踊る小児科医のblog

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新型コロナ「PCR検査拡大で早期発見治療」が間違いである理由:陽性的中率は0.7%しかない(99%は偽陽性)

2020年03月13日 | 新型コロナ
なんとも頭が痛い。同じことを何度も書きたくないのですが、医師免許を持っている自称識者(?)でも「PCR検査を韓国並みに拡大して、早期発見治療」などと唱えている。
もちろん、まともな医者ならそんなこと言う人は誰もいないのですが。。

現在のPCR検査は感度が70%かそれ以下で、2回3回と検査して陽性になることも多く、陰性であることが感染していないことを意味しない(偽陰性)。
それが一つ。

更に大きな理由が、
陽性的中率は事前確率(ここでは検査対象者の「有病率」として表記)によって大きく変動し、有病率が小さい時には陽性的中率は低くなり、ほとんどが偽陽性になってしまうことです。
(陰性的中率は逆の変動をする)

ここで使ったエクセルのシートを公開します。ダウンロードして、ご自身で有病率の欄に適当な数字(%)を入れて確かめてみてください。
http://www.kuba.gr.jp/data/2020/2by2table.xls

前回は感度を95%に設定しましたが、現実に合わせて70%に下げます。

「感度70.0%、特異度99.9%」を固定して、
有病率を0.001%(10万人に1人)、10%、90%と変動させてみます。

1) 有病率 0.001%

 10万人の中の1人を見つけるために検査しても、陽性的中率は0.7%しかなく、100人も偽陽性が出てしまい、肝腎の1人は30%の割合で偽陰性となって見つけられないかもしれない。
 現在の日本では平均すると1/10万ですが、これは接触者や有症状者などの中で見つかったもので、リスクの低い国民の有病率はおそらくもう一桁低いと思われます。その程度の集団に対して、軽い風邪症状程度で「早期検査」して、1000人に1人陽性者が見つかったとしても、その99.3%は偽陽性であり、有害無益でしかありません。

2) 有病率 10%

 これは現状の「接触者や医師が必要と認めた有症状者」に相当します。
 陽性的中率 98.7%
 陰性的中率 96.8%
この数字は、いずれも臨床的に許容範囲内で、検査は有効に機能していると言えるでしょう。10万人検査して、陽性者7090人のうち、真の感染者が7000人、90人が偽陽性です。(感染者のうち3000人は偽陰性)
 偽陽性を更に少なくするためには、更に事前確率を上げる必要がありますが、そうすると3割もいる偽陰性者や、検査対象外とされた中での陽性者の見落としが増えるので、ある程度幅を広げて「有病率5〜10%程度と想定される対象者」に検査するのが現実的と言えるでしょう。(5%の場合、陽性的中率97.4%、真陽性3500人、偽陽性95人)
 
3) 有病率 90%

 この状況は、インフルエンザの流行期に典型的な症状で受診したけれど、(必要ないと思いつつやむを得ず※)検査したような場合です。
 陽性的中率 99.98%(=100.0%)
 陰性的中率 27.0%
その結果、陽性なら間違いないけれど、陰性でも大半はインフルエンザと診断できるので、インフルエンザの薬を処方することになります。
 要するに、検査結果が診断や治療方針に影響しないので、このような検査は本来は不要なのです。

※これまで日本中の内科や小児科で、求められるのに応じてやむを得ず検査してきたことが、現在の「検査狂想曲」に繋がっていると考えて間違いないでしょう。

4) 有病率 1%
 表には示しませんが、陽性的中率 98.7%、陰性的中率 96.7%となり、まずまずと思われるかもしれませんが、10万人の中の1000人の感染者のうち、300人は見落とし、残りの700人は陽性となったが、それに加えて99人が偽陽性となる計算になります。
 PCR検査で陽性の場合はそれ以上の検査はなく、真の陽性と偽陽性の区別はつかないので、感染者として隔離されたり治療されたりすることになります。
 799人中99人は少し多すぎるように感じられます。

3月13日現在、青森県ではPCR検査を68件に実施して、陽性はゼロのままです。医師が必要と認めた対象者の中でも、この「1%」に満たないレベルなので、一般の県民の中で検出される可能性は、上記の通り1/100万かそれ以下と考えられます。

新型コロナウイルス感染症について(青森県)
https://www.pref.aomori.lg.jp/welfare/health/wuhan-novel-coronavirus2020.html