことなどを伝えている。
 可能性の低いリスクを強調するよりも、放射線以外のリスクを少なくする生活を心がけることが大切である。
 県内の健康調査の結果、外部被曝は90%以上が年間1mSv以下で、避難地域の一部に高めの住民もいたが、妊婦・子どもは含まれていなかった。内部被曝も99.9%が預託実効線量で1mSv未満であり、将来への健康影響は極めて低いことが明らかになりつつある。

脱原発には自前の電力で発言権と心の自由を 太陽光発電で流れを変える 青森の医療機関100軒に設置を

2012年07月15日 | 東日本大震災・原発事故
■ 太陽光発電についてENEOS(Panasonic(旧サンヨー)の太陽光パネル)の説明会あり。蓄電池、燃料電池(エネファーム)も。現時点で現実的な選択肢は太陽光発電システム単独か。八戸市は補助金枠が切れそう。日産リーフの蓄電池パワーが話題に。2日分の電力供給できると。

■ 八戸市の太陽光発電システム導入支援事業は1kW当たり2万円(上限7万円)しかない。青森市の1kW当たり3.5万円(上限14万円)の半分。青森県は補助金がない。来年度まで待って7万円補助を受けるよりも早く設置した方が良いだろう。

■ 固定価格買取制度は払うより貰わないと損。太陽光発電は約10年で元が取れるし、早死しても発電しつづけてくれるのでリスクは少ない。官邸前デモや集会も大切だけど、持ち家がある人みんなが太陽光パネルを設置しだせば、流れを一気に引き戻せるはず。

■ これだけ国民の願いを無視して、原発再稼働・核燃サイクル存続へ無謀とも言えるゴリ押し路線をあからさまにしている政府・電力会社・経済界・原子力ムラに対して、圧倒的多数が完全にノーの意思表明を突きつけることが必要。

■ 青森県の医療機関100軒に太陽光パネルを設置できたら大きな力になるはず。今まで頭の中でわかっていても取り組んでいなかった課題。足下から一歩を。

■ 現時点では燃料電池(エネファーム)を併置しても完全自立システムはちょっと無理のようだ。リーフの蓄電池を使えばかなり違うが初期投資が大きすぎる。しかし、平時(特に日中の電力ピーク時)に電力会社に頼らないこと、差引でプラスになることは大きい。停電時の対策は特にしないことに。

■ 電力自由化になれば東北電力をやめて原発のない沖縄電力から買おう。(ということも可能なんだろうか)

広瀬隆講演会 9/21弘前 22八戸 鎌仲ひとみ監督『内部被ばくを生き抜く』上映会(計画中)その他の情報

2012年07月15日 | 東日本大震災・原発事故
■ この1ケ月(5週間)で4回青森に通ってちょっと疲れた。禁煙、小児科、学校保健、脱原発・核燃。今日は進展あり。情報をこの後お伝えします。太陽光発電も具体的検討に入りたい。深夜になってNHKのエネルギー討論番組を見始める。

■ さようなら原発10万人集会 7/16 代々木公園 11:00~ 青森県保険医協会も出店します(会場マップの11番:一番良い位置)。脱原発シールや書籍を販売します。原発・核燃施設の集中する青森県で脱原発・反核燃を訴えつづけている医師・歯科医師の団体(会員約1100名)です。

■ 広瀬隆氏講演会 9/21(金)18時 弘前文化センター(500名)無料 主催:青森県保険医協会 9/22(土・祝)14時 八戸市公会堂文化ホール(500名)無料 主催:1万人訴訟原告団

■ 鎌仲ひとみ監督『内部被ばくを生き抜く』上映会+意見交換会(未定)八戸市(被災地扱いで無料?になるか)。青森・弘前・むつでも(500円)。DVDは取得済み(Wakako先生提供):いま借りてますがまだ観てません。これから計画しますので随時お知らせします。

■ 「なくそう原発・核燃 あおもりネットワーク(仮称)」311県民集会実行委を発展的に解消し緩やかなネットワークを。準備会で検討中(参加団体・個人呼びかけ予定)。会費無料(カンパ)。FB, twitter, MLなどのネットで情報共有や情報発信を。8月下旬に記者会見・設立総会。

■ TwitNoNukesAOMR ツイット・ノーニュークス青森 7/22 13:30 青森駅前公園集合~ニコニコ通り~県庁前~新町通り~県庁横 http://twinonukesaomr.blogspot.jp/ https://twitter.com/twitnonukesaomr

■ 反核ヴァラエティー PEACE LAND a go! go! 楽しくマジに考える原子力とエネルギー 7/29 13時 八戸市はっち1F 無料 原子力戦隊スイシンジャー 三浦秀一・山形芸術工科大学・環境デザイン学科准教授(自然エネルギー) http://peaceland.jp/PeaceFiles/event.html#Anchor-23610

■ あおもり未来教室 7/21 13時 青森県民福祉プラザ4F 伴英幸さん(原子力資料情報室共同代表)「原子力委員会の傾向と対策」+シンポジウム 参加費:800円 主催:みらいアクション青森、PEACE LAND オプショナルイヴェントあり http://peaceland.jp/PeaceFiles/event.html#Anchor-38066

■ 福島からの農業者支援サークル(5/30東奥日報記事)「福島の農家 弘前で仕事を 農地を無償貸与 収穫物買い上げ 市民有志 支援サークル設立」

■ 2013年3.11集会や4.9集会などについて(全く未定)

■ 脱原発、新エネルギーで新規事業、雇用促進、地域活性化に繋げようとしている地元企業やNPOなどの勉強会・シンポジウム開催(未定)。原発・核燃にしがみつかなければ青森の経済は沈むのではなく、しがみついていれば沈んでしまう(脱原発は儲かる)ということを経済界にアピール。

