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万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

追い詰められる不幸なフランス国民

2017年04月26日 15時20分11秒 | ヨーロッパ
【仏大統領選】マクロン氏が大はしゃぎ? 決選投票決定後に有名店で宴会 「成金候補」と批判
 フランスの大統領選挙では、第1回目の投票の結果、エマニュエル・マクロン氏とマリーヌ・ルペン氏が決選投票に残こり、5月7日の第2回目の投票により、いよいよ次期フランス大統領が選出されます。世論調査によりますと、60%以上の支持を集めてマクロン氏がリードしているとされていますが、この選挙、フランス国民を追い詰めているように思えます。

 当選挙は、巷では、”フランス・ファースト”と”グローバリズム・ファースト”の真っからの対立とも称されています。この対立軸での選挙は既にイギリスとアメリカを舞台に実施されていますが、メディアの予想が外れる現象がフランスでも繰り返されない限り、フランス国民は両国とは逆の選択をするものと予想されているのです。”極右よりはまし”というフランス国民の消去法的な選択と説明されているものの、この選択は、フランス国民にとりましては相当に酷です。何故ならば、マクロン氏の政策を見る限り、フランスを葬り去る可能性すらあるからです。”国民の選択”の名の下で…。

 投資銀行であるロスチャイルド銀行出身のマクロン氏の政策方針を見ますと、経済相時代に「マクロン法」と呼ばれた民営化や自由化政策を実現しており、自由主義、否、”新自由主義”に軸足を置いているようです。”グローバリズム・ファースト”のみならず、親EUの立場にもあり、優先順位としては、グローバリズム、EU、そしてフランスの順なのでしょう。当然に、移民受入にも積極的であり、多様性を尊重する立場から、移民を含む貧困層に予算を振り向け、社会統合の促進を目指すとされています。財政再建策としては、公務員の12万人削減を約束はしていますが(12万人の失業者はどうなるのでしょうか…)、移民対策に加えて、所得税や法人税の減税、500億ユーロの投資(再生可能エネルギーの促進、農業改革、医療介護分野でのイノヴェーション…)、警官の1万人増員やテロ対策強化…を計画しており、財政削減一辺倒ではないようです(新自由主義政策促進のためには予算は割く…)。

 マクロン氏の人物評としてはバランス重視ともされていますが、これらの政策は何れも極めて”新自由主義的”であり、バランスどころか極端な偏りが目立ちます。むしろ、国際経済勢力が計画し、日本国政府も導入を進めている新自由主義の政策綱領の”いろは”と言っても過言ではありません。氏が大統領に当選すれば、フランスは古来のフランス人の国では最早なくなり、”ミニ・世界市民社会”が出現することでしょう。しかも、今般、問題視されている行き過ぎたグローバリズムの欠陥や欠点は是正されず、ブレーキではなくアクセルが踏まれることで、さらにマイナス方向への拍車がかかるのです。もちろん、”ミニ・世界市民社会化”を支持する国民もありましょうが、少なくない一般フランス国民は、中間層からの脱落のみならず、かつてない程のアイデンティティーの危機と喪失感に苦しむのではないでしょうか。

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コメント (10)
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