万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

日本企業は中国撤退を急ぐべきでは?

2020年07月25日 11時45分19秒 | 日本政治

 日本国内におけるネット上の世論の反応を見ておりますと、新型コロナウイルス感染症のパンデミック化もあり、中国の共産党一党独裁体制、並びに、香港国家安全維持法の制定を含む政策を積極的に支持する意見は殆ど皆無に近い状況にあります。一つ二つ肯定的な意見が見られるとすれば、それは、中国が世論誘導を目的に全世界に放った工作員による書き込みなのでしょう。文章表現にどこか共通の‘くせ’がありますし、人を人とも思わない残虐性や醜悪な支配欲に耐えうるメンタリティーを持っている人は、人類にあって僅かしか存在しないからです。

 

 誰もが、一刻も早くに危険極まりない中国という国から離れたいと思うのは、人としての自然な感情あり、理性に照らしても当然の判断でもあるのですが、残念なことに、日本国政府をはじめ、日本国の政界の反応は一般世論とは違っています。未だに親中派が政権の中枢にあって影響力を維持し、中国に対して明確な対決姿勢を示せずに狼狽えています。同盟国であるアメリカとの温度差は歴然としており、ここでも日本国政府は、中国への配慮を優先されていると言わざるを得ないのです。

 

 それでは、何故、日本国政府の態度はかくも煮え切らないのでしょうか。その理由として挙げられているのは、経済界からの圧力です。中国市場において利益を得ている日本企業が、中国からの撤退を渋っているというのです。しかしながら、この説、しばし吟味してみる必要があるように思えます。

 

 そもそも、経済界圧力説が想定している‘経済界’とは、日本企業、とりわけ、大企業です。しかしながら、‘規模’が競争上の優位性を約束し、質よりも量を求めるグローバリゼーションとは、必ずしも日本企業にとりまして決して有利な流れではなく、その実態が、‘チャイナライゼーション’であればなおさらのことです。実際に、家電分野に象徴されるように、日本企業の多くは世界市場でシェアを失い、‘集中と選択’の掛け声の下で収益性が見込める一部の事業を残しつつも、赤字事業部門は中国系企業に買収される運命を辿っています。規模に優る中国企業の躍進を前にして、日本の経済界が一致団結して政府に対して親中政策を進言しているとは思えず、現状を見れば、むしろ、保護政策を求める局面にあるのではないでしょうか。この点に鑑みますと、ここで言う‘経済界’が日本の経済界とは限らない可能性も見えてきます。

 

 そこで、推測されるのが、日本政府に圧力をかけている‘経済界’が、実のところ、海外の経済界である可能性です。仮に、日本国政府がマネーの力に弱く、日本国民よりも自らの利益の多寡を以って行動しているとするならば、より規模の大きなマネーにより強く反応するはずです。日中間の経済規模を比較すれば、中国企業の資金力、否、中国政府をバックとした‘チャイナ・マネー’が優るのは言うまでもなく、中国が賄賂政治の国である点からしましても、日本国政府が、チャイナ・マネーに靡いたとする憶測も成り立ちます。あるいは、その背後には、中国市場に莫大な投資を続け、グローバル戦略として日本国から中国への技術移転を促進させてきた国際金融勢力も隠れているかもしれません。何れにしましても、日本の経済界よりも、中国をはじめとした海外の経済勢力の方が、余程、日本国に親中政策を採らせたい動機を有しているのです。

 

 何れにしましても、日本国政府の親中政策は、大企業であれ、中小企業であれ、日本企業にとりましては望ましくはありません。少なくとも日本の経済界は、自己判断として中国市場からの撤退を急ぐべきではないでしょうか。中国と運命を共にすれば、米ドル決済からも除外されますし、技術協力や資源入手のルート、そして海外市場をも失います。また、中国排除が日本企業にとりましてチャンスともなることは、5G関連製品からのファウェイ排除により日本企業が復活する機会を得ていることからも伺えます(中国製品のシェアが消える…)。そして、中国と日本国を含む自由主義諸国とのデカップリングは、中国の軍事的脅威を平和裏に取り除く唯一の手段ともなりましょう。

 

 もっとも、日本国政府は、11月のアメリカ大統領選挙を前にして、親中派とも目される民主党の候補者であるバイデン氏の当選に備えて様子見をしているのかもしれません。しかしながら、喩え民主党政権が誕生したとしても、アメリカの世論からすれば、同国の対中政策がオバマ政権時代の宥和策に逆戻りするとは思えず、何よりも、自由、民主主義、法の支配の擁護は、政権の如何に拘わらず、自由主義国が結束して護るべき人類普遍の価値のはずです。ポンペオ米国務長官が警鐘を鳴らすように、日本国、少なくとも日本国政府が既に中国によって‘変えられている’ならば、日本国民は、今日、自らの国を取り返すべき局面にあるのではないでしょうか。


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