報道に依りますと、米政府の高官は、12月3日から4日にかけて開催が予定されているNATO首脳会議において、トランプ大統領が中国への対応を最優先課題として提案する予定である旨を語ったそうです。経済から政治へ、そして、終に軍事の分野にまで米中対立は拡大し、両国、あるいは、両国を中心とする陣営間の軍事衝突もあり得る展開となっています。
それでは、仮に両者が戦闘状態に及んだ場合、一体、どのような事態が起きるのでしょうか。デジタル時代を迎えた今日、戦争の形態も大きく変化してきています。今日では、ステルス機といった第二次世界大戦当時には存在していなかった兵器が数多く登場しており、無人ロボットやドローンといった遠隔操作で闘う兵器が実用化される日も間近に迫っています。こうした新兵器を支えているのはITやAIといった電子・通信分野で発展してきた高度な技術であることは言うまでもなく、白兵戦や人海戦術が通用する時代は過ぎ去り、これらの分野におけるテクノロジーの高さが戦争の勝敗を決すると言っても過言ではないかもしれません。
電子・通信テクノロジーが戦争における兵器の優位性の決定要因であるならば、それは、より優れた、即ち、高速の通信ネットワークを実現した側が有利であることを意味します。一瞬の差がものを言うと言えましょうこの点、5Gへの移行に当たって、アメリカと中国との間に規格争いが存在することは注目に値します。前者は、国防省を中心に高周波数領域(mmWave)の開発を進めており、後者は、低周波数領域(sub-6)において強みを持ち、両社の間には規格に違いがあるのです。この二つの方式、実のところ、速度に違いがあります。mmWave方式は、届く距離が短いために多数の基地局の設置こそ必要とするものの、sub-6方式よりも速度が速いのです。
そこで、想定されるのは、三つのパターンです。その第一のパターンは、アメリカのmmWaveがグローバル・スタンダードとなるシナリオです。尤も、このパターンは、独自にsub-6方式を率先して開発している中国は、対米依存、あるいは、有事に際しての通信遮断を回避するためにも自国への導入を見送ることでしょう。このため、mmWaveがグローバル・スタンダードとなる可能性は極めて低く、同方式は、同盟国に限って採用されるものと推測されます。
第二のパターンは、sub-6のグローバル・スタンダード化です。しかしながら、sub-6もmmWaveと同様の理由により、中国陣営に加わった諸国のみにおいて採用されるかもしれません。もっとも、価格競争力を有するファウェイ製品が、5G時代にあって安価で各国に輸出される場合には、同製品を採用した諸国では、知らず知らずのうちにチャイナ・スタンダードに適用した通信システムを導入したことになります。このことは、自国領域内での人民解放軍の展開を可能としますので、仮に自由主義陣営にありながら通信規格だけはsub-6を採用した国は、中国から攻撃を受ける事態に直面した場合、苦渋の決断を強いられかねません。何故ならば、人民解放軍のハイテク兵器の運用を阻止するためには、自軍のハイテク兵器にも使用されているG5の通信システムを破壊しなければならないからです(G5用の基地局を撤去すれば、通信は遮断される…)。
以上に述べた諸点を勘案すれば、最も高い確率であり得るシナリオは、米中がそれぞれ異なる規格を採用し、それぞれの同盟国もその規格に合わせると言うものです(中国が、既にG6や量子テクノロジーの開発に乗り出しているのはG5における劣勢を自覚しているからかもしれない…)。そして、この状況下では、少なくともmmWaveが使用可能な地域にあって米中がハイテク戦争に至った場合、通信速度に優るアメリカ軍が勝利することを意味します。乃ち、5G規格の分裂は、アメリカ陣営の諸国を中国の軍事的脅威から守る防御的効果があるのではないでしょうか。かつて、スペインは、ナポレオン軍の鉄道を用いた進軍を阻止するために、フランスのものと敢えて異なる鉄道規格を設けましたが、デジタル時代にあるからこそ、規格の問題は、より重要性を増しているように思えるのです。
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それでは、仮に両者が戦闘状態に及んだ場合、一体、どのような事態が起きるのでしょうか。デジタル時代を迎えた今日、戦争の形態も大きく変化してきています。今日では、ステルス機といった第二次世界大戦当時には存在していなかった兵器が数多く登場しており、無人ロボットやドローンといった遠隔操作で闘う兵器が実用化される日も間近に迫っています。こうした新兵器を支えているのはITやAIといった電子・通信分野で発展してきた高度な技術であることは言うまでもなく、白兵戦や人海戦術が通用する時代は過ぎ去り、これらの分野におけるテクノロジーの高さが戦争の勝敗を決すると言っても過言ではないかもしれません。
電子・通信テクノロジーが戦争における兵器の優位性の決定要因であるならば、それは、より優れた、即ち、高速の通信ネットワークを実現した側が有利であることを意味します。一瞬の差がものを言うと言えましょうこの点、5Gへの移行に当たって、アメリカと中国との間に規格争いが存在することは注目に値します。前者は、国防省を中心に高周波数領域(mmWave)の開発を進めており、後者は、低周波数領域(sub-6)において強みを持ち、両社の間には規格に違いがあるのです。この二つの方式、実のところ、速度に違いがあります。mmWave方式は、届く距離が短いために多数の基地局の設置こそ必要とするものの、sub-6方式よりも速度が速いのです。
そこで、想定されるのは、三つのパターンです。その第一のパターンは、アメリカのmmWaveがグローバル・スタンダードとなるシナリオです。尤も、このパターンは、独自にsub-6方式を率先して開発している中国は、対米依存、あるいは、有事に際しての通信遮断を回避するためにも自国への導入を見送ることでしょう。このため、mmWaveがグローバル・スタンダードとなる可能性は極めて低く、同方式は、同盟国に限って採用されるものと推測されます。
第二のパターンは、sub-6のグローバル・スタンダード化です。しかしながら、sub-6もmmWaveと同様の理由により、中国陣営に加わった諸国のみにおいて採用されるかもしれません。もっとも、価格競争力を有するファウェイ製品が、5G時代にあって安価で各国に輸出される場合には、同製品を採用した諸国では、知らず知らずのうちにチャイナ・スタンダードに適用した通信システムを導入したことになります。このことは、自国領域内での人民解放軍の展開を可能としますので、仮に自由主義陣営にありながら通信規格だけはsub-6を採用した国は、中国から攻撃を受ける事態に直面した場合、苦渋の決断を強いられかねません。何故ならば、人民解放軍のハイテク兵器の運用を阻止するためには、自軍のハイテク兵器にも使用されているG5の通信システムを破壊しなければならないからです(G5用の基地局を撤去すれば、通信は遮断される…)。
以上に述べた諸点を勘案すれば、最も高い確率であり得るシナリオは、米中がそれぞれ異なる規格を採用し、それぞれの同盟国もその規格に合わせると言うものです(中国が、既にG6や量子テクノロジーの開発に乗り出しているのはG5における劣勢を自覚しているからかもしれない…)。そして、この状況下では、少なくともmmWaveが使用可能な地域にあって米中がハイテク戦争に至った場合、通信速度に優るアメリカ軍が勝利することを意味します。乃ち、5G規格の分裂は、アメリカ陣営の諸国を中国の軍事的脅威から守る防御的効果があるのではないでしょうか。かつて、スペインは、ナポレオン軍の鉄道を用いた進軍を阻止するために、フランスのものと敢えて異なる鉄道規格を設けましたが、デジタル時代にあるからこそ、規格の問題は、より重要性を増しているように思えるのです。
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