遂に北京政府は、これまで隠してきた牙を剥くこととなりました。抗議活動に身を投じ、香港理工大学に立て籠もっていた学生は、警察隊の突入を前にしてみな遺書を認めたと伝わります。死をも恐れず、自らの命をも犠牲にして彼らが手にしたかったのは、自由であり、民主主義であり、そして、香港の未来であったことを思う時、その覚悟に涙を禁じ得ないのです。それがたとえ何らかの上部組織によって利用されたものであったとしても…。
今般、メディアが公に報じる犠牲者の他にも、警察によって自殺扱いにされたり、留置所等に拘留されているデモ隊参加者の数も相当数に上るそうです。警察から手酷い虐待を受けていたとする情報もあり、抗議運動に参加した人々には暴力的な弾圧の危険が迫っています。香港が第二の天安門となるリスクが高まる中10月15日、香港情勢を懸念したアメリカの下院は、全会一致で香港人権民主主義法案が可決し、次いで上院も今月19日に同法案を採択しています(翌20日、上院で加えられた修正法案が下院でも可決された…(2019年11月加筆))。邦訳では‘香港人権法’と略されていますが、‘香港人権民主主義法案’、即ち、‘民主主義’を省略せずに訳した方が、香港問題の本質をよく表しているように思えます。何故ならは、同問題は、価値観、即ち、国家体制をめぐる対立であるからです。
今後、同法が成立するには大統領の署名を要しますが、同法案は、香港市民の民主化を求める抗議活動を支持すると共に、イギリスからの香港返還時に制定された米国香港政策法に基づき、一国二制度の維持を前提として米国が香港に付与してきたヴィザや関税上の優遇措置を見直すと言うものです。毎年、国際公約でもあった香港の一国二制度が護られているかどうかをチェックし、仮にこの条件を満たしていない場合には、香港は、もはやこうした優遇措置を受けることはできなくなるのです。加えて、同法は、香港において基本的な権利や自由を侵害した者に対して、アメリカへの入国を拒否するよう大統領に義務付けてもいます。つまり、香港人権民主主義法とは、北京政府による香港の事実上の併呑、即ち、中国本土の共産主義体制への一体化―一国二制度の放棄―を強く牽制しているのです(香港に対する優遇措置によって、中国本土の共産党員や企業等も利益を得ているらしい…)。
これまで、イデオロギーの相違が米ソの対立軸をなした冷戦期とは違い、米中関係の対立は、貿易収支の不均衡や知的財産権の問題といった経済的な理由が主因とされてきました。中国は、経済分野にあって80年代に改革開放路線を選択し、経済体制は自由主義国とは変わらないのですから、政治を切り離して双方が経済的利益のみを享受できれば友好関係を保てるとする説が支配的であったのです。また、中間層の成長によりやがて中国も民主化するとする楽観的な予測もありました。しかしながら、こうした期待は、自由主義国の一方的な思い込みに過ぎなかったようです。政経が一体化した共産主義を奉じる中国側からすれば、経済成長を遂げ、一般の国民も情報や知識に触れるようになったからこそ、如何なる手段を使ってでも民主化を阻止し、権力と富を独占するために一党独裁体制を堅持しようとする強い動機、野望が生じたからです。つまり、自由主義国の期待とは反対に、経済が発展すればするほど、国民からの民主化要求は抑えつけられてしまうのです(もっとも、中国は、‘社会主義体制における民主主義’といった奇妙な論理で自国を民主主義国家と主張しているらしい…)。今では、ITや顔認証システム等を統治機構に全面的に導入し、体制に批判的な国民を一人残らず排除すべく、国民徹底監視体制を敷くに至っています。
香港で起きている一連の出来事は、まさに、自由・民主主義と社会・共産主義との対立の‘熱戦化’と言っても過言ではありません。そして、米中間の関係が双方とも絶対に譲れない価値をめぐる対立へとそのステージを移した時、香港人権民主主義法は、中国全土を対象とした‘中国人権民主主義法’制定への序曲となるのではないかと思うのです(タイトルでは目下の一般名称を使用…)。
来春、習近平国家主席が国賓として訪日する予定ですが、中国が民主化要求を暴力で封じ、国民の基本的な権利や自由を弾圧する国家である以上、アメリカと共に日本国民も、同訪日を取りやめるよう日本国政府に働きかけるべきではないでしょうか。人類普遍の価値を踏み躙る中国という国のトップ、即ち、弾圧者を、心から歓迎する日本国民はほとんど存在しないのですから。そして、日本国の要人達が弾圧者に対して卑屈な笑みを浮かべて阿る姿など、見たくはないのではないでしょうか。
