踊る小児科医のblog

青森県八戸市 くば小児科クリニック 感染症 予防接種 禁煙 核燃・原発

『シューマンの指』の時代と空気 物語で語られたシューマンのピアノ曲のリスト

2011年07月22日 | ART / CULTURE
■ 『シューマンの指』(Bookmeterへの短評)
これは面白い。ミステリー・音楽小説・青春小説の枠から飛び出した意欲作。本当の主題はシューマンの音楽。やや修辞がくどい気もするが音楽なしに音楽を響かせるにはこれくらい必要なのかも。問題は読者である私がシューマンの音楽に詳しくないこと。一通りちゃんと聴いてから再読したい。結末はあまり気持ちよくないが。

(追記:正直言ってラストは禁じ手と思うが、だからといって全体が失敗作とは言えない。)

図書館で借りた本なので、メモを残しておきます。文庫化されたら手元に置いておこうか。
(ネタばれはありません)

■ 『シューマンの指』の時代と舞台

冒頭の手紙は1984年(昭和59年)12月7日
主人公(語り手)は当時25歳(誕生日の記載はないので誕生日後と仮定)
東北の中心都市(仙台?)の大学医学部3年生(=1982年入学)
(私は1984年には仙台の大学医学部4年生=1981年入学)
T音大(東京音大?)には一浪後、1979年に入学、同年中退。(=更に2年浪人?)

もう一人の謎の主人公(天才少年)が指の事故にあうのは1979年7月(高3)
高校入学は1977年 このとき語り手は高3
都立の進学校 調布市・武蔵野市近辺か → 八王子

話は30年後に過去の封印を解いて回想する(2009年か)

逆算すると、
主人公(語り手)は1959年生まれ 1979年に20歳(になる年) 浪人後、T音大1年
主人公(天才少年)は1961年生まれ 1979年7月、18歳の誕生日に事故 高校3年
(私は1962年生まれ 1979年に17歳 神奈川県の県立高校2年)

当時の自由な空気を残していた公立高校の雰囲気は何となくわかる気がする。
と言っても、ここに出てくるようなクラシック音楽の世界とは全く関係なく、ごくありふれた高校生だった。
物語では、流行の音楽(ニューミュージックやロック)以外には当時の時代を映し出すような背景にはほとんど触れられていない。最初から最後まで、音楽のみ。

■ ダヴィッド同盟
音楽俗物のペリシテ人と闘う英雄ダビデ
 旧約聖書「サムエル記 上」の巨人ゴリアテを倒すダビデの物語
フロレスタン 明朗闊達、積極的
オイゼビウス 内向的、思索的
謝肉祭 Op.9 第5曲<オイゼビウス> 第6曲<フロレスタン> 終曲<ペリシテ人と闘うタヴィッド同盟の行進>

音楽俗物のペリシテ人
「ピアノといったらショパン、みたいにいう人たち」「あるいはチャイコフスキーやブラームスが、シューマンよりずっと偉いと思い込んでいるような馬鹿な人たち」(天才少年談)

■ 本文中で主人公が物語るシューマンのピアノ曲

p.12 ピアノ協奏曲イ短調 Op.54 「ピアノ協奏曲というジャンルにおける最高傑作」
p.18 アルフレッド・コルトーの演奏
p.29 ダヴィッド同盟舞曲集 Op.6
    他の(物語では触れられない)ピアノ小曲集
     幻想小曲集 Op.12 ノヴェレッテン Op.21 ウィーンの謝肉祭の道化 Op.26
p.46 トロイメライ 子供の情景 Op.15 の第7曲
p.49 ピアノソナタ第1番嬰ヘ短調 Op.11
p.54 トッカータ Op.7
p.60 フモレスケ Op.20
p.66 ベートーベン ピアノソナタ28番イ長調 Op.101
p.71 ベートーベン ピアノソナタ22番ヘ長調 Op.54
p.74 モーツァルト ピアノ協奏曲22番変ホ長調 K.482
p.71 ベートーベン ピアノソナタ29番変ロ長調 Op.106<ハンマークラヴィア>
p.86 謝肉祭 Op.9 「小曲集形式の決定版」 ヴィルヘルム・ケンプ
p.91 花の曲 Op.19 ホロヴィッツ「カーネギー・ホール・コンサート』
p.101 ピアノソナタ第2番ト短調 Op.22
p.134 幻想曲ハ長調 Op.17 (p.150-163)
p.144 リーダークライス Op.39 Mondnacht(月夜)
p.148 ミルテの花 Op.25 Die Lotosblume(蓮の花)
p.192 交響的練習曲 Op.13
p.198 ピアノソナタ第3番ヘ短調<管弦楽のない協奏曲> Op.14
p.247 森の情景 Op.82 第4曲<呪われた場所> 終曲 Abschied<別れ>
p.264 天使の主題による変奏曲(遺作)
p.292 アニー・フィッシャー「シューマン集」
    子供の情景 Op.15 クライスレリアーナ Op.16 幻想曲ハ長調 Op.17

■ 著者 奥泉 光(Wikipedia)
1956年生まれ 山形県出身 埼玉県立川越高等学校、国際基督教大学卒

■ 動画

著者インタビュー
http://www.youtube.com/watch?v=eDBTGS2HNts
http://www.youtube.com/watch?v=cTCWZwuLCEo

シューマン ダヴィッド同盟舞曲集より Op.6-2, 5, 11
ピアノ:マウリツィオ・ポリーニ
http://www.youtube.com/watch?v=3GBgWzbb2qU

■ 幻想曲 Op.17 - 冒頭のシュレーゲルの詩文

 色彩々の大地の夢の中で
 あらゆる音をつらぬいて
 ひとつの静かな調べが
 密かに耳を澄ます者に響いている

最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
わたしも、読みました。 (たかちゃん)
2012-11-09 07:32:39
 曲について記述部分をまとめていただきありがとうございます。調べなおそうかと思ってましたので、大変助かります。
 この本、文学とか、推理小説としてよりも、むしろ奥光さんのシューマン論として読むと、大変スリリングですし、私のようなシューマン初心者には勉強になると思います。
 我がライブラリー調べてみると、ホロヴィッツやケンプ、アルゲリッチ、ブレンデル等が奏でたCDが山積み状態。ほとんど聞いていません。美しいメロディーに紛れた沁みて来るような孤独感と薄気味の悪さが、苦手なのかも。(シューベルトも・・・)
 さあ、それでは、まどろみの世界へ、魔物狩りの探検にもう一度チャレンジしてみます。
 
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。