人工呼吸器患者を人質にした原発再稼働は卑劣なすり替え 青森県保険医協会「再稼動抗議・停止要求」声明

2012年07月05日 | 東日本大震災・原発事故
→PDF

                       2012年7月3日
内閣総理大臣
野田 佳彦 殿
                     青森県保険医協会
                      会長 大竹 進

 大飯原発再稼動に強く抗議し、直ちに停止することを求める

 2012年6月16日、野田政権は関西電力大飯原発3・4号機の再稼動を決定し、7月1日には3号機を再稼働させた。
 全電源喪失/メルトダウンの原因が地震によるものか、その他の要因か解明されていないにもかかわらず、再稼働の前提としての安全基準を、たった3日で決めた。班目原子力安全委員長も指摘するように総合的安全評価とはいえない。
 住民の安全対策も先送りされ、防潮堤、フィルター付きベント装置、免震事務棟、さらには事故発生時の避難計画まで準備ができていない。

 一方、再稼働の理由として「夏場の電力不足」が喧伝され、細野大臣は報道番組で「人工呼吸器の方々のために原発による継続的な電気の供給が必要」という旨の発言を行った。これはすりかえである。
 人工呼吸器使用者に必要なのは原発の電気ではなくて、いつでも起こりうる停電時の対策である。人工呼吸器の停電対策を口実に原発を容認させようとする大臣の発言には、憤りを感じざるを得ない。
 再稼働の前に、人工呼吸器に適合した十分量のバッテリーや足踏み吸引器を準備すること、長時間の停電に備え人工呼吸器使用者が全員受診できる拠点病院を定め、停電対策を整備、充実するべきだ。

 私たちは、国民のいのちと健康を守る医師、歯科医師の立場から、大飯原発再稼動を決定した政府に強く抗議するとともに、関係する住民の声に耳を傾け、再稼働を速やかに中止することを下記に求める。

           記

一、大飯原発再稼動に強く抗議し、直ちに停止すること。
一、人工呼吸器使用者の不安にこたえ、あらゆる対策を早急に実施すること。

参考資料

人工呼吸器使用者の停電への備えに関する調査の結果について(東京都 2011/6/1)
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/joho/soshiki/hoken/shippei/oshirase/jinnkoukokyuukiteidennhenosonae/index.html

上記の調査をふまえ対策が進んでいます。

在宅で人工呼吸器を使用している方の災害時支援を強化!(東京都 2012/3/28)
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2012/03/20m3s500.htm

「東京都在宅人工呼吸器使用者災害時支援指針」の概要
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2012/03/20m3s501.htm

地震の様式例
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2012/03/DATA/20m3s500.pdf

厚労省:計画停電が実施された場合の医療機関等の対応について(2012/6/25)
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002doat.html

シンポジウム・震災と停電をどう生き延びたか
福島の在宅難病患者・人工呼吸器ユーザー(他)を招いて
http://www.arsvi.com/d/d10e20110918.htm

節電・北海道:計画停電 「早期の具体策を」 医療機器“命綱” 患者から強い声 /北海道
毎日新聞 2012年06月23日 地方版
http://mainichi.jp/area/hokkaido/news/20120623ddlk01040275000c.html

人工呼吸器:電源に保険適用 在宅患者、停電対策で
毎日新聞 2012年05月12日 大阪朝刊
http://mainichi.jp/area/news/20120512ddn001040002000c.html

「子どもに関しては楽観しない方が良い」鹿児島大・秋葉教授「小児の放射線被ばくと健康への影響」を聴いて

2012年07月04日 | 東日本大震災・原発事故
鹿児島大学・秋葉澄伯教授の小児の放射線被ばくに関する講演を聴いてきました。
ネット上では御用学者のリストにも名前が載っているのでどうなのかと思っていましたが、低線量被曝に関しては「証拠がないことは影響がないことを必ずしも意味しない」と一貫して慎重な姿勢を示し、3.11以降の専門家の乱暴な発言が混乱をもたらし学者への信頼を失わせたと批判していました。

がんや遺伝的影響以外の放射線被曝の健康影響については白内障などを除いて殆ど触れられませんでしたが、この講演を聴く限りでは「安全側」の御用学者とは一線を画しており、なぜリストに載っているのか根拠が希薄であると思われました。

以下、講演メモの中からポイントと思われる点だけを抜粋しますが、あくまで備忘録としてのメモであり、秋葉氏の意図と異なる可能性があることをおことわりしておきます。

2012.6.30 青森県小児科医会総会・講演会
「小児の放射線被ばくと健康への影響」
鹿児島大学 秋葉澄伯教授

秋葉教授が「ショッキングなデータ」として紹介した最新の「CTによる白血病と脳腫瘍増加」の論文。
まだ全文に目を通していないので、SummaryのFindingsの部分だけ引用しておきます。

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Radiation exposure from CT scans in childhood and subsequent risk of leukaemia and brain tumours: a retrospective cohort study
Mark S Pearce
The Lancet, Early Online Publication, 7 June 2012
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2812%2960815-0/abstract

Findings
During follow-up, 74 of 178 604 patients were diagnosed with leukaemia and 135 of 176 587 patients were diagnosed with brain tumours. We noted a positive association between radiation dose from CT scans and leukaemia (excess relative risk [ERR] per mGy 0.036, 95% CI 0.005―0.120; p=0.0097) and brain tumours (0.023, 0.010―0.049; p<0.0001). Compared with patients who received a dose of less than 5 mGy, the relative risk of leukaemia for patients who received a cumulative dose of at least 30 mGy (mean dose 51.13 mGy) was 3.18 (95% CI 1.46―6.94) and the relative risk of brain cancer for patients who received a cumulative dose of 50―74 mGy (mean dose 60.42 mGy) was 2.82 (1.33―6.03).

