JA熊本果実組合連合会が2008年に白州工場(山梨県北杜市)の増築に入った際、周辺の農家とトラブルが発生。新しい井戸から試験的に取水を始めると、途端に周辺の井戸水では水圧が下がり、蛇口から水が出なくなったのである。この時、同連合会は「市長(北杜市)の許可を得ると周辺の同意書は不要」と回答したため、土地売買の一部契約者が、それを破棄するという騒ぎにもなった。現地関係者は「同工場の建設には色々な噂があった」と語るが、同じ農業生産者からの批判となると、「コーヒー飲料ならともかく、JA熊本県果実連は熊本の果樹農家が生産したみかんをヤクルト、カゴメという競合の飲料メーカーから製造受託し、それを販売してもらっているのだから、みかん農家のプライドまで売っている」(JA和歌山、愛媛、静岡の果樹担当談)という皮肉ほど痛烈なものはない。
それが別の形(仏ダノン社によるM&A強行策に対抗しての株主対策)で知らされたのが、同連合会の理事らだけが知る「ヤクルト他の有力株主」という特権。先にも述べたが、農協が有価証券を所持したとしても何ら違法性はない。しかし受託製造における施設、機械提供としての経理処理が問題と限定するわけではないが、農協には監督指針というものが存在する(詳細は次号)。
一般論から「93歳の会長を白寿まで酷使するつもりか」と問うと、「トップの長期化は癒着、利権などの弊害を生み、社員の勤労意欲も失われる」と複数の理事が揃って否定するが、彼らの反会長説について、果樹農家の若手が「反発も総会(会長選)までで、結局は利権配分を巡っての反発」と、これまた揶揄する口調で解説。彼によると「前回の増改築でも、そうした手法を使って会長に利権を求めた理事がいたと聞く」と、会長再選劇の裏舞台は利益配分要求と語り、「明日の熊本果樹農家を責任として考える理事は、浦田会長以外にはいない」と続けた。
確かに同連合会は来年、熊本本所及び工場の大改築に入る。だが、「次の次はないね、JA熊本県果実連はJA熊本県経済連に統合という計画があって、その道筋にある」と、JA熊本県幹部の一人が断言。すなわち、浦田会長の後継は存在しないのである。
そのためか浦田会長は九月中旬、JA鹿児島県側の理事を訪ねた。訪問の目的が、みかんの生産や販売に関しての協議でなかったことだけは明らか・・・。