万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

トランプ大統領まさかの日韓核武装容認論へ回帰か?

2017年04月30日 13時37分07秒 | 国際政治
北朝鮮核実験なら「心外」=軍事行動否定せず―米大統領
 アメリカのトランプ大統領は、緊迫の度を強める朝鮮半島情勢について、北朝鮮が核実験に及んだならば”心外”と述べたと報じられています。軍事行動を否定はしないものの、即時空爆とは断言しておらず、アメリカは、核実験再開をデッドラインに引くのを躊躇している様子が窺えます。

 仮に、アメリカが北朝鮮に対して何らの核の強制排除措置を採らないとなりますと、アメリカは、事実上、二つのデッドラインを設定したこととなります。その第一は、北朝鮮の長距離弾道ミサイルの保有です。このデッドラインは、自国が北朝鮮の核搭載ミサイルの射程に入らない限り、アメリカが、50発程度とされる北朝鮮による核保有の現状を認めることを意味します。そして、第二のデッドラインは、中距離ミサイルによる同盟国への核攻撃です。第二のデッドラインで窮地に陥るのは北朝鮮の中距離ミサイルの射程範囲に入る日本国、並びに、周辺諸国です。アメリカから核の傘を提供されつつも、常に、北朝鮮から核の先制を受けるリスクに晒され続けるからです。

 しかも、対話路線への回帰によって北朝鮮が時間稼ぎに成功し、極秘開発によって長距離弾道ミサイルを保有するとなれば、第一のデッドラインも第二のデッドラインも無効となります。北朝鮮全土の無条件査察を可能としない限り、北朝鮮が長距離ミサイル開発、あるいは、対空母ミサイルシステム等を手にするのは時間の問題であり、何れの時点でも、北朝鮮に対して手も足も出なくなるのです。たとえ対話路線に戻ったとしても、北朝鮮が、全土の無条件査察を受け入れるとは思えません。

 国連憲章やNPTに違反してまで北朝鮮が核・ミサイルの開発に奔走し、核保有を確かにした時点で強気でアメリカを挑発し始めた理由として、しばしば、”北朝鮮は、核を保有している国は決して攻撃を受けないと信じているから”と説明されています。この主張が正しければ、対話路線への復帰と、日本国を含む周辺諸国の核保有の承認との何れがよりリスクが低いのかを比較検討する必要が生じます。前者では、北朝鮮に”飴”を与えかねませんが、後者では、周辺諸国が核武装すれば、北朝鮮もまた、核を保有する周辺諸国を攻撃できなくなります。最も危険な国が核を保有してしまうNPT体制は欠陥に満ちていますので、この体制の見直しも急務となりましょう(国際法を誠実に順守した国が不利益を被るシステム…)。

 大統領選挙において、トランプ大統領は、日韓核武装論を展開したことを思い起こしますと、今般の朝鮮半島問題を切っ掛けとして、まさかの日韓核武装容認論への回帰もあり得ない展開ではありません。NPT体制において核保有国が核の不拡散に失敗した時点で、NPTは、道義的、並びに、合理的根拠を失ってしまうのですから。

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コメント (10)
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