過剰相対リスク excess relative risk [ERR] ERR=RR-1
 白血病 0.036/mGy
 脳腫瘍 0.023/mGy
相対リスク relative risk [RR] <5mGyと比較して
 白血病 30mGy以上 (平均51.13mGy) で3.18
 脳腫瘍 50-74mGy (平均60.42mGy) で2.82
(1mGy=1mSv)

1mSvのCT外部被曝で白血病が元の割合に対して3.6%(元が1%なら1.036%)、脳腫瘍が2.3%増える(同1.023%)
(twitterで最初に「1mSvのCT外部被曝で白血病が3%、脳腫瘍が2%増える」と書きましたが不正確なので訂正します。)
30mG以上(平均50mGy)で白血病が約3倍、50mGy以上(平均60mGy)で脳腫瘍が約3倍。
-------------------------------------------------

放射線 α線:1Gy=20Sv γ線:1Gy=1Sv
交絡
(例)放射線による心筋梗塞のRR=3.3と出た場合でも、喫煙(RR=5.0)で分けると放射線のRR=1になる

急性
0.5Svでリンパ球減少、0.5-1Svで脱毛(別の説も)、2-3Svで脱毛・皮膚紅斑、4Svで死亡
LD50は4Grよりも高くなっている(原爆当時の医療環境のデータ)
10Grで急性の中枢症状

JCO事故:16-20GyEq ←染色体から推定
チェルノブイリ:skin burns kills patients

DNAの二重鎖切断
安定型染色体異常  →長期間増殖 →がん化
不安定型染色体異常 →数回増殖  →がんリスクと関連なし
 主に電離放射線被ばくによる 1対1で安定型を生じる
どんなに低線量でも染色体異常は起きている

遺伝的影響(2010)
「夢千代日記」の夢千代は被曝二世の白血病だったが、ヒトでは明確な証拠得られておらず。
ないと否定できるわけではない。
胎児被曝 Oxford prenetal X-ray survey (1975)
 20mSvで白血病・がんのRR 1.47
原爆では在胎8-15週の被ばくで小頭症・MR増加
小児がん:増加せず 大人のがん:増加

胎内被曝
 母:染色体異常:増加 児:染色体異常:増加せず
 しかし、数十mSvをピークとした低線量で染色体異常増加あり、
 感受性の高い人かと。
がんのリスク:胎児<小児

後影響 late effect
原爆で白血病は2年後から増加、5-6年でピーク、減少し、後年増加。
固形がんは10年後から増加して増え続けている。
チェルノブイリでは4年後から甲状腺がんが増加。
マーシャル諸島の水爆では10年後から甲状腺がんが増加。
福島も4年では安心できない。10年は見守る必要。

固形がん ERR、EARともに若い人ほど増。 ※
乳癌は差なし。肺がんは逆。「種類・部位によって異なる」。
小児は余命が長いので累積リスクは高まる。
甲状腺がんは15歳以上では増加していない。

低線量被ばく
原爆・白血病は線形二次、固形がんは低線量ではLNTの直線よりもむしろ高め。 ※
閾値ありやホルミシス効果は否定。放影研では喫煙の影響かと。
インド自然放射線では生涯500mSvまで全く増えていない。
1回の被曝との違いかと思われるがよくわからない。

※ ERR、EARの説明と、原爆の低線量でのリスクについて、放影研の論文と今中先生のコメントを下記のページに掲載しています。低線量でむしろ高めという今中先生の判断と一致しています。

「1Gy被曝でがん死リスク42%増」の意味 LNT仮説が「哲学ではなく科学」であることは明白 中川恵一批判(2012年03月19日)
http://blog.goo.ne.jp/kuba_clinic/e/2ad492da4a74ac761c45ccfd75842712

「インド自然放射線でむしろリスクが下がっているように見える」との質問に対し、
「免疫賦活化される」という説も。ホルミシス効果は証明されない。
「福島にあてはめて言っても詮無きこと」と。

I-131の内部被ばく
4月の弘前大・床次教授の調査に参加した。
Scientific Reportにaccept。(掲載予定)
100mSv超える人はいないが、20-30mSvの人はいる。
いわき市に小児が多数いたが、測定結果がない。
毎日新聞の報道の通り、福島県が止めた。県はI-131がなくなってから調査した。

Predictive risk
「許容リスク」を決め対応する線量を推定する。
「許容リスク」は人によって異なる。ここが問題。
「正しくこわがりましょう」一般の人には意味不明だった。混乱の原因。
「正しく理解して行動しましょう」と言うべきだった。
福島以降、専門家が様々なことを言い出して、学者への信頼を失っている。議論が乱暴だった。

「10mSv/年の環境で子どもが住んでいても良いか」の質問に対し、
「子どもに関しては楽観しない方が良い」。CTのReport(白血病・脳腫瘍)を再度強調。

放射線被ばくによるがんリスク:まとめ
・白血病は被ばく2年後くらいから増加し、5-6年後くらいにピークに達し、その後過剰リスクは減少
・その他のがん(固形がん)は被ばく後10年後くらいか
・被爆時の年齢の影響:がんの種類・部位で異なる
・内部被ばくと外部ひばく:甲状腺がんリスクは同じ?
・低線量の放射線被曝の影響:過剰がんリスクが有るか無いかわからない
 しかし、証拠がないことは、影響がないことを必ずしも意味しない
・急性被ばくと慢性被ばくでは、線量当たりのリスクが異なる(乳がんは例外?)

