万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

最も聞きたいのはトランプ氏の対中政策

2016年05月19日 15時13分17秒 | 国際政治
インタビュー:トランプ氏、核阻止へ金正恩氏との会談に前向き
 今月17日、共和党の指名候補の座を確実にしたトランプ氏は、ロイターのインタヴューに答える形で、北朝鮮の金正恩氏との会談に積極的な姿勢を見せたそうです。海外メディアでは、従来のアメリカの対北政策の大胆な方向k転換として報じておりますが、全世界の人々が最も聞きたいのは、トランプ氏の対中政策ではないでしょうか。

 米朝二国間関係からすれば、北朝鮮の核・ミサイル開発疑惑が浮上して以来、アメリカは、北朝鮮との一対一の対話は拒絶してきました。しかしながら、現在は事実上閉会となっているものの、日米中ロ韓によって構成される多国間協議の枠組みである六か国協議では北朝鮮と接触しており、対話の場が皆無であったわけではありません。また、トランプ氏は、中国が北朝鮮に核放棄を迫る圧力をかけることに期待しておりますが、この手法も、オバマ政権の基本的な政策方針でもありました。ですから、今般のトランプ氏の対北政策は、北朝鮮の核・ミサイル開発や独裁体制の容認、朝鮮戦争の講和、南北再統一の後押しといった劇的な転換ではない限り、そこまで目新しいとは言えないように思えます。否、トランプ氏が、仮に、米中協議を通して、特に核・ミサイル開発やカルト的な独裁体制を容認したとしたら、アメリカの価値観の大転換(大転落?)ともなり、アメリカの有権者のみならず、全世界が驚愕するとともに、米国に対する失望が渦巻くことでしょう。そして、この発言に関連して懸念される点は、トランプ氏は、北朝鮮のリスクは認識していても、中国に対しては、それ程までに危険視はしていないように見受けられることです。実際には、南シナ海において軍事的な緊張が高まってるように、中国こそが、アメリカが主導して構築した第二次世界大戦後の法の支配に基づく国際秩序に対する挑戦者であるにも拘わらず…。

 米中関係の行方は、人類の運命をも左右すると言っても過言ではありせん。トランプ氏が、中国による国際社会の無法化を許し、アジアにおける華夷秩序の再来を容認するとしますと、対北政策の転換以上に、破壊的な影響を全世界に及のすのではないかと思うのです。

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コメント (5)
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