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今般、メディアが公に報じる犠牲者の他にも、警察によって自殺扱いにされたり、留置所等に拘留されているデモ隊参加者の数も相当数に上るそうです。警察から手酷い虐待を受けていたとする情報もあり、抗議運動に参加した人々には暴力的な弾圧の危険が迫っています。香港が第二の天安門となるリスクが高まる中10月15日、香港情勢を懸念したアメリカの下院は、全会一致で香港人権民主主義法案が可決し、次いで上院も今月19日に同法案を採択しています(翌20日、上院で加えられた修正法案が下院でも可決された…(2019年11月加筆))。邦訳では‘香港人権法’と略されていますが、‘香港人権民主主義法案’、即ち、‘民主主義’を省略せずに訳した方が、香港問題の本質をよく表しているように思えます。何故ならは、同問題は、価値観、即ち、国家体制をめぐる対立であるからです。
今後、同法が成立するには大統領の署名を要しますが、同法案は、香港市民の民主化を求める抗議活動を支持すると共に、イギリスからの香港返還時に制定された米国香港政策法に基づき、一国二制度の維持を前提として米国が香港に付与してきたヴィザや関税上の優遇措置を見直すと言うものです。毎年、国際公約でもあった香港の一国二制度が護られているかどうかをチェックし、仮にこの条件を満たしていない場合には、香港は、もはやこうした優遇措置を受けることはできなくなるのです。加えて、同法は、香港において基本的な権利や自由を侵害した者に対して、アメリカへの入国を拒否するよう大統領に義務付けてもいます。つまり、香港人権民主主義法とは、北京政府による香港の事実上の併呑、即ち、中国本土の共産主義体制への一体化―一国二制度の放棄―を強く牽制しているのです(香港に対する優遇措置によって、中国本土の共産党員や企業等も利益を得ているらしい…)。
これまで、イデオロギーの相違が米ソの対立軸をなした冷戦期とは違い、米中関係の対立は、貿易収支の不均衡や知的財産権の問題といった経済的な理由が主因とされてきました。中国は、経済分野にあって80年代に改革開放路線を選択し、経済体制は自由主義国とは変わらないのですから、政治を切り離して双方が経済的利益のみを享受できれば友好関係を保てるとする説が支配的であったのです。また、中間層の成長によりやがて中国も民主化するとする楽観的な予測もありました。しかしながら、こうした期待は、自由主義国の一方的な思い込みに過ぎなかったようです。政経が一体化した共産主義を奉じる中国側からすれば、経済成長を遂げ、一般の国民も情報や知識に触れるようになったからこそ、如何なる手段を使ってでも民主化を阻止し、権力と富を独占するために一党独裁体制を堅持しようとする強い動機、野望が生じたからです。つまり、自由主義国の期待とは反対に、経済が発展すればするほど、国民からの民主化要求は抑えつけられてしまうのです(もっとも、中国は、‘社会主義体制における民主主義’といった奇妙な論理で自国を民主主義国家と主張しているらしい…)。今では、ITや顔認証システム等を統治機構に全面的に導入し、体制に批判的な国民を一人残らず排除すべく、国民徹底監視体制を敷くに至っています。
香港で起きている一連の出来事は、まさに、自由・民主主義と社会・共産主義との対立の‘熱戦化’と言っても過言ではありません。そして、米中間の関係が双方とも絶対に譲れない価値をめぐる対立へとそのステージを移した時、香港人権民主主義法は、中国全土を対象とした‘中国人権民主主義法’制定への序曲となるのではないかと思うのです(タイトルでは目下の一般名称を使用…)。
来春、習近平国家主席が国賓として訪日する予定ですが、中国が民主化要求を暴力で封じ、国民の基本的な権利や自由を弾圧する国家である以上、アメリカと共に日本国民も、同訪日を取りやめるよう日本国政府に働きかけるべきではないでしょうか。人類普遍の価値を踏み躙る中国という国のトップ、即ち、弾圧者を、心から歓迎する日本国民はほとんど存在しないのですから。そして、日本国の要人達が弾圧者に対して卑屈な笑みを浮かべて阿る姿など、見たくはないのではないでしょうか。
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