万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

南北の経済共同体の実像とは

2007年10月04日 18時33分45秒 | アジア
 朝鮮半島における南北のトップ会談において、両国は、平和体制確立に加えて、”経済共同体”の構築を目指すことで合意したと伝えられています(日経10月4日付朝刊)。ところで、この”経済共同体”、ヨーロッパで設立された経済共同体とは、全くの別物となりそうなのです。

 その理由は、ヨーロッパにおける経済共同体は、加盟国が相互に経済自由化政策(関税や非関税障壁の撤廃、市場開放、流通の自由化…)を進めることによって構築されたてきたからです。一方、南北の場合には、北朝鮮は、未だに市場経済を採用しておらず、自由化とは、即、経済部門における自由主義体制への移行と直結してしまいます。北朝鮮の独裁体制が、経済の統制と利権の独占の上に成り立っていることを考えますと、かの国が、自由化を容認するとは思えないのです。南北の経済共同体とは、結局は名ばかりとなり、韓国が、北朝鮮の特別区の工業団地に投資を行うという形となりましょう。

 南北の”経済共同体”とは、韓国は北朝鮮の安い労働力を利用し、北朝鮮は自国民を安価な労働力として提供することにより外貨を獲得するという、いわば、打算の共同体と言えそうです。

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