踊る小児科医のblog

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クモ膜下出血は喫煙男性で3.6倍も高い

2010年04月05日 | 禁煙・防煙
巨人の木村拓也コーチがクモ膜下出血で倒れたことで大きく注目されていますが、これまでの経過も思わしくないようで回復を祈りたいと思います。
厚労省の大規模な調査結果からクモ膜下出血と喫煙の関係が強いことが明らかになっており、比較的若い中高年男性の突然死、過労死や後遺症を残す原因として大きな地位を占めています。
新聞報道によると、木村コーチも残念ながら喫煙者であったことが明らかになっています。

ここで注意しておきたいのは、こういった疫学調査というものは、特定の個人の病気について単独で因果関係を証明したり否定したりするものではないということです。ここで、木村コーチが喫煙者でありクモ膜下出血で倒れたからといって、喫煙が単独の原因であると断定することはできません。その他の要因(飲酒や過労、ストレス、血圧など)が関与した可能性も当然あるでしょう。

しかし、そういった様々な要因をコントロールした上で多数の人の調査から、喫煙男性がクモ膜下出血になるリスクは3.6倍も高いということが証明されているのです。疫学という分野を “確率論” だからと軽視する方が一部にいるようですが、医学というのは数学や物理学と違って、治療にせよ原因の究明にせよ全てこの疫学的研究が基礎になっています。疫学を否定することは現代医学を否定して経験則だけで治療していた中世以前に戻ることに他なりません。

木村コーチが喫煙者であったことで個人攻撃をしているわけではありません。
しかし、一流のアスリートや指導者、体育教師の中で喫煙者が多いという日本のこの現実に対して、警鐘を鳴らす必要があることは明らかです。
そして、一般の方にも今回のニュースに対して、ただ気の毒だとか回復を祈るということだけでなく、マスコミが触れようとしない事実をきちんと知っていただきたいと思います。

● 男女別、喫煙と脳卒中病型別発症との関係について
 厚生労働省研究班による多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告
 http://epi.ncc.go.jp/jp/jphc/outcome_entry/smoke_apopl/
○ 喫煙者は、非喫煙者にくらべ、男性で1.3倍、女性で2.0倍、脳卒中になりやすい。
○ たばことクモ膜下出血の関係は強く、本数が増えるほどリスクが高くなる
>なかでも、喫煙とクモ膜下出血(男性73人、女性106人に発症)の関係は強く、
>たばこを吸う人は、全く吸わない人に比べて、男性で3.6倍、女性で2.7 倍、
>なりやすいことが示されました。さらに、1日にたばこを吸う本数が増えるほど、
>クモ膜下出血の発症が段階的に増えていきます。
>クモ膜下出血の発症の原因としては、血圧や喫煙が報告はされていましたが、
>今回のようにたばこの1日に吸う本数との関係で、1-19本よりも、20本以上で
>発症の危険が上昇してくることを示した研究はほとんどありませんでした。

● 「やせてしまった」と漏らす くも膜下出血の木村コーチ
 http://sankei.jp.msn.com/sports/baseball/100403/bbl1004031144005-n1.htm
>タバコも吸うし、お酒も大好き。宮崎出身だけに焼酎には目がなかった。
>それでも身体が壊れるほどの暴飲暴食をする姿は見たことがない。