万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

米中首脳会談ー中国の対米譲歩の行方

2017年04月07日 10時03分43秒 | 国際政治
トランプ・習氏が初会談=笑顔で握手交わす―対北朝鮮圧力強化に期待
 本日、アメリカのフロリダ州パームビーチにおいて、トランプ政権発足以来、最初の米中首脳会談が開かれました。初顔合わせの模様については、両者は笑顔で握手を交わしたと報じられておりますが、本会談は今後の国際情勢を左右するだけに、国際社会は固唾を飲んでその行方を見守っています。

 ところで、会談を前にした米中の基本姿勢は、正反対と言ってよいほどの対極にありました。アメリカ側は、北朝鮮の核・ミサイル問題や米中貿易不均衡問題等、政経両分野に亘って、何れも対立怖れずの姿勢で臨んできましたが、一方の中国は、攻撃的なアメリカに対して守勢に回っています。それを象徴するのが、会談において中国側がトランプ大統領との確認を目指すとされる三つの原則です。三つの原則とは、”衝突しない、対抗しない”、”相互尊重”、”ウィンウィン協力”というものです。仮に両者がこの三つの原則で合意するとなりますと、一体、どのような展開となるのでしょうか。

 文字通りにこの3つの原則を貫くとしますと、それは、中国の全面的な対米譲歩を意味します。第一の原則である”衝突しない、対抗しない”に従えば、中国は、南シナ海の軍事拠点化を放棄せざるを得なくなりますし、米国の同盟国に対する領土要求をも引き下げざるを得なくなります。米ドルに代わり、人民元を国際基軸通貨化しようという積年の夢も諦めることとなりましょう。第二の”相互尊重”についても、中国は、アメリカに対して現行の安全保障体制を脅かす行動は控えるべきとなります。即ち、中国は、北朝鮮の核・ミサイル開発の阻止に合意すべきとなりますし(自ら実行するか、アメリカの軍事行動も容認…)、また、台湾侵攻といった武力による現状の変更も不可能となりましょう。”ウィンウィン協力”を謳う第三の原則についても、経済面における現状下では、アメリカが一方的な”敗者”となりますので、中国は、即刻、自らの対米黒字を削減し、貿易不均衡を自主的に是正すべき立場となります。

 中国側からこの原則を持ち出したとしますと、”戦わずして負けた”ことになるのですが、果たして中国は、かくも容易く白旗を上げるほど従順で諦めが早いのでしょうか。過去の事例を見ますと、中国が譲歩的な態度を示すときは、決まって”時間稼ぎ”か、相手の油断を誘う場合です。状況が中国側に有利に転じると、原則や合意などは、幾度となく反故にされてきました。中国の譲歩がその場凌ぎの口約束であるのか否か、中国の今後の行動が、その真意を明らかにすることとなりましょう。否、真意が明らかになってからでは遅い場合もありますので、アメリカ、並びに、国際社会は、’その場限り’の妥協であるリスクを認識し、中国共産党政権への警戒を怠ってはならないと思うのです。

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コメント (9)
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