万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

玉虫色の中国の「科学的発展観」

2007年10月15日 18時25分57秒 | アジア
中国共産党大会が開幕 真の「胡錦濤時代」幕開けか(朝日新聞) - goo ニュース

 共産主義と科学との結びつきを、計画経済下における科学的管理主義に求めることができます。そうして、科学という言葉は、共産主義の先進性を誇示するための非科学的なスローガンでもあったのです。

 それでは、「科学的発展観」を掲げた中国政府は、どのような経済を築こうとしているのでしょうか。貧富の格差を解消し、環境問題にも取り組むような”持続可能な成長”を目指すならば、恐らく、富裕層や都市部への課税強化+貧困層や農村部への再分配政策のセットと、環境規制の強化が柱になるものと予測されます。これらは、ほとんど野放し状態にあった分野ですので、共産主義国家としては、当然と言えば当然な政策なのかもしれません。

 しかしながら、その一方で、これらの政策が実施されますと、経済成長にはブレーキがかかりることになります。そうなれば、一人当たりGDP4倍計画や自主開発による軍事力強化といった他の目標の達成は容易ではなくなることになりましょう。活動報告では、幾つもの目標を列挙していますが、如何に”科学”を駆使しても、すべてを同時に達成することは困難なのです。

 このように考えますと、どの目標に優先順位を付けるかによって、中国の将来は、180度違ってくるとも言えましょう。
コメント (1)
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