踊る小児科医のblog

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子宮頸がん予防ワクチン積極的勧奨の差し控えの意味 接種との因果関係とワクチン成分との因果関係は違う

2013年08月07日 | 予防接種
 すでに報道などえ伝えられている通り、4月に定期接種になったばかりの子宮頸がん予防HPVワクチンが、6月から「積極的勧奨を差し控える」ことになっています。接種自体は中止になったわけではなく、非常にわかりにくい状態が続いています。

■「複合性局所疼痛症候群」とHPVワクチンの関係は? 今後の見込みは?

 問題となった複合性局所疼痛症候群(CRPS)自体が、原因も病態も不明の疾患なのですが、予防接種や外傷などの誘因がある場合以外に、明らかな先行損傷のない場合も多いようです。海外ではHPVワクチン以外にも様々なワクチン後の報告がありますが、いずれも稀で特定のワクチンとの因果関係は認められていないとのことです。

 ここで注意しなくてはいけないのは、接種との因果関係と、ワクチン成分との因果関係は必ずしも同じではないということです。 今回問題となったCRPSのケースでは接種との因果関係の可能性が想定されていますが、それが「HPVワクチンの成分が原因」という結論に直接結びつくわけではありません。

 海外ではHPVワクチン以外でもほとんどのワクチンが筋肉内注射(筋注)ですが、日本ではHPVワクチンだけが筋注で他は皮下注です。ここから先は推論になりますが、CRPSが筋肉や神経の微細な損傷と関係があるとすると、日本だけHPVワクチンが問題になっていることの説明はつくかもしれません。個人的には、筋注の接種手技(部位や局所抵抗、注入速度など)に問題があるのではないかと考えています。

 世界保健機構(WHO)でも、世界で2億本接種されたHPVワクチンの安全性について「現在までにCRPSの原因としてHPVワクチンを疑う理由はほとんどない」と総括していることから、日本だけが接種を中止する可能性は少ないと考えられます。

■ すぐに接種すべきか、待つべきか? 接種が途中までの場合は?

 現時点で、いつ頃までに判断が決まるのか情報はありませんが、接種再開か「差し控え」が続くかを決定する時期は年内の比較的早い時期になると推測しています。もし接種再開になったときには、接種が途中までで接種間隔があいてしまった場合でも、残りの接種回数を定期接種で実施できるよう配慮されるはずだと思います。

 HPVワクチンは、他の全ての予防接種とは異なり、今すぐに子どもが感染して発症し重症化するのを防ぐワクチンではないため、接種を急ぐ必要はありませんが、当院では以上のような考え方を理解していただいた上で、希望する方への接種は継続しております。ただし、国の結論が様々な要因に左右される可能性は否定できません。

風疹の流行はピークを過ぎたが… 国は「特別な対応は取らず」 個人防衛の徹底を ワクチン流通は回復

2013年08月07日 | 予防接種
 首都圏や関西などで流行していた風疹はピークを過ぎましたが、これは季節的な変動であって、成人にワクチン接種を勧める運動が効を奏したからではありません。特に青森県では流行自体がほとんどみられなかったので、感染する可能性のある人が多数残っている状態が来年以降も続くことになります。

 これまでお伝えしたように、昨年から続いている流行は20~40代の男性が中心で、ほとんどの人は予防接種をしていません。対策は予防接種以外にはありません。

 予防接種の目的として「個人防衛」と「集団防衛」の2つがあります。集団防衛とは、ほとんどの人が個人防衛としてのワクチン接種で免疫を持つことにより、社会全体で流行をなくすことです。同じMRワクチンで接種している麻疹と同様に、風疹も最終的には世界中でウイルスを根絶してしまうことが可能であり、現実に南北アメリカ大陸では風疹の流行が制圧された状態にあります。そんな中で、日本のアウトブレイクは世界から汚染国・流行国と名指しで指定される事態に至っています。

 現在、23歳以下(今年大学を卒業した人と同じ世代)はMRワクチン2回接種を済ませているはずで、接種率は不十分でも今後大きな流行に至る可能性は少ないのですが、その上の世代での流行を防ぎ、先天性風疹症候群の発生をなくすためには、国の責任で幅広い世代に対し出来るだけ短期間にワクチンを接種するしかありません(集団防衛)。しかし田村厚労相は6月に「特別な対応は取らない」と明言しています。

 流行地域だけでなく、青森県内でもいくつかの自治体で風疹予防接種の助成が始まっています。階上町でも条件を限定した助成が実施されていますが、町内の医療機関限定になります。八戸市は県内でも最も消極的です。これらの接種はいずれも個人防衛が目的であって、流行をなくすことは期待できません。流行の大小はともかく、ある程度の流行が今後も数年程度続くものと考えて、家族、会社、身近な集団などの中で、できるだけ多くの人がお互いを守るために自ら接種していくしかありません。

 なお、ワクチンの流通は回復してきたので予約はいつでも可能となっています。

院内報8月・9月号と6月・7月号をHPに掲載

2013年08月07日 | こども・小児科
毎回発行が遅れておりますが、院内報を2号(4ケ月分)HPに掲載しました。

■ 院内報 2013年6月・7月号

・福島県の甲状腺がん検診結果をどう読むか
  発生率はベラルーシと同等
・2013年8月の予定表

■ 院内報 2013年8月・9月号

・院内版感染症情報 ~2013年第30週(07/22~07/28)
  手足口病ワンポイント「出席停止の必要はありません」
・子宮頸がん予防HPVワクチン「積極的勧奨の差し控え」の意味は?
  「複合性局所疼痛症候群」とHPVワクチンの関係は? 今後の見込みは?
  すぐに接種すべきか、待つべきか? 接種が途中までの場合は?
・風疹の流行はピークを過ぎたが… ワクチンの流通は回復の見込み
・8月・9月の診療・休診日、急病診療所の予定
・2013年9月の予定表

http://www.kuba.gr.jp/info/ih.html