低線量域のがんリスクの有無は不明
1.閾値モデルよりは、安全側に立っている
2.単純である(よくわからない時には、単純さが重要)
3.原爆被爆者の中高線量のがんリスクのデータはLNTモデルを支持

『日本の地震地図 東日本大震災後版』とNewton別冊『地震列島と原発』より 地震の基礎(お勉強メモ)

2012年06月14日 | 東日本大震災・原発事故
Newton別冊『地震列島と原発』

震災後も懸念される大地震:東北地方太平洋沖地震の震源域の周囲、北と南ではプレート境界地震、東ではアウターライズ地震、西では福島のような内陸の地震。ただし、この地域だけで発生するわけではない。

プレート境界地震:房総半島沖と青森沖。「余効変動」地震の後も続く大地の変動。「余効すべり」地震による急激な動きと同じ方向に断層がゆっくり動く。二つのプレートが地震前と同じようにかたく結びついていない。

房総半島沖:1677年にM8クラスの地震が発生、房総半島の太平洋側で高さ約10m、茨城~宮城で数mの津波が押しよせたと推定。青森県沖にも似たような状況はあてはまる。

アウターライズ地震:アウターライズ=海溝の「外側が」「隆起した」地形。海側のプレート内部の断層で発生。正断層型が多い。プレートが引っ張られることで発生。東北地方太平洋沖地震の40分後に沖合でM7.5のアウターライズ地震が発生。

アウターライズ地震:プレート境界地震からかなりの期間が過ぎても発生する場合がある。過去にはM8クラスも。2006年11月千島列島沖でM8.3、2007年1月にM8.1のアウターライズ地震。

アウターライズ地震:1896年M8.2~8.5の明治三陸地震、37年後の1933年にM8.1の昭和三陸地震。チリ地震(1960年、M9.5)の余効すべりは数十年継続した。

アウターライズ地震:震源域が遠くなるのでゆれによる被害よりも津波による被害に注意。昭和三陸地震。ゆれの大きさだけで津波の大きさを判断しないように。

スラブ内地震:海のプレートが深く沈み込んだ場所でプレートが圧縮されることで発生。逆断層型(なかには正断層型ものも)。2011年4月7日の宮城県沖M7.4の地震は、気象庁は広い意味での余震に含めているが、プレート境界ではなく逆断層型のスラブ内地震。

スラブ内地震:陸に近いため強いゆれになる場合もある。津波の心配はない。

内陸の正断層型地震:地殻変動と余効すべりにより北アメリカプレートが引っ張られることで発生。福島県浜通りで頻発。今後もある程度の長期間、正断層型地震が発生しやすい状況が続く。

地震発生の確率が低いと考えられていた断層(双葉断層など)も、周辺で誘発されている地震の影響を受ける可能性がある。

北海道大学・日置幸介教授:東北地方太平洋沖地震発生のおよそ1時間前から震源域の上空の電子数が増加していた。


「トラフ」海溝よりも浅い溝状の地形。南海トラフのプレート境界地震:90-150年間隔。宝永地震(1707年M8.6)は三連動、過去最大の地震。1605年の慶長地震:津波地震=海溝よりやトラフよりのプレート境界で発生。

池に残された2000年前の巨大地震の痕跡。三連動+南海トラフ寄りの地域で同時に地震(M9クラス)が発生すると、ゆれはこれまでの想定と大きな変化はないが、津波の高さはおおむね2倍に。琉球海溝でもM9クラスの可能性。喜界島の海岸段丘。

プレート境界にエネルギーが蓄積されるモデル。「宮城県沖地震」などのエネルギー放出は完全でなく、蓄積されたまま次の地震サイクルが繰り返され、蓄積されたエネルギーが一気に放出されたのが東北地方太平洋沖地震。

プレート境界に沈み込んだ海山が巨大地震を誘発(仮説):防災科学技術研究所の熊谷博之主任研究員。1994年のインドネシアの地震(Mw7.6)。東北地方太平洋沖地震も。

「高レベル放射性廃棄物」の有害性は減らせるか? 「分離変換技術」日本原子力研究開発機構・大井川宏之。ADS:加速した陽子で大量の中性子を発生させ、マイナーアクチノイドの核変換を起こす。一種の原子炉。未臨界で運転される。

放射線で青く光る安価なプラスチック。ペットボトルを改良した放射線探知素材。シンチレックス。京大・放医研・帝人。

地震調査研究推進本部地震調査委員会:2011年11月25日発表。三陸沖北部から房総沖の想定地震と発生確率。http://www.jishin.go.jp/main/index.html

三陸沖北部から房総沖の海溝寄り:Mt8.6-9.0:30年以内に30%程度程度(津波地震)、50年以内で40%、Mt8.3前後:4-7%(正断層型)。三陸沖北部:Mt8.2前後:0.7-10%、繰り返し発生する地震以外の地震 Mt7.1-7.6:90%前後。

Mw(モーメントマグニチュード):規模が大きな地震で周期の長いゆれも考慮して算出。Mt(津波マグニチュード):津波の大きさからマグニチュードを算出。

東北地方太平洋沖地震は869年の貞観地震との1000年周期ではなく、過去2500年間に、紀元前3-4世紀、4-5世紀、貞観地震、15世紀頃、今回と計5回起きていたことを確認。

地震の発生確率が高まった可能性のある活断層(地震調査委員会):糸魚川-静岡構造線断層帯(中部/牛伏寺断層)、立川断層帯、双葉断層、三浦半島断層群、阿寺断層帯(主部/北部 萩原断層)

11の活断層帯で地震の発生率が10倍以上に(東京大学地震研究所・石辺岳男特任研究員):横手盆地東縁断層帯(約28倍)、真昼山地東縁断層帯(約11-44倍)、長町-利府線断層帯(約57倍)、長井盆地西縁断層帯(約33倍)、六日町断層帯南部(約10倍)、十日町断層帯西部(約22倍)、高田平野東縁断層帯(約13倍)、北伊豆断層帯(約70倍)、牛伏寺断層帯(約27倍)、境峠・神谷断層帯主部(約66倍)、猪之鼻断層帯(約11倍)

首都圏:元禄関東地震(1703年)と大正関東地震(1923年)が同じ相模湾フィリピン海プレートのプレート境界型地震と特定。その他は発生間隔が特定されているものはほとんどない。地震調査研究推進本部(2004年)、今後30年間にM7級の地震の発生確率を70%と評価。震災後、98%に。

