万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

過激な手段を選ぶ中国

2009年07月20日 15時52分11秒 | アジア
ウイグル族12人を射殺、自治区当局者が認める(読売新聞) - goo ニュース
 中国当局の発表は、常に政治的に歪曲されていますので、ウイグル側の実際の犠牲者の数が、僅か12人という少数であったかは定かではありません。過少報告を疑うのですが、それでもこのニュースからは、中国側が、力ずくで弾圧を行った様子を窺うことができます。

 先進国でデモや抗議運動から暴力沙汰の混乱が発生した場合、治安当局は、通常、国民の生命や身体が損なわれないように、最大限の配慮するものです。実弾の銃を用いるのは、他に選択肢がなくなった時の最後の手段であり、空砲や催涙ガスなど殺傷力の弱い武器を用いることで、事態の収拾に努めるのです。一方、中国では、発表された内容から判断する限り、最初から治安部隊は、殺傷力のある実弾を用意していたようです。つまり、中国当局は、他の手段を考えず、弾圧の過程で死傷者が出ることを承知の上で、治安部隊を投入したことになるのです。

 これまで中国は、ウイグルの人々の声を聞こうしませんでした。民主的な制度も話し合いの場もないのですから、ウイグルの人々は、不満を直接行動によって表現するしかありません。中国政府は、ウイグル側を暴力主義と決め付けていますが、暴力の連鎖を招いているのは、むしろ中国の側の頑なな態度とも言えます。かつて、西欧諸国が植民地の独立を認めたように、中国政府もまた、ウイグルの人々の独立や自治の要求に耳を傾け、この問題に誠実に善処すべきと思うのです。 

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