万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

北朝鮮のミサイル発射失敗とは?

2017年04月16日 12時54分25秒 | 国際政治
【北ミサイル】米当局者「ICBMではない」 
 本日午前6時20分頃(日本時間)、北朝鮮は、東部咸鏡南道新浦からミサイルを発射したものの、発射直後に爆発したと報じられております。朝鮮半島情勢が緊迫している中での出来事であり、北朝鮮側の意図を読み解くための分析が急がれています。

 第一の推測は、既に報じられているように、ペンス副大統領の訪韓を牽制するために、ミサイル発射で威嚇したというものです。言い換えますと、ペンス副大統領、否、アメリカに対する脅迫であり、訪韓時において副大統領の命を狙える立場にあることを誇示するためのミサイル発射となります。

 発射されたミサイルの種類は未だ判明していませんが、第二の推測は、中距離弾道ミサイルのノドンは既に完成しているとされているため、ノドンであれば日本国、長距離弾道ミサイルであればアメリカを狙った先制攻撃であった可能性です。韓国が標的であれば日本海に面した新浦ではなく、内陸部のミサイル基地を使用するはずだからです。当ミサイルは中距離弾道ミサイルとする見方が有力ですので、失敗したとすれば、日本国にとりましては不幸中の幸いとなります。

 第三に、前日の15日に華々しく故金日成主席生誕105周年を祝賀する軍事パレードを催し、アメリカに対して一歩も引かぬ強気の姿勢を表明した手前、一先ずは、本気度を示すために”ミサイル実験もどき”を演じたとも推測できます。発射実験が失敗したとなれば、アメリカは即時に軍事行動を起こすはずはない、と計算した演出です。ただし、ミサイルは軌道に乗せる前に爆発させたものの、長距離弾道弾ミサイルの完成に必要なデータは計測しており、失敗に見せかけた長距離弾道ミサイル開発プロセスの一環であった可能性もあります。

 第四の憶測は、長距離弾道ミサイルの開発成功、あるいは、核兵器量産体制の確立までの時間稼ぎのために、北朝鮮が、敢えて自国の技術力を低く見せるようと偽装したというものです。この機に至って、アメリカのメディアは、トランプ政権には対北政策の方針として北朝鮮と交渉する用意があるとも伝えています。核・ミサイルを放棄さえすれば、体制については転換を求めない、とするニュアンスで報じていますが、過去においても、北朝鮮は、核開発放棄を約束しながら、決してこの合意を守ることはありませんでした。仮に、現時点での攻撃さえ回避できれば、核搭載の長距離弾道ミサイルを保有できると見込んだとすれば、北朝鮮は、自国がさし当たってのアメリカに対する脅威ではないことを、低レベルの実験失敗で示そうとしたのかもしれないのです。アメリカに時間的余裕があることを仄めかし、”得意の交渉”に持ち込もうとする作戦です。

 仮に第四のケースであるとしますと、北朝鮮は、法も合意も順守せず、目的のためには手段を択ばない国ですので、アメリカ政府の交渉路線への回帰は、逆に危機を増大させた過去の失敗の繰り返しとなるリスクがあります。北朝鮮のミサイル発射の意図は現時点では特定できませんが、北朝鮮が、狡猾さや騙しにかけては右に出る者がいない国ですので、楽観的、あるいは、迂闊な対応は、人類を不幸の淵に引き摺り込むことになりかねないと思うのです。 

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コメント (2)
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