万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

原発再稼働問題―ライフラインは供給停止のハードルを高くすべき

2012年03月08日 15時36分26秒 | 日本政治
 原発再稼働の停止により、電力危機は未だに収まらず、今年の夏の電力供給も、昨年以上に厳しい状況となりそうです。その原因の一つは、政府の消極的な姿勢と地元の合意がなかなか得られないことになるのですが、ライフラインに関わる事業については、供給停止の手続きの方に高いハードルを設けるべきではないかと思うのです。

 原発再稼働に関する地元や地方自治体の権限については、電力会社と自治体との間で結ばれている原発協定によっても違うのですが、目下の議論では、地元や地方自治体の合意が得られなければ、原発の再稼働はできない、と見なされています。いわば、”拒否権”があるとも解されており、新潟県、福井県、静岡県など、原発が所在する県の知事達は、早くも難色を示しています。加えて、本日の枝野経産相の説明によれば、地元の合意に先だって、首相、官房長官、経産相、原発相をメンバーとした閣僚会議の事前承認も要するそうです。国による最終判断を得て一連の手続きが完了するのですが、この過程で、誰か一人でも反対すれば、原発の再稼働は遠のく可能性があります。しかしながら、電力供給といった産業や国民生活に直接影響を与える分野では、一人や少数者の反対で供給を”停止できる”という手続きが望ましいとは思えません。多くの人々が、生産や生活の維持を供給に依存しているのですから、本来、供給を受ける側を含めた合意がなければ”停止できない”、とすべきではないかと思うのです(全会一致、あるいは、かなり高いハードル…)。

 ライフ・ラインを一方的に止められますと、多くの人々が不利益を蒙り、膨大な被害が発生します。こうした公共性の高い事業分野では、一部の拒否権の発動によって、簡単に供給が停止ができないような仕組みが必要なのではないでしょうか。

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コメント (1)
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