万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

”上海合意”の円高は比較的”怖くない円高”?

2016年05月21日 15時02分25秒 | 国際経済
米財務長官、通貨安競争の回避に言及 日米財務相会談
 本日、G7財務相・中央銀行総裁会議の二日目の協議を前に、仙台市において日米財務相会談が開かれたそうです。この席で、アメリカのルー長官は、麻生財務相に対して、改めて通貨安競争の回避について念を押したと報じられております。

 日本国政府による円売り介入への牽制と推測されますが、この背景には、今年2月にG20で合意された”上海合意”があったとする指摘があります。”上海合意”とは、G20の構成国がドル安を認める暗黙裡の合意であり、プラザ合意に匹敵するとも称されています。ただし、1985年のプラザ合意のターゲットは日本国の円でしたが、今般の”上海合意”の主要な狙いは、中国の人民元のようです。つまり、今後、大幅に元安に触れた場合、中国の輸出競争力が高まるため、その阻止が主要目的とされているのです。もっとも、貿易の不均衡や実体経済よりも、元相場下落による金融界の損失回避、あるいは、外貨準備の減少を止めるべく元高相場を維持したい中国側への協力が等が真の目的かもしれませんが…。何れにしましても、合意が成立したのはG20であり、そのメンバーには、中国や韓国が含まれていることは重要です。何故ならば、民主党政権時代の”超円高”は、円の独歩高であったからです。仮に、G20の全メンバー国の通貨が足並みを揃えて対ドル相場でドル安に動くならば、日本国だけが、中国や韓国に対して輸出競争上不利にはならないはずです。

 仮に、ルー財務相が強調したように、G20メンバー間で通貨安競争が起きなければ、少なくとも輸出面では以前の円高よりは”怖くない”可能性はあります。そして、プラザ合意を機にバブルが発生した日本国とは違い、既にバブルが崩壊している中国における上海合意の影響は、プラザ合意とは違った様相を呈する予感がするのです。

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コメント (4)
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