首都圏:1)プレート境界地震(陸側のプレートとフィリピン海プレート) 2)フィリピン海プレート内部の地震(スラブ内地震):どこで発生するかわからない 3)プレート境界地震(フィリピン海プレートと太平洋プレート) 4)太平洋プレート内部の地震:震源が深いため大きな被害をもたらす地震は少ないと考えられている。どこで発生するかわからない 5)陸側のプレート内部の地震:「活断層」首都圏近辺で5つが知られている。「地下に隠れた断層」どこにあるかわからない。

中央防災会議(2005年):南関東地域で発生する地震:19の断層面を仮定→被害が最も大きくなるのは「東京湾北部の地震」(M7.3):フィリピン海プレート上面で発生する逆断層型の地震。最悪の場合、1万1000人の人的被害と112兆円の経済損失。

首都直下地震…なぜ被害想定が1.5倍に? 最新の観測で、震源が浅くなると考えられたためです http://www.yomiuri.co.jp/job/biz/qanational/20120606-OYT8T00921.htm

最新津波浸水予測:神奈川県「明応型地震」「慶長型地震」「元禄型関東地震と神縄・国府津-松田断層帯の連動地震」を想定(2011年12月8日):明応地震(1498年):東海・東南海連動型、海岸から1キロの鎌倉大仏殿まで津波が達した。慶長型:鎌倉市で従来想定の2倍、最大14.4mの津波。


『日本の地震地図 東日本大震災後版』防災科学技術研究所 岡田義光

「あなたのまちの地域危険度-地震に関する地域危険度測定調査(第6回)」(平成20年2月公表・東京都都市整備局)http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/bosai/chousa_6/home.htm

日本の国土面積(約38万km^2)は、地球の全表面積の約0.07%、周辺の海域を含めて1%程度だが、世界中で起きる地震の約10%は日本とその周辺で発生している。明治以来、地震災害でなくなった方はおよそ20万人。

大きな地震も小さな地震もその発生場所はいつも同じところで起きている。

「海溝型地震」「プレート内地震」「内陸型地震」

海溝型は通常はM8級、100年から200年程度の間隔で何度も繰り返し発生。
内陸型はまれに濃尾地震(M8.0)のような巨大地震になることはあるものの通常はM7くらいまで。繰り返し周期は数千年から1~2万年程度と大変に長い。

ひとたび内陸型地震を起こした断層は再び地震を引き起こす傾向が強く、最近数十万年の間に繰り返し地震を発生させ、現在もその能力を維持していると思われる断層は、とくに「活断層」と呼ばれている。

大小合わせて2000近い活断層の存在が知られている。

日本列島の活断層分布 活断層研究会編「新編日本の活断層」東京大学出版会1991

地震の発生予測
2005年3月 地震調査研究推進本部 http://www.jishin.go.jp/main/index.html
調査の対象とする活断層帯は110に拡大

地震発生の規則性がある程度わかっている地域では、次に地震の発生時期を統計的に予測することができる。(地震の発生確率は時間とともに変化していく)
地震発生の規則性がよくわからない地域では、地震がランダム(不規則)に起こるものとして発生確率の評価がなされる。(地震発生の確率はいつでも同じ)

100~150年の間隔で繰り返す海溝型地震は別として、活断層型の地震の発生間隔は数千年~数万年と長く、地震発生確率は非常に小さな値になる。

3%以上のもの「高いグループ」、0.1%以上3%未満のもの「やや高いグループ」 各々活断層全体の約1/4ずつ
地震発生確率の高い順番に発生するわけではない

青森県付近では、青森湾西岸断層帯が「やや高い」、津軽山地西縁断層帯と折爪断層が「不明」

地震動予測地図
防災科学技術研究所「地震ハザードステーション」 http://www.j-shis.bosai.go.jp/

わが国の周辺で最近111年間に発生したM7以上の地震は118個、平均ほぼ1年に1個。
北海道や東北地方の沖合が圧倒的に多い。
1000人以上の死者をともなった地震は10例。
10例中、1923年関東地震、1933年三陸沖地震、2011年東北地方太平洋沖地震を除いた7例はすべて近畿地方の周辺。
近畿地方周辺ではM7以上の地震はめったに起こらないものの、ひとたび発生すれば大きな災害をもたらす場合が多い。

北海道
地震予測
千島海溝沿いのM8級海溝型地震
十勝沖・根室沖・色丹島沖・択捉島沖 単独ではM8.1、7.9、7.8、8.0前後
十勝沖・根室沖連動でM8.3程度
1839年以降、それぞれ3回、2回、2回、2回 平均活動間隔72.2年
今後30年以内の発生確率 0.3-2%、40-50%、50%程度、60%程度

千島海溝沿いのM7級海溝型地震
十勝沖・根室沖 1900年以降5回 平均発生間隔17.5年
2004年釧路沖1回
色丹島沖・択捉島沖 1963年以降4回 平均発生間隔10.5年
特に規則性はなく不規則に発生 今後30年以内の発生確率 80-90%

十勝沖・根室沖連動の場合の津波については触れられていない

東北・新潟

東北地方西方沖の日本海東縁部では、東北地方をのせた北米プレートと日本海の下のユーラシアプレートとが青森県沖から新潟県沖にかけて新しいプレート境界をつくりつつある
特殊なタイプの地震が発生 1964年新潟地震、1983年日本海中部地震

東北地方・新潟県周辺で起きる地震
1)三陸沖から福島県にかけて発生する海溝型地震
2)東北地方とその太平洋側沖合の下で発生するプレート内地震
3)東北地方内陸の浅いところで発生する内陸型地震
4)青森県沖から新潟県沖にかけての日本海東縁部で発生する地震

地震予測
東北地方太平洋沖地震の型の広域地震 紀元前3-4世紀、4-5世紀、869年貞観地震、15世紀と過去4回発生
平均発生間隔600年程度 近いうちに発生する確率はほぼ0%

