万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

日米は相互恩赦で-不毛の謝罪論争

2016年05月16日 15時37分30秒 | 国際政治
 昨日、今月27日に予定されているオバマ大統領の広島訪問について、アメリカのライス大統領補佐官は、米CNNのインタヴューにおいて謝罪を改めて否定しました。

 ライス補佐官の発言には、謝罪に否定的なアメリカ世論への配慮が伺えますが、その一方で、日本国の政権内部でも、アメリカ側から真珠湾攻撃等への謝罪を求められるのではないか、とする疑心暗鬼があるそうです。日本側としては、民間人の多くが無残に命を失った原爆投下と、軍事基地を狙った真珠湾攻撃等が同列に論じられることには抵抗感がありますが、双方が相手方に対して謝罪を主張する謝罪論争は、一つ間違えますと、日米関係のさらなる強化どころか、双方において感情的な対立を煽る結果になりかねません。この点は、昔の人々の知恵に学ぶべきであるかもしれません。

 17世紀に三十年戦争を終結させたウェストファリア条約等には、相互恩赦の条項が設けられていました。第二次世界大戦の講和条約であるサンフランシスコ講和条約(対日平和条約)には明文による規定はありませんが、相互恩赦の精神は、今日においても引き継がれるべきです。不毛な謝罪論争に終止符を打つためにも。

 戦争とは、相互に敵と見なした相手に対して残酷になり得るものであり、多かれ少なかれ、双方ともが平時であれば謝罪すべき行為を行っているものです。しかしながら、戦争が終結した後においても、相手方に対する敵対感情が残されるのであれば、それは、将来において再び戦争の火種となることでしょう。そうであるからこそ、相手を許すという寛容の精神が尊ばれるのであり、当時の時代背景を斟酌した相互理解と恩赦は、平和への道なのです。半世紀を越えて同盟関係を築いてきた今日の日米間系であれば、相互恩赦は、言葉には出さなくとも、既に実現しているのではないかと思うのです。

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コメント (2)
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