万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

ウイグル問題は同化政策では解決しない

2009年07月17日 15時52分27秒 | 国際政治
ニュースを斬る 新疆ウイグル「純粋な悪魔はいない」 中国当局の民族政策が破綻した(日経ビジネスオンライン) - goo ニュース
 上記の記事では、ウイグル問題の解決のために、中国政府は、従来の少数民族優遇政策をやめて、同化政策に切り替えるべきことを提言しています。アメリカをモデルに、人種や民族の違いに拘わらず、すべての国民を同等に扱い、言語教育も施してはどうかというものです。しかしながら、両者の置かれている立場は、あまりに隔たっていると思うのです。

(1)定住者と移民
 現在、新疆ウイグル自治区として中国に不法に植民地化されている地域は、もとより、ウイグル人といった西域の人々が住む地域でした。かつては、東トルキスタンとして独立した経験もあり、ウイグル人から見ますと、漢人は後から来たいわば”侵略者”と映るのです。アメリカの場合は、移民として自国に渡ってきた人々に対して英語を教えるには何らの問題もありませんが、もとからその地に定住している人々に対して、後から移住してきた人々の言語を教育するとなりますと、これは、征服地における被征服民族の同化の強制となります(独自性の破壊?)。

(2)独立問題の有無
 アメリカは、1776年に独立宣言を発し、既に本国から独立していますが、ウイグルには、将来において中国から独立する可能性があります。現時点で、漢人への同化政策を進めますと、ウイグル人が、中国に吸収される結果を招きかねません。

(3)信教の自由と思想統制
 アメリカでは、信教の自由が認められていますが、中国では、共産主義を国是としているため、同化政策が宗教にまで及ぶ可能性があります。ウイグルの人々の多くはイスラム教の信者ですので、反発を招くことは必至です。

(4)意識の違い
 アメリカに移民してきた人々にとって、英語を学ぶことはアメリカ社会でチャンスを掴むことでもありますので、高い英語習得意欲を持っていますし、社会もまたがアメリカン・ドリームの実現としてそれを受け入れています。一方、ウイグルの人々にとりましては、反感を持つ人々が使っている言語の習得となりますので、モチベーションが下がってしまいます。また、相互憎悪がある中で、漢人がウイグル人を快く受け入れるとも思えません。

 以上の点から考えますと、中国当局による上からの同化政策は、民族対立に”火に油を注ぐ”ことになるかもしれず、この問題の根本的な解決方法は、ウイグル独立か、連邦制における自治権の拡大のいずれかなのではないか、と思うのです。

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コメント (2)
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