万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

イスラム独裁を阻止するイスラム

2009年07月22日 15時40分28秒 | 中近東
テヘランで改革派支持者らデモ、治安当局が数十人拘束(朝日新聞) - goo ニュース
 1979年にイラン革命が起きたとき、西側諸国は、すわ、前近代的な神政政治の国家が登場したと、戦々恐々としたものです。しかしながら、今になって考えてみますと、イスラム教という倫理上の枠があるからこそ、イランの独裁国家化に歯止めがかかっているのではないかと思うのです。

 キリスト教世界でも、かつては国王と謂えども神の下にあるとされ、絶対君主でさえ、それを超えることは許されないとされてきました。一方、コーランにおいても、神は、人間の不正や嘘つきを嫌い、暴力による支配にも反対していると、読み取ることができます。このため、イスラム教の教えに忠実であればある程、不正選挙の疑いがあり、暴力を手段に統治を行おうとする現政権は、教義上、許されない存在となってゆくのです。現政権を擁護しているハメネイ師は、国家の不安定化を招くとして改革派を威圧的に牽制しているそうですが、改革派の抗議が一向に収まらないのも、それが宗教的な信念に基づくものであるからかもしれません。

 イラン革命が、もし、倫理的な規範を伴わない共産主義による革命であったならば、政府の不正行為や欺瞞に対して、国民から強い反発の声は上がらなかったことでしょう。イランがイスラム体制であるからこそ、道を踏み外した政府に対して、宗教的な信念と良心に基づいた批難が起きていることを考えますと、現政権によるイスラム独裁化を阻止するのは、真正のイスラム教しかないのではないか、と思うのです。

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