今日の落語会は人間国宝の弟子と孫弟子のふたり会。人間国宝というのは重要無形文化財保持者のことだが、「無形」のものを「保持」するというのはどういうことなのか、ということはここでは問わない。何か物を作るということについての技能を評価するなら作品を観ればよいだろうが、芸能ということになると誰が何を基準に評価するのかということに合理的な基準を設けるのが困難だ。しかも、芸能は演じ手だけで創り上げるものではない。演じ手と観客とが一体となって創り上げる空気のようなものまでをも含めた全体のことである。人間国宝といえども、観客なしで収録した噺はおもしろくもなんともない。また、人間国宝を決めるのは誰なのか、ということも素朴に疑問である。ある人の芸を評価できるのは、その人以上の力量を持つ人でなければならないはずだ。自分ができもしないことを云々できるはずがないではないか。それなのに世間一般では人間国宝などというとわけもわからずに崇め奉ったりする。人は実体ではなく表層しか見ないことの典型例だ。勿論、人に褒められて悪い気はしないだろうし、褒められたことを拒絶するのも大人げないと思うだろうから、「人間国宝」の認定を受ければたいていは素直に従うのだろう。しかし、そういう認定を辞退する人がいるのももっともなことだと思う。
ところで、口演終了後1時間半ほどして今日の口演の切符を取ったチケットぴあから「レビューを書きませんか?」というメールが届いた。レビューを書けるほど落語のことを知らないので何も書けない。長年生きてきて恥ずかしいことだ。
本日の演目
開口一番「普請ほめ」 桂そうば
「転宅」 柳家三三
「宿屋の仇討ち」 桂吉弥
(仲入り)
「七段目」 桂吉弥
「殿様と海」 柳家三三
開演 14:00 終演 16:35
会場 紀伊國屋サザンシアター