7月に開催された標記の学会の出張報告を転載します。(「八戸市医師会のうごき」掲載予定)
なお、以下の要約が演者の意図と異なっている部分がある可能性があることをおことわりしておきます。
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第24回東北学校保健・学校医大会
平成24年7月7日~8日 青森市 ホテル青森
「すこやかな子ども達の成長を願って~学校健診のあり方~」をメインテーマに開催された。
青森県からは、一般演題で国立病院機構青森病院の和賀忍院長による「成育医療研修会活動について」の発表があり、シンポジウム「これからの学校健診と健康教育」では弘前大整形外科・石橋恭之准教授による「岩木地区小中学校における運動器検診の取り組み」が紹介された。
ここでは震災関連の講演・演題のみを報告する。
「震災・原発事故と子どもの健康について」
福島県立医科大学小児科学講座 細矢光亮 教授
震災後、超急性期(~3日)、急性期(~14日)を経て、放射線被曝対策を中心とした慢性期が現在進行形で続いている。当初は水の確保から、DMAT拠点としての機能、避難地域からの患者の中継基地、医療従事者の放射線被曝対策などに追われたが、小児の救急患者は目立たなかった。5日目頃からガソリン不足の中で各チームによる巡回診療などを実施した。
SPEEDIでは甲状腺等価線量100mSvの範囲が北西に広く分布した。文部科学省による学校20mSv基準と内閣参謀の辞任発言が県民の不安を助長した。現在、約20万人が避難し、4万人が県外に避難しているが、住民票を移していない人も多数いるものと推定される。
原爆やチェルノブイリの経験から、福島では甲状腺がんリスクの増加だけに注意が必要であり、他の疾患は増えないものと想定されている。
県民健康管理調査は震災時に県内に居住していた全員に基本調査を行い、小児36万人には3年間で甲状腺超音波検査を実施し、2年毎にフォローする。リスクの高い地域から順に検査が行われ、コロイド嚢胞や結節が一定の割合で検出されているが、要再検となった少数例以外は放射線の影響とは関係のない元々あった所見であり、本格調査は3年後からとなる。(数値のメモや公表は控えるよう求められた)
県外に避難している人も各地域で検診が受けられる態勢になる。生活スタイルの変化による影響や心の健康度についての調査・対応も実施し、心身の健康を見守る態勢を整えている。
(追記:36万人の内訳は、浪江・飯館・川俣の先行調査4千人、避難地域3万6千人、全県民の子ども32万人であり、小児36万人ということではないようです。)
「学校管理下に子どもを亡くした保護者に対するグリーフ・ケアの経験 ~石巻市・大川小学校の事例に基づいた提言~」
宮城県医師会:たかだこども医院 高田 修 先生
多くの児童が死亡し行方不明となった大川小学校において、共感を元としたグリーフ・ケアが必要とされるはずだが、遺族の間でも事情の違いがあり、学校・教育委員会側の説明も二転三転するなどの難しい状況にあった。
NPOのサポートチームの活動を通じて、学校管理下で子どもの命が最優先に守られるべき状況で起こった惨事であることを共通認識として、子どもの存在を中心において、まず事実を知り理解することによって、背負いきれない荷物を整理して少しずつ前に進むことにつながってきている。
「震災後の心身の健康を守るために ~福島県の小児科医として~」
福島県医師会:いちかわクリニック 市川陽子 先生
「放射線と子どもの健康」講演会を通して、予想以上に正しい情報が伝わっておらず、安全情報はウソだという思い込みがあることを感じた。
放射線被曝は蓄積されずほとんどは修復されること、福島の子ども達には下痢や鼻出血などの症状はあり得ないこと、日本の食品の暫定基準値は旧ソ連の事故直後よりも遥かに低いこと、チェルノブイリとは事故の規模、対応、医療・経済事情が異なり、福島の子ども達に甲状腺がんやその他の健康被害が出る可能性は極めて低く、胎児への影響もないことなどを伝えている。
可能性の低いリスクを強調するよりも、放射線以外のリスクを少なくする生活を心がけることが大切である。
県内の健康調査の結果、外部被曝は90%以上が年間1mSv以下で、避難地域の一部に高めの住民もいたが、妊婦・子どもは含まれていなかった。内部被曝も99.9%が預託実効線量で1mSv未満であり、将来への健康影響は極めて低いことが明らかになりつつある。
