踊る小児科医のblog

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セシウム沈着量と線量率マップをチェルノブイリと比較 除染・避難・移住の区分けを明確にすべき

2011年09月02日 | 東日本大震災・原発事故
前のentry「放射性セシウムの土壌濃度マップ・航空機モニタリング・農地土壌の放射性物質濃度など<情報整理>」の続きです。ダラダラと書きましたが、実は4月の今中先生の飯舘村調査発表や早川先生のブログ(チェルノブイリとの比較)などでおおよそわかっていたことが確かめられたに過ぎません。今さら私が強調する意味もなさそうですが。

チェルノブイリの地図は今中先生のページのもので、ここでは15Ciを超える第1・第2ゾーンは同じ紫色になっています。



チェルノブイリの避難基準(セシウム137)
40 Ci/km2(1480 kBq/m2)以上 避難(特別規制)対象地域(第1ゾーン)
15-40 Ci/km2(555-1480 kBq/m2) 移住義務対象地域(第2ゾーン)
5-15 Ci/km2(185-555 kBq/m2) 移住権利対象地域(第3ゾーン)
1-5 Ci/km2(37-185 kBq/m2) 放射能管理強化地域(第4ゾーン)

航空機モニタリングの測定結果から、空間線量率とセシウム134+137沈着量のマップを縮小して画像ファイルにしました。詳しくは元のPDFファイルをご覧下さい。(一つ前のentryにリンク掲載)





セシウム沈着量マップの方でチェルノブイリの基準と比較してみます。区切りが違うのでまたがっていて、若干わかりにくい。

赤  3000<   第1ゾーン(1480-)
黄色 1000-3000 第2(555-1480)か第1(1480-)
緑  600-1000 第2(555-1480)
水色 300-600  第3(185-555)か第2(555-1480)
青  100-300  第4(37-185)か第3(185-555)
紺色 60-100  第4(37-185)
鶯色 30-60   管理地域外(-37)か第4(37-185)
茶色 10-30   管理地域外(-37)
土色 ≦10    管理地域外(-37)
(単位:kBq/m2)

目安としては、

☆ セシウムのマップで鶯色以上の広い範囲が放射能管理強化地域(第4ゾーン)。(線量率のマップでは水色の 0.2-0.5μSv/h に相当)

☆ セシウムのマップで水色の一部が移住義務対象地域(第2ゾーン)。(線量率のマップでは緑色の 1.0-1.9μSv/h に相当)

☆ その間の、水色と青の一部は移住権利対象地域(第3ゾーン)に相当するが、今も多数の住民が暮らしている。(線量率のマップでは緑か薄緑 0.5-1.0μSv/h に相当)

「0.3以上は除染、0.6以上は自主避難、1.0以上は避難(移住権利)」と前に書きましたが、それより一段厳しく「0.6以上は移住権利、1.0以上は移住義務地域」と考えた方が良いのかもしれません。チェルノブイリでもフクシマでのこの地域に多数の人が住んでいるわけです。

(0.3、0.6はそれぞれ0.25、0.5としても良いのですが、厳しくなるので少し緩めの数字にしてみました。ちなみに、国の法律で未成年者が働いてはいけない「放射線管理区域」が大体0.6に相当します。そこで小さな子どもが暮らしているのが現実。)

ちなみに、特定避難勧奨地点の基準は7月の時点で3.2μSv/hという高さで、野田新首相が基準を引き下げて対象を大幅に拡大することは期待できません。



首都圏の土壌調査結果はチェルノブイリの基準で色分けされていますが、自宅内外、通学路などの線量率の調査・把握だけでなく、土壌調査も更に細かく実施する必要があるのでしょう。

セシウムのマップで赤・黄・緑の地域は、人が住める程度まで除染することは非常に困難(おそらく不可能)で、莫大な費用がかかるものと予想されます。厳しい現実ですが、住民の方への移住先や就職などの本格的な検討を進めるべきでしょう。

それもどうやって実現するのか全く見当もつきません。例えば青森県内にも限界集落・放棄された農地がかなりあるはずですから、そういう所への集団移住を斡旋するとか。。条件の厳しい土地だと思われるし、新聞投書には原子力施設の林立する青森県への避難はお勧めできないと書きましたが。。

放射性セシウムの土壌濃度マップ・航空機モニタリング・農地土壌の放射性物質濃度など <情報整理>

2011年09月02日 | 東日本大震災・原発事故
首相が交代した8月30日になってバタバタと重要な測定結果が公開されています。文部科学省のページは何度探してもわかりにくく、できるだけ見つからないような場所に置いてあるので、情報を整理してみました。マップの見方は次のentryで。