三陸沖北部 M8.0前後の巨大地震
最近約400年間で1677年、1763年、1856年、1968年と4回発生 87.8-111.8年 平均約97年
前回1968年十勝沖地震 43.6年前 今後30年以内に0.7-10%

M7級地震 1885-2011年の127年間に9回(...1994年、2011年) 平均14.1年
特に規則性はなく不規則に発生 今後30年以内の発生確率 90%程度

三陸沖南部海溝寄り M7.9前後
1793年(宮城県沖と連動 M8.2)、1898年(単独 M7.7)、2011年の3回
平均109年程度 今後30年以内ではほぼ0% M7級では50%

津波地震
三陸沖北部から房総沖まで
1600年~2011年の412年間に4回発生 1611, 1677, 1896, 2011
103年間隔 不規則に発生
全領域のどこかで今後30年以内に津波地震が発生する確率 30%程度
特定の地域では412年ごと 今後30年以内に7%程度

正断層型 全領域で1933年三陸沖地震(M8.1)1つしかない
400-750年の発生間隔で不規則に発生するとして
今後30年以内に4-7% 特定の領域では1-2%

関東地方・伊豆地方
1)関東地方内陸の浅いところで発生する内陸型地震
1)’伊豆半島や伊豆諸島などで発生する内陸型地震
2)相模湾から房総半島南方沖にかけて発生する海溝型地震
3)関東地方の下のフィリピン海プレート内部で発生するプレート内地震
4)茨城県沖から房総半島東方沖にかけて発生する海溝型地震
5)関東地方の下の太平洋プレート内部で発生するプレート内地震

(以下省略)

「大丈夫と言ってはいけない」と「安全ではない」と「危険だ」は違う リスク比較批判

2012年06月14日 | 東日本大震災・原発事故
前の2つの文章を補うものですが、「大丈夫と言ってはいけない」と言うと、「危険性を煽っている」「子どもたちの不安を助長している」などと批判を浴びることになります。

「大丈夫と言ってはいけない」=「危険」ではないことは日本語の表現としてすぐにわかることだとは思います。。

「大丈夫と言ってはいけない」の意味は「必ずしも大丈夫とは言えない」ということですが、この「必ずしも~言えない」というニュアンスには、言う人によっても受け取る人によってもかなりの幅があり、オーバーラップもあるかと思います。

 「安全」
  ↑ 安全だ 大丈夫
  | 大丈夫とは言えない 直ちに危険はない
  | 安全ではない
  | 危険性がある
  ↓ 危険だ
 「危険」

「必ずしも大丈夫とは言えない」と言うと、非現実的だ、世の中には「絶対大丈夫」などありえない、とか、
(その口で「原発は絶対安全」と言っていたくせに)
ゼロリスクを求めるのは理性的でなく感情論だとか。。

そこに登場してくるのが「リスク比較」。数字で比べてこんなに安全と。
これが非常に素人(あちらの言葉で言うと「理性・理論で考えられない頭の弱いお母さん方」)を馬鹿にしたものだった。

医学・医療の世界では、「絶対大丈夫」だの「ゼロリスク」などというものはハナから存在しません。私たちは(別に疫学の専門家でなくても)、意識するまでもなくリスク比較、リスク評価という世界の中で仕事をしてきています。

リスク比較の議論に接する時には「リスク比較そのものが、説得して丸め込むために存在するのではないか」という疑問を必ず考慮しないといけない。
(これは医学の世界にあてはめることも無論可能)
ここで数字の議論の入り込むと、「どこかおかしい」という最初の感覚が忘れ去られて、「この数字が理解できないヤツは馬鹿だ」という結論に陥ってしまう。

(数字そのものについては議論の基礎となるものだとわきまえた上での話であり、これを無闇に否定してまわるのは無意味ですが、放射線被曝の問題ではその数字の根拠すら相当に怪しいのだからその先はどうにでもなりうる。)

多くの人は、それでも、原発事故後の政府や専門家の言動に胡散臭さを感じ、リスクを回避する行動をとった。(取らなかった人も多かったが)

そもそも、あの有名な「直ちに健康に被害を生ずることはない」という言葉が、「必ずしも大丈夫とは言えない」という意味そのものなのですから。。

リスク比較の議論で注意しなくてはいけないのが、必要性と代替性、避けられるものかどうかという側面が(ある時は意図的に)抜け落ちていること。

その典型がタバコ。放射線と喫煙のリスク比較。
これを持ち出してくる人は信じない方が良い。簡単な見分け方。

(勿論、低線量被曝に比べて喫煙や受動喫煙のリスクが桁違いに高いのは当然なので、もし親がタバコを吸いながら子どもの被曝を心配してるとしたら論外ですが。)

タバコは必要性もメリットもゼロで、喫煙しなければリスクはゼロ。
受動喫煙も本来はゼロに出来るし、ゼロにしなくてはいけないもの。
(国が規制を怠っているために飲食店や職場、家庭などでの受動喫煙のリスクが非常に高くなっている現実は大問題だが、それを逆手に取って放射線被曝を正当化する理由にはならない。)

ちなみにJTは裁判で「受動喫煙の健康被害は証明されていない」と主張して、政府も「同じ被告の立場で」それを追認している。
受動喫煙など取るに足らないと。

だから、その受動喫煙よりもずっとリスクの低い放射線被曝の健康影響はあり得ないと。
だから、もし福島の子どもが重い病気になったとしても、放射線との因果関係は認められず、危険論者に危険性を煽られて避難したストレスによる可能性が高いと。
(裁判で勝つ見込みはないものと考えるべき)

自然放射線や医療被曝、バナナのカリウム40なんかを、バナナの叩き売りのような受け売りの弁舌でまくしたてるにわか仕立ての輩も後を絶たず。
(バナナ星人とかカリウム星人と言うのだそうな。今日初めて知った。)

