万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

皇族減少より日本国の国制の議論を先に

2017年04月23日 13時40分29秒 | 日本政治
皇族減少への対応「退位前に検討を」…御厨氏
 先日、政府に提出された天皇譲位(退位)問題に関する有識者会議の報告書は、法的にも、その内容においても疑問に満ちております。当有識者会議のメンバーの一人であった御厨貴東京大学名誉教授は、メディアとのインタヴューの席で、将来予測される皇族減少への対応に言及しています。

 皇族減少への対応は民進党も提言しており、御厨氏のみの個人的な見解ではないようです。しかしながら、皇室が将来においても存続するとの前提に立ち、その存続を検討する姿勢には疑問があります。何故ならば、日本国の将来における統治機構のあり方や皇室の著しい変質等の問題を全く考慮していないからです。

 統治機構のあり方については、未来永劫にわたって立憲君主制の形骸を残すべきか否かは、重要な論点となります。現在の日本国憲法では、第1条から第8条に至るまで天皇に関する条文を置いており、政治的権能を有さないものの、形式として天皇の国事行為を定めています。しかしながら、国民主権の下で民主主義体制を確立した今日、少なくとも統治機構の内部に天皇を位置づける必要は最早ありません。今般の退位(譲位)問題や東宮問題においても垣間見えるように、天皇の政治利用、もしくは、むしろ、天皇による国家権力の掌握の危険性は増すばかりであり、むしろ、国事行為を廃止する方向での議論は至極当然の方向性です。

 皇室の著しい変質も、もしくは、現在の’皇室’そのものへの疑問も看過できないレベルに達しています。ネット上では、カルト教団である創価学会との密接な関係は、公然に等しいことの他にも、皇室の隠し財産、犯罪を含む不良行為、明治維新の際の乗っ取り説、傀儡説、外国人説、すり替え説、ダミー説、肖像写真の相違からの複数存在説…など、皇室をめぐる様々なマイナス情報で溢れています。何れもがフェークニューズとは言い難い高い信憑性があり、国民の多くも皇室に対して不信感を懐いています。

 真偽不明の情報のみならず、事実としても二代続けての民間出身妃ですので、国民との間に皇統の濃さの違いは薄らいでいます(東宮家のように姻族が北朝鮮出身者となれば、致命的なマイナス要因となる…)。しかも、地位に相応しい品位や祭祀に付随すべき神聖性さえ自ら破壊していますので、将来においては、皇室に対する国民の崇敬の念はさらに薄らいでゆくことでしょう。皇族減少への対処の根拠として、様々な行事への出席への対応等が挙げられていますが、皇族が臨席しても、国民の誰もが”怖れ多くあり難い”とは思わず、むしろ’不快である’、もしくは、’鬱陶しい’と感じるようではその意義も消滅します。こうした状態では、到底、統合の象徴ともなり得ないのです。

 天皇を中心とした国家体制は、西欧の立憲君主制をモデルに明治以降に登場したものであり、長きに亘る日本の歴史に鑑みれば、外的な体制でもあります。そして何よりも、世襲の君主制は過去のものとなり、民主主義的制度の下で、国家を安定的に運営できる時代を迎えています。こうした時代の変化を考えれば、国制に関する議論こそ、皇族減少問題に先んじて議論すべきと思うのです。

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コメント (4)
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