万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

無償化よりも教育戦略を

2009年07月08日 19時57分41秒 | 日本政治
民主党の衆院選公約最終案、来年度から高校教育無償化(読売新聞) - goo ニュース
 家計が苦しく、経済的な理由から高校進学の夢がかなわない生徒さんに対して、奨学金や無償給付制度で救済をはかるということでしたら、国民の多くも賛成したことでしょう。しかしながら、世帯の所得レベルとは関係なく、公立高校に通う全員の生徒さんの学費を無料化するとなりますと、これは行き過ぎなようにも思うのです。

 今日の公立高校については、学力のレベル低下と教育環境の荒廃が指摘されており、必ずしも充実した学校生活が送れるとは限らないようです。この状態で、無償化を実現したとしても、行き場をなくした若者や、目的意識や学習意欲を持てない生徒さんが時間を潰すだけに登校してくるようになるかもしれません。学習内容の質や学力の向上を伴わなければ、教育への予算配分が無駄になってしまいます。学習意欲を引き出すような、何かひと工夫が欠けているように思われるのです。

 教育予算を効果的に使うには、学習への動機づけや興味を惹きつける方法を考えることこそ大事です。安易な給付政策よりも、政党や政治家は、国民が拍手を送るような教育戦略の立案に力を注ぐべきなのではないでしょうか。

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中国の移民政策は世界をバルカン化する

2009年07月08日 15時34分09秒 | アジア
ウイグル暴動 死者156人、拘束1434人に(産経新聞) - goo ニュース
 東トルキスタンでは、チベットと同様に、中国からの分離・独立を目指すウィグル族の人々の運動が活発に展開されてきました。しかしながら、今回の事件だけは、これまでの対立構図とは大きく違っているようなのです。

 これまでの抗議運動では、ウィグル人の抗議の対象は、あくまでも中国政府であり、独立要求も政府に向けられていました。ところが、現在、ウィグルで起きている事態は、ウィグル族と漢民族との間の相互憎悪に基づく民族対立なのです。このことは、住民同士の暴力の応酬が起きたことを意味しており、旧ユーゴスラヴィアの民族紛争を思い起こさせます。

 民族対立に発展した原因の一つには、中国当局による漢民族の移住促進政策を挙げることができます。もちろん、この移住には、ウィグルに埋蔵している天然資源の略奪を伴うものであり、ウィグルの人々にとりましては、現在の状況は、植民地支配による土地と富の強奪以外のなにものでもないはずです。それにも拘わらず、漢民族は、厚かましくも、ウィグル人の抗議運動を犯罪まがいの”暴動”と見なして報復に出たのですから、ウィグル族の怒りは収まりそうにありません。

 今回の事件によって、中国が進めてきた移住促進政策が、民族感情に火をつけ、激しい対立と闘争をもたらすことが明らかとなりました。チベットや東トルキスタン、あるいは、台湾のみならず、中国の海外移民推進政策は、世界をバルカン化するかもしれないと心配になるのです。
 
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