◎ 文部科学省及び茨城県による航空機モニタリングの測定結果の修正について(8月31日)
 http://radioactivity.mext.go.jp/ja/monitoring_around_FukushimaNPP_MEXT_DOE_airborne_monitoring/
 http://radioactivity.mext.go.jp/ja/1940/2011/08/1940_0831.pdf

◎ 文部科学省による放射線量等分布マップ(放射性セシウムの土壌濃度マップ)の作成について(8月30日)
 http://radioactivity.mext.go.jp/ja/distribution_map_around_FukushimaNPP/
 http://radioactivity.mext.go.jp/ja/distribution_map_around_FukushimaNPP/0002/11555_0830.pdf

◎ 農地土壌の放射性物質濃度分布図の作成について(8月30日農林水産省)
 http://www.s.affrc.go.jp/docs/press/110830.htm
 農地土壌の放射性物質濃度分布図(対象区域全体)
 http://www.s.affrc.go.jp/docs/press/pdf/110830-06.pdf
 水田の場合は地表面から約15cm、畑の場合は最大約30cm

◎ 首都圏土壌調査の結果(8月8日放射能防御プロジェクト)
 http://www.radiationdefense.jp/investigation/metropolitan

◎ 学校施設などにおける放射線量調査の結果(盛岡市)
 ※除染後の測定値を追記(9月1日)
 http://www.city.morioka.iwate.jp/05kankyo/kankyo/topics/housyanou5.html

◎ 早川マップ http://kipuka.blog70.fc2.com/ の元となった、
◎ 福島放射線量Google maps(@nnistar)
 http://www.nnistar.com/gmap/fukushima.html

◎ 青森県放射線量測定地図
 http://bit.ly/otLC9u

◎ フクシマとチェルノブイリの比較 2011/04/15(早川由紀夫の火山ブログ)
 http://kipuka.blog70.fc2.com/blog-entry-375.html

◎ チェルノブイリ原発事故 今中哲二
 http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/Chernobyl/Henc.html

◎ 換算

 1 Ci = 3.7×10^10 Bq = 37 GBq = 370億 Bq
 1-5 Ci/km2
  = 3.7-18.5×10^10 Bq/km2
  = 3.7-18.5×10^4 Bq/m2
 37-185 kBq/m2

◎ チェルノブイリの避難基準(セシウム137)
 40 Ci/km2(1480 kBq/m2)以上 避難(特別規制)対象地域(第1ゾーン)
 15-40 Ci/km2(555-1480 kBq/m2) 移住義務対象地域(第2ゾーン)
 5-15 Ci/km2(185-555 kBq/m2) 移住権利対象地域(第3ゾーン)
 1-5 Ci/km2(37-185 kBq/m2) 放射能管理強化地域(第4ゾーン)

◎ ベクレルの変換 Bq/kg→Bq/m2 の解説(ジオドクターKKの日記)
 http://blog.livedoor.jp/geodoctorkk/archives/5728747.html
 深さ15cm 掘って採取した場合
  Bq/kg→Bq/m2換算 150倍掛ける
 深さ5cmなら 50倍
 深さ10cmなら 100倍

「内部被曝によるミトコンドリア機能障害」この仮説が不定の症状を説明できるか 『内部被曝に迫る』より

2011年09月02日 | 東日本大震災・原発事故
一つ前のentry「急性白血病や鼻血・下痢と福島原発事故」で低線量内部被曝による未知の症状が起きている可能性について言及しましたが、先月放送されたNHKの特集番組でウクライナの医師による「ミトコンドリア機能障害」という説が紹介されていました。下記のブログに動画と全文が掲載されています。(放送当時見ていたのですがコメントしそびれてました。)

詳しく調べていないので推測で書きますが、この説はおそらく現時点で評価は定まっていないものと思われます。
ほとんど直感に近いのですが、様々な症状を説明できる可能性が高いのではと感じました。(←鵜呑みにしないように。保証はできません。)
放射線障害というと、核のDNAの損傷をまず思い浮かべるのですが、細胞の中に多数存在するミトコンドリアが損傷を受ければ、原爆ぶらぶら病や湾岸戦争症候群、チェルノブイリ後に周辺地域で起こっている不定の症状が起きてもおかしくない。
この医師も言っているように、全てを説明できるわけではないかと思うが。
日本でも何らかの研究結果が出ているのだろうか。難しくて理解できない可能性が高いけど、ちょっと調べてみたい。

