万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

”対日四か条の要求”?-岸田外相訪中の吉凶

2016年05月01日 15時09分19秒 | 国際政治
中国外相反論「日本は対抗意識を捨てるべきだ」
 大型連休を前にして、急遽発表された岸田外相の訪中。時を同じくして”岸田外交”の高評価ぶりがアピールされおりましたが、これも、交渉力を高めたい日本国側の訪中を控えての対中戦略であったと推測されます。

 鳴り物入りでの岸田外相の訪中でしたが、果たして、狙い通りの成果を上げることは出来たのでしょうか。中国外務省の発表によりますと、中国側は、日本国に対して、四項目の要求を提示したそうです。第1項目は、”一つの中国の政策維持”であり、言い換えますと、台湾を中国の一部と認めよ、ということになります。第2項目は、”中国脅威論や中国経済衰退論の不拡散”です。この要求は、日本国内における中国関連の言論や報道の統制を意味します。第3項目は、経済面における”互恵を基礎とした各領域の協力推進”であり、この要求に見える”中国を対等に扱え”とする要求には、中国製品を対象とした輸入規制等の撤廃要求が透けて見えます。そして、”国際・地域協力における対抗心の放棄”が第4の要求であり、この項目では、南シナ海等における中国の拡張主義的な行動の全面的な容認を求めたものと理解されます。”日中関係を改善したければこれらの要求を飲むべし”ということなのでしょうが、どれ一つをとりましても、日本側が受け入れ可能な項目はありません。今般の外相訪問の目的が日中関係の改善であったとしますと、中国が自国の要求を四項目に纏める形で提示したことで、両国の間での妥協が不可能であることを浮き彫りにすることとなったのです。

 今般の外相会談での中国の態度は、100年も時代をタイムスリップしたかのようです。あたかも”対日四か条の要求”とでも表現すべき一方的な要求であり、中国国内でさえ、ネット上で王毅外相の非礼な態度を批判する意見が書き込まれたぐらいですから、日本国内においては尚更です。岸田外相の訪中は、日中関係改善にとりましては”凶”ではありますが、日中間の対立点を明確化したことにおいて”吉”であったとも言えるかもしれません。今後は、中国に対する楽観的な幻想に惑わされずに政策を立案できる、という意味において。

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コメント (2)
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