なお、以下の要約が演者の意図と異なっている部分がある可能性があることをおことわりしておきます。
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第24回東北学校保健・学校医大会
平成24年7月7日~8日 青森市 ホテル青森
「すこやかな子ども達の成長を願って~学校健診のあり方~」をメインテーマに開催された。
青森県からは、一般演題で国立病院機構青森病院の和賀忍院長による「成育医療研修会活動について」の発表があり、シンポジウム「これからの学校健診と健康教育」では弘前大整形外科・石橋恭之准教授による「岩木地区小中学校における運動器検診の取り組み」が紹介された。
ここでは震災関連の講演・演題のみを報告する。
「震災・原発事故と子どもの健康について」
福島県立医科大学小児科学講座 細矢光亮 教授
震災後、超急性期(~3日)、急性期(~14日)を経て、放射線被曝対策を中心とした慢性期が現在進行形で続いている。当初は水の確保から、DMAT拠点としての機能、避難地域からの患者の中継基地、医療従事者の放射線被曝対策などに追われたが、小児の救急患者は目立たなかった。5日目頃からガソリン不足の中で各チームによる巡回診療などを実施した。
SPEEDIでは甲状腺等価線量100mSvの範囲が北西に広く分布した。文部科学省による学校20mSv基準と内閣参謀の辞任発言が県民の不安を助長した。現在、約20万人が避難し、4万人が県外に避難しているが、住民票を移していない人も多数いるものと推定される。
原爆やチェルノブイリの経験から、福島では甲状腺がんリスクの増加だけに注意が必要であり、他の疾患は増えないものと想定されている。
県民健康管理調査は震災時に県内に居住していた全員に基本調査を行い、小児36万人には3年間で甲状腺超音波検査を実施し、2年毎にフォローする。リスクの高い地域から順に検査が行われ、コロイド嚢胞や結節が一定の割合で検出されているが、要再検となった少数例以外は放射線の影響とは関係のない元々あった所見であり、本格調査は3年後からとなる。(数値のメモや公表は控えるよう求められた)
県外に避難している人も各地域で検診が受けられる態勢になる。生活スタイルの変化による影響や心の健康度についての調査・対応も実施し、心身の健康を見守る態勢を整えている。
(追記:36万人の内訳は、浪江・飯館・川俣の先行調査4千人、避難地域3万6千人、全県民の子ども32万人であり、小児36万人ということではないようです。)
「学校管理下に子どもを亡くした保護者に対するグリーフ・ケアの経験 ~石巻市・大川小学校の事例に基づいた提言~」
宮城県医師会:たかだこども医院 高田 修 先生
多くの児童が死亡し行方不明となった大川小学校において、共感を元としたグリーフ・ケアが必要とされるはずだが、遺族の間でも事情の違いがあり、学校・教育委員会側の説明も二転三転するなどの難しい状況にあった。
NPOのサポートチームの活動を通じて、学校管理下で子どもの命が最優先に守られるべき状況で起こった惨事であることを共通認識として、子どもの存在を中心において、まず事実を知り理解することによって、背負いきれない荷物を整理して少しずつ前に進むことにつながってきている。
「震災後の心身の健康を守るために ~福島県の小児科医として~」
福島県医師会:いちかわクリニック 市川陽子 先生
「放射線と子どもの健康」講演会を通して、予想以上に正しい情報が伝わっておらず、安全情報はウソだという思い込みがあることを感じた。
放射線被曝は蓄積されずほとんどは修復されること、福島の子ども達には下痢や鼻出血などの症状はあり得ないこと、日本の食品の暫定基準値は旧ソ連の事故直後よりも遥かに低いこと、チェルノブイリとは事故の規模、対応、医療・経済事情が異なり、福島の子ども達に甲状腺がんやその他の健康被害が出る可能性は極めて低く、胎児への影響もないことなどを伝えている。
可能性の低いリスクを強調するよりも、放射線以外のリスクを少なくする生活を心がけることが大切である。
県内の健康調査の結果、外部被曝は90%以上が年間1mSv以下で、避難地域の一部に高めの住民もいたが、妊婦・子どもは含まれていなかった。内部被曝も99.9%が預託実効線量で1mSv未満であり、将来への健康影響は極めて低いことが明らかになりつつある。