9月に文部大臣が全国の子どもたちに「症状があったらすぐ受診を」という文書を配布しましたが、これは大きな間違いで、小児科医の間でも問題になっています。次の項目にあるような緊急を要する場合でなければ、一晩待って翌日に受診するようにして下さい。
10月初旬現在、発熱や咳の患者の多くはインフルエンザではなく、その中の一部にインフルエンザやそれを疑う子がみられています。そのような状況で、あわてて夜間救急を受診することは、インフルエンザじゃない子どもにわざわざ感染させるリスクを増やし、流行を拡大させることにつながるからです。
熱が出て数時間以内の「超早期」受診では、もしインフルエンザであっても検査しても陰性になる可能性が高く、その場合に「インフルエンザではない」とは言えないため、経過と症状をみた上で、翌日以降に判断することになります。インフルエンザの検査は痛みを伴うため、子どもに何回もさせたい検査ではなく、また、検査キットが既に品薄の状態にあり、1人に何回も検査することは貴重な資源の無駄使いと言えます。国立成育医療センターの治療方針でも、発熱後12時間以内には原則として検査しないことになっています。
ただし、早い時期の受診であっても(検査の有無に関わらず)インフルエンザに効果のみられる漢方薬「麻黄湯」を使って初期症状を軽くすることは期待できます。また、家族内での感染や、流行がもっと明らかになった時期であれば、検査は必須ではありませんので、症状や所見などから抗インフルエンザ薬を処方することもできます。要するに、他のときと同じように、落ち着いて普通に判断して受診していただければ結構だということになります。