ただし、ウクライナのこの地域では、番組に描かれているように食物の内部被曝に無頓着で、自分で採ったキノコなどを子どもに食べさせている。ベラルーシで一々学校に食材を持ち込んで測定したいたのとはちょっと違う。
「福島の子どもたちは国の基準に従ってチェックした“安全な”食べ物を食べているからチェルノブイリとは違う」という言説は、ここまで極端だと、一理あると言えなくもない。

この問題の解明は、(大変残念な事態ではありますが)今の日本でしかできないことであり、本来ならできるだけ早期にその端緒についていなければならないはず。弘前大学と浪江町が協定を締結して長期にわたる健康管理と研究に取り組むという報道もありました。福島県立医大もそうですが、研究と言うとどうしてもモルモットにされているような嫌な感じがします。しかし、子どもや妊婦さんにはできるだけ避難してもらうにしても、どのレベルにせよ「境界領域」で暮らす人が出てきてしまうのは避けようがありません。

いまの大学で国の政策に批判的な研究結果が出てくることは期待しにくいのかもしれませんが。

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内部被曝に迫る~チェルノブイリからの報告(内容全部書き出し)
http://kiikochan.blog136.fc2.com/blog-entry-665.html

ウクライナでも内部捕縛の健康被害に対して
最近新たな仮説を発表した研究者がいます
(放射線医学研究センター ウクライナ)
ナロジチなどでの子どもの診察を20年以上続けてきた
放射線医学研究センターの教授エブゲーニヤ・ステパーノバさん(放射線医学研究センター教授)です
ナロジチに住む子ども達の血液を調べ
非汚染地域に住む子ども達に比べ、細胞内のミトコンドリアに
より多くの異変が起きていることを明らかにしました
論文「長期低線量被ばくによる児童のミトコンドリア機能障害」

エブゲーニヤ・ステパーノバ:見て下さい
これは破壊されたミトコンドリアです

ミトコンドリアは体内で細胞の働きを助けるエネルギーを供給する器官です
ミトコンドリアに異常が起きると細胞死につながったりエネルギー代謝に支障がでたりすることがこれまでの研究で分かっています
ステパーノバさんはナロジチの子どものミトコンドリア変異は
内部被ばくの放射線の影響であり、慢性疲労、無力症など
さまざまな疾病を引き起こしているのではないかと推定しています

エブゲーニヤ・ステパーノバ:子ども達の体に起きている異変が、
全部このメカニズムによるものだとは言い切れません
これは、いくつものメカニズムの一つにすぎないのですから
日本の子ども達には、我が国のようなことが起こらないよう願っています
心からそう思っています

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木村真三先生の研究発表PDFファイルが公開されています。

チェルノブイリ放射能汚染 ー取り残された街ー
http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/seminar/No110/kimura2011-3-18.pdf

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第63回「内部被曝① 放射線のミトコンドリア攻撃が原因か 慢性疲労症候群」
http://www.vec.or.jp/2011/08/26/column_063/

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内部被曝患者6000人を診た医師が警告する。No2
http://blogs.yahoo.co.jp/jun777self/4426759.html
 一方、これまで解明されなかった原爆ぶらぶら病については、肥田氏は「最近の研究では、放射線が細胞内のミトコンドリアに影響を与えている、と考えられています」と言う。
 「ミトコンドリアは細胞の活動に必要なエネルギーを生み出しています。筋肉を支えるたんぱく質もそこにある。そこへ放射線が影響を及ぼすことで、正しく作用しない筋肉が部分的にできる。その筋肉がすぐ疲労してしまい、強いだるさを感じるようになる、と言う説が出てきました」

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弘前大が浪江町で放射線調査へ
http://www.nhk.or.jp/aomori/lnews/6085240661.html

弘前大学は、東京電力福島第一原子力発電所の事故で町の一部が警戒区域に入っている福島県浪江町で、土壌や植物などの環境調査と近隣に避難している町民の健康調査を長期間にわたって行うことになりました。
浪江町は町の大部分が福島第一原発から30キロメートルの圏内にあり、一部は20キロ圏内の警戒区域に入っています。
弘前大学は、ことし4月から、放射線測定や医療に関する専門チームを浪江町に派遣して定期的に土壌や植物の放射線調査や近隣の自治体に避難している町民の健康調査を行ってきました。
弘前大学と浪江町では、町内の放射線の調査と近隣の自治体に避難している町民の健康調査を長期間にわたり続ける必要があるとして協定を締結して調査を行うことになりました。
弘前大学では医学部や「被ばく医療総合研究所」など学内の関係部局と連携して、年度内には、町内での調査の範囲を広げて土壌や植物などの放射線調査を詳しく行うことにしています。
(09月01日 19時14分)