万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

金本位制に”死亡診断書”を書いたビットコイン

2016年05月18日 15時03分38秒 | 国際経済
「ビットコイン・仮想通貨」のニュース
 先日、考案者が名乗り出たことで、裏社会から表舞台に登場してきた感のあるビットコイン。一種の”偽造通貨”でもありますので、公認化には疑問のあるところですが、一つだけ言えることは、ビットコインの普及は、金本位制の”死亡診断書”となったのではないか、ということです。

 アメリカ大統領選挙の共和党候補として最後までトランプ氏と争ったテッド・クルーズ氏は、キャンペーンにおいて金本位制の復活を主張していたと伝わります。70年代のドル・ショック以降、スミソニアン合意で一時的には固定相場制に復帰したものの、アメリカは米ドルの金兌換を停止し、今日、金本位制が過去のものとなって既に半世紀近くが経過しています。しかしながら、それでもなお、金本位制の復活を唱える政治家が存在するわけですから、金融・通貨制度の一つの選択肢として金本位制への復帰が残されていたことを示しています。ところが、ビットコインを見ますと、マインニング(金鉱堀)という名の難問解答を以ってビットコインは発効されており、その価値を裏付けるものは何もありません。にもかかわらず、それを保有する人々が、通貨としての”通用力”を信じることで、今や、”通貨”の座を狙う位置にまで迫っているのです。この現象は、最早、金本位制への復帰が無意味であることを示しています。

 その一方で、”通用力”としての信頼性を失うと、ビットコインの通貨としての価値もゼロとなります。消滅する可能性のあるビットコインの危険性もまた、改めて、誰もが信頼し得る公正な”通貨制度”とは何か、という古くて新しい問題を提起していると思うのです。

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コメント (5)
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