自動車事故とのリスク比較なんて持ち出してきたら、この人はオツムが弱い人なんだと軽く聞き流してあげるだけでOK。

今までなんとなく「この人は信用できる人なのかな」と思っていた人の化けの皮がはがれたのもプラスに受け止めるべきだろう。単に自分が無知で騙されやすかっただけ。

岩田健太郎
野口 健 ← 東電とJT(原発とタバコ)がスポンサー
川口淳一郎
寺島実郎
江川紹子
香山リカ

話を戻すと、原発事故の危機的状況において、放射線被曝の危険性を訴えて避難を呼びかけるのではなく、このくらい被曝しても大丈夫だから逃げなくても良いと呼びかけて何の反省もない医学界については、歴史的な犯罪行為であり決して許されるものではない。
(たとえ結果的に福島の子どもたちに全く健康被害がなかったとしても)

ただし、これは今に始まったことではなく、水俣病でも薬害エイズでもタバコ病裁判でもこの手の御用学者が、患者の命を救うのではなく、被害者を増やして命を奪う「悪魔の医師」として暗躍したことを国民は知っておくべきだった。。

なぜ小児科医が「福島の子どもは大丈夫」と言ってはいけないのか(2)

2012年06月07日 | 東日本大震災・原発事故
前掲の『なぜ小児科医が「福島の子どもは大丈夫」と言ってはいけないのか』に対して、(いまの日本では)違和感や反発を感じる人の方が多いのかもしれません。

私自身は、事故直後に医療者が適切な情報発信を行って避難を促すことができなかったことに対して痛切な責任を感じています(自分自身はその立場にも無かったし事実上不可能だったことを言い訳にしたくない)。その後も、福島は安全だから避難しなくても良いと講演してまわった「専門家」や、それを現在まで追認して何の疑問も感じない医学界全体にも深く絶望しています。

放射線被曝の危険性を知っているはずの医師が、福島の被曝線量は医療被曝と比べて全然大したことない、逃げなくても良いと強調していた政府を批判するのではなく支持したのですから。

当時の政府、メディア、専門家の言動について、事故検証委員会だけでなく、物理学や人文科学などの分野では痛烈な反省や検証作業が行われています。

ひとり医学界だけが、何の反省も検証作業もなく、「福島の子どもたちは大丈夫だけど念のため一生検査します。医療費もタダにするから福島から逃げないように」という政府や県の政策も問題なしと追認している。これは一体どういうことなのだろうか。

線量の基準については、既にこのブログだけでなく多くのサイトで触れられているように、放射線管理区域の基準が約0.6μSv/hで、その中で暮らすことは勿論、未成年が入ることも法律で禁じられていること。国の除染基準が0.23μSv/hであること。単純にそれだけで判断できるはずです。

早川教授も0.25と0.5を判断の基準としているようですが、このブログではそれを少し緩めて0.3で除染、0.6で子どもや妊婦はまず避難、1.0では移住権利をと呼びかけてきました。前述のように1年以上経った現在では、呼びかけをする時期は過ぎたと感じていますが、判断基準は変わりません。

このブログにも何度か書きましたが、私自身も、2人の子どもが除染対象地域で暮らしている被害者の一人であり、事故直後に(ある程度の知識があったはずなのに)適切な判断が下せなかったことを繰り返し悔いています。(そのレベルで被害者と言うのであれば、福島だけでなく東北関東の数千万人、あるいは日本全体が被害者でもあり、福島だけを特殊化することには無理があります。この言説にも批判があることを承知の上で。)

まして、その何倍、何十倍もの苦渋の念を抱いている福島のお母さん方の気持ちを察するに余りあります。もし福島の危険性を外から煽っているかのようにとられるたのであれば片腹痛い思いです。

前掲の「なぜ小児科医が…」に書きそびれましたが、小児科医が「福島は大丈夫」と言うことが、避難を妨げて子どもの被曝線量を増す方向に作用するだけでなく、政府や東電の補償負担を少なくし、福島原発事故が「大したことのない事故だった」かのごとき風化を促し(それが政府の目的)、結果的に原発再稼働へと連綿とつながっているという現実があります。

その現実を直視せずに、構文を逆にして「反原発の急進派が原発を止めるためにあえて福島の危険性を強調している」と取られているとしたら、論理的で説得力があるとは言えないのではないでしょうか。

福島の危険性を針小棒大に騒ぎ立てて不安を煽りたいなどという目的は毛頭ありません。ただし、最初に書いたように、結果的に「杞憂に過ぎなかった」のかどうかがわかる頃には、私たちには責任を持てないし、そもそも責任の取りようがありません。

福島県には2年だけですが初期研修でお世話になり、浜通の原発立地地域も何度か車で往復したことがあり、福島の子どもたちに何もできないことを心苦しく感じてはいますが、それは自分自身で受け入れるしかありません。

子どもは親の生き方に強く影響され、それに対して小児科医の力など無力であることなどわかっているつもりです。しかし、小児科医は「子どもに代わって発言する(advocacy)」などといった幻想をかすかに信じていた一人としては、現状に異を唱えることだけはしておきたい。

おそらく戦前の日本はこんなんだったんだろうなと思いつつ。。
(言論の自由がある分だけマシなのではなく、言論の自由がある分だけひどくなっている。)

↑この文章は全ての方に対して書いたものですが、主張や呼びかけなどと言うほどのものではなく、私が痛切に後悔し毛嫌いしていたはずの「アリバイづくり」の独り言に過ぎません。

なぜ小児科医が「福島の子どもは大丈夫」と言ってはいけないのか

2012年06月02日 | 東日本大震災・原発事故
昨年3月13日(停電回復)から17日まで、私がこのブログに書いたことを読み返してみました。
言いたいことは今も全く同じです。
ただし、今は事故直後ではなく時間が経ちすぎて取り巻く状況も変わってきているので、「福島は危険だからすぐに避難して」とまで言う気はなくなりましたが。。

