万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

EUの死刑執行批判―埋められない死生観の違い

2012年03月30日 15時38分23秒 | 社会
死刑執行、EU「非常に遺憾」 アムネスティも批判(朝日新聞) - goo ニュース
 昨日、日本国において死刑の執行が行われたことに対して、EUは、”非常に遺憾”との声明を発表したと報じられています。一方、日本国内では、死刑制度の継続を望む国民が圧倒的な多数を占めており、両者の溝は、一向に埋まる気配はありません。

 EU側からしますと、死刑は、非人道的で残虐であり、人間の尊厳を損ねる刑罰ということになります。人道上の理由の他にも、死刑には、冤罪、政治的な抹殺、見せしめや見世物としての処刑…といった暗黒の歴史がありますし、キリスト教徒の心情としては、犯人の更生の道を断ち切ることに対する抵抗感もあるのでしょう。方や日本の歴史を振り返ってみますと、自己の罪に対しては、死を以って詫びる、という人生の処し方がありました。”ハラキリ”という日本語が外国でも通用するように、責任者は、自己の生命を償いとして、潔く差し出したのです。もっとも、”切腹”は、特別に許される名誉ある死であり、刑罰としての死刑は”打ち首”として区別されていましたが、損ねられたものを尊ぶからこそ、その代償は、自らの命であったわけです。

 ”汝、殺すなかれ”の戒めは、他者を殺した人、つまり、戒めを破った人にまで適用すべきかについては、議論の余地がありますし、非人道的で残虐な方法で他者の命を奪った人物を、人道の名で擁護することにも、疑問があります。EUが犯人の生命尊重であるとしますと、日本国は、被害者の生命を重く見ているのです。この死生観の違いは、無理をしてまで埋めるべきものではないように思えるのです。

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コメント (5)
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