?口元まで持ってきたコーヒーカップを止め、目くじらを立ててそれを投げ付ける気分の市民もいるだろうが、ポスト幸山(次期熊本市長)は繰り返すことになるが現職の4選不出馬宣言と、それに続いた大西一史県議の立候補表明というシナリオ通りという様相が色濃くなってきた。流行の「後出しジャンケン(優勢)」を阻んだのは、その彼らに未だ生きる「肥後の引き倒し」である。
?政策立案能力、リーダーシップ、それに倫理観が首長には求められるが、政令指定都市の首長ともなると場合によっては知事以上の資質が要求される。しかし肯定、否定は控えるが、「チャラ男で執行役など端っから無理」、「ハゲタカファンドに詐欺は付き物」、また「市民派どころか政治に関わってはならない立場に有りながら特定の県議とは物心両面で昵懇の間柄」と、候補予定の顔出しの段階から市民には満足度50パーセントにも至らぬ状況。これでは「我が政令指定都市(熊本)の市長」とは言い難い。
?ここではその「政令指定都市に相応しい市長論」は棚に上げ、候補選定から選挙予測に絞ったまとめとするが、自民党推薦、公認問題で出て来た「約束の盆前には決められず、9月に入っても出て来ない」(某県議)といった選考委員長(江藤市議)批判は筋違い。同背景には同党支部長である代議士らの自らの次期選挙での公認問題があって、「敗戦責任」を懸念しての探り合いが影響を与えた。平成24年の山梨選挙区における選考会でコスタリカ方式は復活を見せたが、地方区公認候補と比例区公認候補とでは大人と高校生くらいのレベルの違いが彼らにはあって、その争奪が陳情へ上京する地方議員まで関与させられている。そんな中、「敗戦責任」を取らされる戦術にでもはまったら後悔ではすまなくなる。これが代議士らの動けない理由で、それでは無視すれば良いかとなるが、政党の組織というのは簡単に片付けられない重さもあって、こうした理由が自民党の選考委員会に影響したといえる。結論からいうと、「勝てる」と確信するまでの候補者が現れなかった、ということになる。県外では「負けない候補」として野党との相乗り候補の擁立まであるが、野党が衰退した熊本では相乗りの相手は市民派。
?8月7日に実施した「明日はどっちだ!?(熊本市長候補に誰を支持するか)…200人の市民に聞きました?」でのアンケート結果は1位が上田晋也氏(タレント)で、それに大西一史県議、細川佳代子さん(元総理夫人)が続いた。ここまで名前の上がった候補予定者の中では、大西県議がダブルスコアでの第1位。
?民主政治には、そのリスクとして選挙で票の格差問題が存在する。 票の格差問題といえば民主政治の条件として、数の格差問題が上がる。しかし、整われる民主政治上での一票の質という格差も明らかな問題。それだけに説明も難しいが、日頃の生活態度を注意される孫の一票とそんな孫の将来を心配する爺さまとの一票が平等とか、極楽トンボの一票と眼球の鋭い鷹の一票とが価値的に同じというのは、ある面からだと負を生む平等。裏を返せば、タレントを並べて数合わせで政権を維持、奪還したり、また飴を配って議席を取得してきた政治が、それを都合が良いとして啓蒙を怠ってきた結果でもある。それが時に理想政治とはギャップを生む選挙結果を作り出したりもする。だが、日頃の生活の厳しさから朝から晩までがまだす(頑張る)市民が、朝からパチンコに興ずる保護受給者を恨めないのと同じく、現行選挙制度の中でいかに「理想政治(自治)」を実現するか、それが政治を志す者、それを支持する市民の使命ではなかろうか。「繰り返す結論」を覆す秘策はあるか、ということになるが、先述した格差なき有権者にその糸口はある。即ち市民の側というスタンスを逆手に取っての運動となるが、短期勝負で要 するエネルギーは予想以上に想定され、効果ある戦術を効率的に図れるかとなると、先行有利のトップが条件的に手強い過ぎるという結論に戻る。
?現在、出馬を表明した人、その可能性のある人は大西県議(46)、市議の下川寛氏(54)、経営コンサルティング会社代表の加藤智治氏(39)、市観光文化交流局長の坂本純氏(60)、そして東光石油会長の石原靖也氏(60)、シアーズホーム社長の丸本文紀氏(59)の6名。
?客観的に、そして冷静に覗く者にとっては面白味のない11月の熊本市長選挙…。幸にして立候補者の公開討論会も企画されているが、願わくば質の高い、奥の深いテーマでの討論として、無回答も市民に解りやすく広報してもらうことが主催者側には求められる。出馬から投票まで市民にはイベント、候補者にはパフォーマンスとなっては、これほど真の市民社会にとって悔いの残る悲劇はない…。