万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

「三種の神器」は日本国に属するのでは?-私物化の危機

2017年04月14日 09時56分09秒 | 日本政治
公的行為、退位で全面移譲=「三種の神器」非課税に―有識者会議
 天皇譲位(退位)問題について設置されている私的有識者会議では、時間を追うごとに奇妙、かつ、リスク含みの提案が増えてきております。今般も、今上天皇から皇太子への「三種の神器」の受け渡しについて”非課税とする”という方針が示されています。

 この報道の字面だけを読めば、国民の多くもこの措置に潜んでいる危うさに気が付かないことでしょう。しかしながら、”贈与税の非課税化”の意味するところを読み解きますと、背筋がうすら寒くなります。何故ならば、「三種の神器」が私物化される道が敷かれているからです。

 その理由は、第一に、法律の解釈により、「三種の神器」を課税対象となり得る天皇個人の所有物として扱っていることです。まず、皇室財産法の第七条には、「皇位とともに伝わるべき由緒ある物は、皇位とともに、皇嗣が、これを受ける。」とあり、加えて、相続税法の第十二条一項には、「皇室経済法 (昭和二十二年法律第四号)第七条 (皇位に伴う由緒ある物)の規定により皇位とともに皇嗣が受けた物 」 とあります。今般の特措法では、相続ではなく贈与であるため、改めて贈与としての非課税措置を定めるべきと説明されていますが、非課税措置を設けたとしても、「三種の神器」は、天皇の個人的な所有物なのでしょうか。

 第二の理由は、そもそも法文には、”皇位とともに伝わるべき由緒ある物”とあり、「三種の神器」がこれに含まれるとは明記していません。あくまでも、法文の解釈でしかないのです。

 第三に、「三種の神器」は、神道における御神体でもありますので、天皇の代替わりに際して相続や贈与、即ち、所有権を移転させる性質のものでもありません。例えば、神社において宮司が交代する度に、古来、祀られてきた鏡などの神器に対して贈与税を課すというはあり得ないことです。神器は宮司個人の所有物ではないからです。「三種の神器」も同様であり、あくまでも、国家祭祀において継承されてきたものですので、所有権は設定され得ず、皇位継承に際しての儀式としての受け渡しとして解されるべきなのです。

 第四に、仮に、今般の譲位(退位)に際して、特措法によって新たに「三種の神器」を”皇位とともに伝わるべき由緒ある物”に含めるとする解釈を固定化させる意図があるとすれば、それは、「三種の神器」の個人的財産化です。法律によって特別の非課税措置を講じなければ、他の財産と同様に価値評価に基づく課税対象となるのですから。「三種の神器」に対して課税評価額を算定すること自体不可能なのですが、「三種の神器」の財産化は、将来的に共和制への移行するような場合には、私物としてオークションなどでの売買の対象にもなり得ることを示しています。

 第五に、憲法第88条では、「すべての皇室財産は、国に属する。…」とあります。この趣旨からしても、「三種の神器」は、当然に、皇居、京都御所、御用邸、歴史的文書、その他美術工芸品などと同様に、国家の財産です。現行の皇室経済法や相続税法自体が、むしろ違憲とも言えるかもしれません。

 第六に、’皇族’の婚姻が自由となっている今、「三種の神器」が私物化されると、実質的に外国人に所有されることをも意味しかねません。我が国が国家として成立する黎明期の歴史を象徴する極めて重要な国家遺産ですので、国家として、原核に保護・保存すべき第一級の文化財です。


 以上の6点から、敢えて「三種の神器」だけを取り出して、非課税ながら相続税の対象に変更し、個人的所有物としようとする背景には、何らかの意図が隠されているとしか考えられないのです。報道によりますと、「三種の神器」の非課税化の他に、特措法では、”上皇の輸入関税を非課税とする”といった内容も盛り込まれているそうです。一体、”上皇”は、外国から何を輸入しようというのでしょうか。有識者会議の提言は、’皇室’問題の背後に蠢く闇とも言える政治的、あるいは、経済的思惑の存在を浮き上がらせているように思えるのです。

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コメント (6)
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