万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

排出権事業の審査は国連には任せられない?

2007年10月25日 18時34分02秒 | 国際政治
 温暖化ガスの排出権取引に関し、国連が、日本企業の「クリーン開発メカニズム」の事業申請を不承認としたとする記事が、本日の新聞朝刊の一面に掲載されました(10月25日付日経朝刊)。「クリーン開発メカニズム」は、京都議定書にあって、実質的な温暖化ガス削減効果が期待できる唯一の方法であるだけに、国連が、企業のプロジェクト参加へのインセンティヴを低下させるとしますと、これは、ゆゆしき問題であると思うのです。

 この問題の発生は、不透明性と制度上の不整備が指摘されている国連のみに審査権を与えたことにもあるようです。むしろ、参加国の政府に審査権を認めた方が、企業にとりましては参加しやすい環境が整うことになります。政府は、企業に対して事業の承認を得るための基準や条件を明確にできますし、審査の迅速化をはかることもできます。また、仮に企業側が不服とした場合には、行政不服審査や行政裁判の道も開かれることになりましょう。

 日本国のように削減目標の達成の困難な国では、「クリーン開発メカニズム」の活用が望ましく、ポスト京都議定書の議論では、審査権の所在に関する議論を深めていただきたいと思うのです。

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