万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

中国の貧困の原因は”パナマ”への巨額資金逃避

2016年05月12日 13時40分46秒 | アジア
中国は年内に200万人超の移住促す、貧困撲滅の一環で
 『パナマ文書』で流出した凡そ21万件の情報において、抜きん出ているのは習近平国家主席の親族を含む中国であり、3万人を越えるとされています。その一方で、中国の14億人のうちの5%は極貧の生活を送っており、その数はで7000万人にも上っています。

 これらの数字から単純計算しますと、共産主義を謳いながら、中国では、1%どころか0.000021%の富裕層が富を独占していることになり、恐るべき所得格差が固定化されている実態が垣間見えてきます。こうした中、中国政府は、貧困撲滅政策の一環として、200万人を越える貧困層の人々を生活環境が整った都市部に移住させる計画を立てていると報じられています。

 この貧困対策、国民の多くが、パナマでの党幹部の蓄財を知ったならば、どのように反応するでしょうか。2000年以降に中国からタックス・ヘイブンへと流出した資金の総額は、日本円に換算して凡そ107兆から428兆円なそうです。これだけの巨額の資金があれば、貧困地帯の生活インフラ整備や生活水準の向上のための予算は確保できたはずです。移住促進を解決策としたのでは、貧困にある人々は、住み慣れた土地を離れざるを得ませんし、放棄地も増加して国土も荒廃します。しかも、中国政府は、AIIB等でも観察されるように、国策に適った海外案件には積極的に融資はしても、国内の貧困解消のための開発には見向きもしていません。また、過剰生産で有り余っている建築資材を、国内の貧困地帯における生活インフラの建設に振り向けるという発想も見られないのです。

 中国政府が、『パナマ文書』に対して徹底的な報道統制を敷いている理由は、当文書によって中国の実態が暴かれれば、一般の国民の怒りを買うと確信しているからなのでしょう。一党独裁体制とは、共産党党幹部だけが莫大な私財を蓄えることができる独占システムであったのですから。習政権が大ナタを振るったとされる腐敗撲滅運動も、見る影もなく色褪せてしまいます。もしかしますと、後世の歴史の教科書には、”中国の共産主義体制を崩壊に導いたのは、強欲な共産党員達であった”と記述されることになるかもしれません。

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コメント (2)
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