80年代以降、グローバリズムは、民営化の流れと共に全世界を席巻しました。東欧革命を機に社会・共産主義国諸国は相次いで市場のメカニズムを導入し、国営企業や公営企業を民営化しましたし、自由主義国でもインフラ事業の多くは株式公開により民間の手に移ったのです。軍隊や刑務所の民営化さえ主張されたのですから、民営化原理主義者の主張は留まるところを知らなかったのです。
しかしながら、今日、水道事業の民営化に対する反対論が強まっているように、全ての事業を民営化の対象とすることには疑問が呈されております。何故ならば、一つ間違えますと、民営化は公的事業の私物化を招き、民営化を正当化してきた消費者負担軽減論とは逆に負担増に帰結しかねないからです。
旧社会・共産主義国であれ、自由主義国であれ、民営化の一般的な手法は、新規に株式を発行するというものです。同時に事業体自体も組織改革が行われ、職員は公務員採用手続きから一般の民間企業と同様の採用形態に移行すると共に、経営陣の人事も政府から切り離されます。つまり、資本関係や人事・経営面における政府とのリンケージを断つことにより、他の企業と同列の独立した事業体となるのです。
しかしながら、とりわけ独占や寡占が生じ易いインフラ事業といった公共サービスの必要性に基づく事業分野である場合には、それが経済活動や人々の生活にとりまして必要不可欠であるために、同事業体の経営方針、料金設定、並びに、事業収益の使途や分配等により、消費者は‘搾取’されかねない立場となります。例えば、水道事業の民営化に伴い水道料金が上がるのも、株主が存在すれば国営や公営時代には必要のなかった配当金を払わなければなりませんし、自治体等からの赤字補填がなくなれば、民間企業として黒字経営を目指して水道料金を値上げするのは理解に難くありません(民営化されても、その分が減税されるとも思えない…)。また、政府の規制が緩く、かつ、民間事業者が公共性よりも利益幅の拡大を優先すれば、料金設定も自由自在となりましょう(特にインフラ事業は独占・寡占となり易いので、価格引き下げ競争も起きない…)。
また、天然資源の採掘や輸出入に関する事業である場合には、株式保有者による国家財産の私物化と云う問題をも起きます。目下、サウジアラビアでは、国営石油会社のサウジアルコムが株式の公開を計画していますが、その公開数は全体の数パーセントとは言え、石油採掘販売事業の性質からしますと、国家の資源に関する権利を売り渡したに等しくなります。
しかも、上述したようにグローバル化と民営化は一体化して進行していますので、問題はさらに深刻になります。加盟国のデジタル時代を迎えた今日では、IT大手によるプラットフォームの構築が問題視されていますが、こうした問題も、インフラ事業の私物化を理解するのに役立つことでしょう。例えば、先日、ソフトバンクが赤字決裁を公表した際に、ウィワークへの出資が指摘されていましたが、グローバル化と一体化した民営化は、日本国の通信事業等で得た利潤は必ずしも国内の消費者に還元されるわけではなく、むしろ、有望な投資先があれば優先的に海外に流れる現実を示しています(本当に有望な投資先であるのか否かは別として…)。さらに、上述したサウジアラコムの民営化では、中国の国有企業や政府系ファンドが同社の株式引き受け先の候補として名が挙がっていますので、このケースでは、民営化を介してサウジ権益の中国への譲渡と云う、主は違えども新たな‘国有化’とも言える状況、すなわち、サウジの石油企業の中国国営企業化が出現しているのです。
こうした現状を見ますと、‘民営化信仰’には要注意なように思えます。民営化が私物化を招き、さらには、外資や外国企業による国内市場の支配や国家資産の海外移転(新たな植民地化の手法?)にも繋がりかねないリスクがあるのですから、グローバリズムと共に民営化についても再検討すべき時期に至っているように思えるのです。
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しかしながら、今日、水道事業の民営化に対する反対論が強まっているように、全ての事業を民営化の対象とすることには疑問が呈されております。何故ならば、一つ間違えますと、民営化は公的事業の私物化を招き、民営化を正当化してきた消費者負担軽減論とは逆に負担増に帰結しかねないからです。
旧社会・共産主義国であれ、自由主義国であれ、民営化の一般的な手法は、新規に株式を発行するというものです。同時に事業体自体も組織改革が行われ、職員は公務員採用手続きから一般の民間企業と同様の採用形態に移行すると共に、経営陣の人事も政府から切り離されます。つまり、資本関係や人事・経営面における政府とのリンケージを断つことにより、他の企業と同列の独立した事業体となるのです。
しかしながら、とりわけ独占や寡占が生じ易いインフラ事業といった公共サービスの必要性に基づく事業分野である場合には、それが経済活動や人々の生活にとりまして必要不可欠であるために、同事業体の経営方針、料金設定、並びに、事業収益の使途や分配等により、消費者は‘搾取’されかねない立場となります。例えば、水道事業の民営化に伴い水道料金が上がるのも、株主が存在すれば国営や公営時代には必要のなかった配当金を払わなければなりませんし、自治体等からの赤字補填がなくなれば、民間企業として黒字経営を目指して水道料金を値上げするのは理解に難くありません(民営化されても、その分が減税されるとも思えない…)。また、政府の規制が緩く、かつ、民間事業者が公共性よりも利益幅の拡大を優先すれば、料金設定も自由自在となりましょう(特にインフラ事業は独占・寡占となり易いので、価格引き下げ競争も起きない…)。
また、天然資源の採掘や輸出入に関する事業である場合には、株式保有者による国家財産の私物化と云う問題をも起きます。目下、サウジアラビアでは、国営石油会社のサウジアルコムが株式の公開を計画していますが、その公開数は全体の数パーセントとは言え、石油採掘販売事業の性質からしますと、国家の資源に関する権利を売り渡したに等しくなります。
しかも、上述したようにグローバル化と民営化は一体化して進行していますので、問題はさらに深刻になります。加盟国のデジタル時代を迎えた今日では、IT大手によるプラットフォームの構築が問題視されていますが、こうした問題も、インフラ事業の私物化を理解するのに役立つことでしょう。例えば、先日、ソフトバンクが赤字決裁を公表した際に、ウィワークへの出資が指摘されていましたが、グローバル化と一体化した民営化は、日本国の通信事業等で得た利潤は必ずしも国内の消費者に還元されるわけではなく、むしろ、有望な投資先があれば優先的に海外に流れる現実を示しています(本当に有望な投資先であるのか否かは別として…)。さらに、上述したサウジアラコムの民営化では、中国の国有企業や政府系ファンドが同社の株式引き受け先の候補として名が挙がっていますので、このケースでは、民営化を介してサウジ権益の中国への譲渡と云う、主は違えども新たな‘国有化’とも言える状況、すなわち、サウジの石油企業の中国国営企業化が出現しているのです。
こうした現状を見ますと、‘民営化信仰’には要注意なように思えます。民営化が私物化を招き、さらには、外資や外国企業による国内市場の支配や国家資産の海外移転(新たな植民地化の手法?)にも繋がりかねないリスクがあるのですから、グローバリズムと共に民営化についても再検討すべき時期に至っているように思えるのです。
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