万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

米軍軍属女性遺棄事件-不自然な米軍基地撤退要求

2016年05月22日 15時23分47秒 | 国際政治
「言語道断」在沖米軍に抗議=中谷防衛相、再発防止を要求―女性遺棄事件
 今般、沖縄県で発生した米軍軍属による女性遺棄事件は、早々、基地反対派の運動と結びつく形で批判が起きているようです。米軍が存在する限り、沖縄県民は常に米軍の犯罪リスクに晒されている、と…。

 しかしながらこの主張、よく考えてみますと、理屈に合っていません。何故ならば、日本国内における外国人による凶悪犯罪事件数は、米軍の兵士や軍属によって起こされた事件はむしろ少なく、その大半は、別の国の外国人によって起こされているからです(警察庁の資料によれば、来日外国人の国別検挙件数では、中国、ベトナム、フィリピン、韓国、ブラジル…と続く)。米軍の撤退を主張する左翼の人々は、米軍関連の事件が起きる度に、日本国の治安悪化の原因と見なし、拳をあげて”米軍は出ていけ!”とシュプレヒコールを繰り返してきました。しかしながら、より犯罪率が高いにも拘わらず、決して他の外国人に対して”外国人犯罪者は出ていけ”とは叫ぼうとしないのです。

 また、先日、ヘイトスピーチ法案が国会で成立しておりますが、”外国人犯罪者は出ていけ”と叫んでも、同法案で取り締まることはできないはずです。特定の民族に対する差別的な言動ではなく、人権侵害の最たる犯罪者の退去を求めているのですから。米軍事件もまた、仮に治安悪化を理由とするならば、左翼の人々は、犯罪者個人に絞って国外追放を求めるべきであり、米軍関連の事件を基地撤退運動に強引に結びつけ、反米方向に世論を誘導するのは筋違いです。

 殺人事件の被害者の方々は、誰に殺害されたのであれ、等しくその死が悼まれるべき犠牲者です。とりわけ米軍関係の事件だけを取り上げて、痛ましい殺人事件を自らの政治運動に利用する態度は、批判されて然るべきと思うのです。

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コメント (8)
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