1)私もあなたも誰もかも、子どもたちの30年後に責任は持てないこと。

2)もし疫学的に何らかの差が検出されたとしても、一人一人の子どもについて因果関係を証明することは不可能なこと。それを逆手に取って、国が救済措置をとらないことは目に見えている。(そもそもお金をもらったとしても健康は取り戻せない)

3)被曝との関係が有る無しに関わらず、ある一定の割合で白血病や悪性腫瘍、その他の重い病気にかかる子どもが出てくる。その時に、親は「あのとき早く避難させていれば良かったのではないか」という悔恨の念にかられることになる。これは数字や理性でどうなるものではない。ただし、1年経った今から避難することに意味があるかどうかはわからないし、もう考えられない。

4)小児科医が「安全だ」ということにより、親はそれに反論することが難しくなり、結果的に避難する人を減らす作用に働き、子どもの被曝量を増やすことにつながる。あるいは、避難した家族内や地域の人たちとの間の軋轢を増す方向に作用する可能性がある。

5)低線量の内部被曝については、歴史的に過小評価され国家や専門家により否定され続けてきたこと(原爆入市者やチェルノブイリ、劣化ウラン弾、核実験場周辺など)。日本だけでなく世界中で。そもそも内部被曝については事故直後には全くその危険性が伝えられていなかった。これだけ大きな原発事故で放射能が大量に放出されたのだから、地域や国全体として健康被害が全くないということはあり得ない。

6)津波と同じで考える前にまず安全なところに逃れること(これは事故直後の話)。福島の子どもたちは「津波」(放射能)が来ていることすら知らされなかった。

他のリスクファクターとのリスク比較や、リスク比較という手法そのものについては、既にこのブログに何度か書いたのですが、いま探すのが面倒なので後にします。

東奥日報が脱原発を撤回し県庁御用達「原発再稼働・核燃サイクル堅持」転向を宣言した3.11の「特別評論」

2012年06月01日 | 東日本大震災・原発事故
#私たちが鎌田さんや山本さんと歩いて、あらためて3.11フクシマの惨事を繰り返さないために原発・核燃のない日本を誓ったあの日に、東奥日報は一旦は宣言した脱原発路線を撤回し、「原発再稼働・核燃サイクル堅持」への転向を高々と宣言したのがこの「特別評論」だ。社説にする勇気もなく、報道部長のただの署名記事に過ぎないものを、あの鎮魂の日にひっそりと忍び込ませた愚劣さ。

震災1年 特別評論/脱原発の近未来/本社報道部長 福井透/産業創出し自立県に(東奥日報 2012年3月11日)

 巨大な地震と津波が、原発の安全性に対する国民の認識の甘さを根底から揺るがした。あれから1年。日本のエネルギー政策は大きく方向転換を迫られている。原子力政策に協力、共存を図ってきた本県にとっても、将来の産業構造をどのように築いていくのか、慎重に方向を見定めていく必要がある。

 大震災は、原発事故を誘発し、結果、電力は無尽蔵ではないという現実を知らしめた。全国に54基あった原発は順次定期検査に入っており、4月下旬には全ての原発が停止する。国内の電力供給の約3割を担ってきた原発がこのまま1基も再稼働しなかった場合、果たして今夏の需要ピークを乗り切れるのか。

 仮に液化天然ガスなどを緊急輸入し続け火力発電を稼働したとしても、輸入相手国の政策に左右される化石燃料を安定供給とは言い難い。地球温暖化にも逆行する。

 何よりも、日本が自前でエネルギーを安定供給するために進めてきた核燃サイクル政策そのものを白紙に戻すことになる。その場合、六ケ所村の再処理工場や全国の原発にたまっている使用済み核燃料は一体どうするのか。ガラス固化にしろ直接埋設にしろ処分地が定まらない現状で、核燃サイクルの技術やコストの選択肢が議論されているが、本県が最終処分場にならないことは国との確約事項である。

 直ちに原発をゼロにするという議論は、こうした現実を全く見ていないと言わざるを得ない。

 国内のエネルギー供給体制は深刻である。企業の生産性が低下すれば景気は一気に冷え込む。その影響は産業基盤が弱い地方ほど大きく表れる。雇用が失われ、少子高齢化が進む一方で、医療や福祉などの住民サービスは低下する。税収が落ち込み自治体運営はさらに厳しさを増す。

 政府は原発の原則「40年運転制限」を打ち出した。順次廃炉にする方針とも言え、「脱原発依存」を達成するまでの数十年後へのカウントダウンとも言える。安全性の確認の下に再稼働できる原発を耐用年数まで使用し、その間に、再生可能エネルギーの発電効率を高める研究を進め、将来の電力需要を見越して化石燃料とのベストミックスを図る?。原子力委員会が夏以降に決定する新原子力政策大綱の最も現実的な方向性だろう。

 本県には定期検査入り後に停止した東北電力東通原発1号機、工事や試験が中断している東京電力東通1号機、電源開発大間原発、使用済み燃料の再処理工場や中間貯蔵施設が立地する。

 これらの施設や計画によって国や事業者から本県にもたらされてきた交付金や補助金、寄付金、核燃税、固定資産税などの経済効果は莫大(ばくだい)だ。さらには雇用や関連産業への寄与も大きい。

 原子力政策の方針転換によって、これらの施設の方針が変われば、原子力と共存共栄を貫いてきた本県の産業や自治体の行財政運営が大きく揺らぐ。数十年後の原発のない社会をにらみ、原子力に頼らなくていい産業構造をどう築くのか。国の食料基地の一翼を担う優位性だけでなく、自立でき活力ある産業をいかに創出するか。官民挙げて全力で取り組み始める元年にしなければならない。

(このentryは記事に対する批評を追加する予定です)