原発推進か、それとも廃炉か、また合併か市町村統合反対か、といった住民を二分するような決断を迫られる課題などない場合、すなわち特異な争点の見当たらない首長選挙で、「公約が決め手」と自信をもって応えられる有権者がどれだけいるだろうか。まして接戦での当落となると、双方の支持者から「政策の違い」と言われても、両候補の政治に特段の違いはなかったといえる。
人は誰でも理想を繕うとするが、その二分された背景には義理と人情に繋がる地縁や血縁、また利権という現実が存在することは明らか。
また政治とプライベートは別物という考えにあるが昨今、倫理としてそれが政治姿勢に組み込まれた。女性層の有権者を中心にそれが嫌悪されて問われ始め、国政では魔女狩り化した感じにある「不倫等の男女問題」である。それが感情型の選挙では、最も投票に影響するから重大。
こうした現実の投票条件を背景にして選挙は行われるが当然、候補者側の陣営もそれらを念頭に選挙運動を展開する。すなわち、現実的な数取り合戦である。
先々号で案内した通り10月22日の玉名市長選挙に出馬を予定しているのは元市議の蔵原隆浩氏(51歳・熊本商科大学卒)、現職市議の田中英雄氏(56歳・明治大学卒)、そして元県議の橋本太郎氏(71才・早稲田大学卒)の3人。
蔵原氏には早速、次衆院選に立候補が噂されている西野大亮氏が支援を決め、同氏が帯同しての挨拶回りに入り、また田中氏には早々と現職が支持を表明。
ところで玉名市長選にも積極的に介入(後援会活動)した西野氏に比べて、構図的にそこと最も遠距離にある野田毅後援会だが、同後援会事務所は未だ静観の状態。そんな中で飛び出したのが、自民党県連の幹部である某県議の「浦田(祐三子)県議を担いで自らの選挙でも挽回を図る」との見解。決して「鞍替えしての市長選」は意外な賭けでもないが、同候補なら県議選での1万票余りの得票を考えると、先に述べた不祥事でも浮上して来ない限り当確。
ところが蔵原陣営にあると見た他選挙区の先述した県議が、「前回の市長選挙を知らないのか、2万票の実績がある」と蔵原氏の当選を主張。そうなると、田中氏の支援者も「現職の得票も2万票余り」と強き。
次の選挙に最期を賭ける野田毅後援会が静観で通せるわけがなく、また市長選で敗北を市民に見せたら自らの選挙も危ういわけで、有権者に違いの最も分かり易いのは「浦田候補(女性)」と告示寸前、後出しじゃん拳で山を動かす可能性も確かにある。もちろん、二者にとっては大きな賭け…。