万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

次期総選挙では米中選択を争点に―試される日本国の民主主義

2020年07月28日 12時30分55秒 | 国際政治

 7月13日のポンペオ国務長官の演説を機に、米中の間では総領事館閉鎖の応酬に至り、米中対立のステージは一段上がった感があります。こうした中、日本国内では、‘日本国は、米中のどちらにつくのか、旗幟を鮮明にすべき’とする声も聞かれるようになりました。

 

 しかしながら、考えても見ますと、このような問いかけは、本来であればあり得ないはずです。何故ならば、日本国はアメリカと軍事同盟を結んでいるのですから。しかも、中国は、虎視眈々と尖閣諸島を狙っており、同諸島を手にした後は、沖縄、九州と侵略の歩を進めてくることでしょう。安全保障上の最大の脅威が中国であるのに、日本国がその中国を選ぶはずもありません。少なくとも日本国民の大多数は、同選択の回答についてはアメリカ一択と考えているはずです。

 

 ところが、現実には、米中対立の激化を背景として、あり得ないはずの米中間の二者択一が問われております。その理由は、日本国政府、あるいは、政権与党内部における‘菅・二階・今井・公明ライン’とも表現すべき親中派勢力の伸長にあるのでしょう。近年の日本国政府の親中に向けた方針の急転換は、日本国の政治の中枢において親中派勢力が多数を占めつつある現状を示しているのです。そして、こうした日本国政府の中国傾斜は、今日にあって日本国民との間に軋轢を生んでおり、国民の多くが政府不信を募らせる原因ともなっているのです。

 

 この流れからしますと、日本国政府が、国民世論を完全に無視して中国を選ぶシナリオも想定され、日本国民にとりましては最悪の事態です。自らの意に反して突然に中国陣営に組み込まれ、昨日まで同盟国であったアメリカと戦わされることとなるのですから。しかも、中国陣営の対米最前線として…。自衛隊の士気も著しく低下するでしょうし、日本国民の間からも対米戦争に対する反対運動が起きるかもしれません。

 

 それでは、こうした事態は、どのようにすれば回避することができるのでしょうか。この問題の解決の鍵は、日本国の民主主義にあります。つまり、国政選挙にあって、各政党、並びに、各候補者に対して、選挙公約に米中の何れを選択するのかを明記するよう、国民の側が要求するのです。いわば、‘踏み絵’を踏んでもらうということにもなるのですが、この方法ですと、有権者は、自らの政策選択として中国支持を公約とした候補者を落選させることができます。言い換えますと、米中選択を国政選挙における争点に設定すれば、自ずと親中派の政党や議員を排除することができるのです。

 

 もっとも、政治家とは得てして狡猾なものですので、IRの誘致などでも観察されたように、国民からの反対を受けそうな政策については、選挙の争点から外してしまう、賛否を明言しない、あるいは、虚偽の公約を掲げるといった姑息な手段を以って、国民から迫られた選択を避けようとするかもしれません。こうした場合には、これらの忌避行動をとった候補者は、親中派とみなしても構わないのかもしれません。同候補者は、親中派であることが選挙にあって不利であることを自覚するが故に、同選択から逃げたと推測されるからです。そして、自らの本音を隠そうとする行為自体が国民に対する不誠実さの現れであり、本心を誤魔化し、重大な局面にあって自らの姿勢を表明できないような小心な候補者は、そもそも政治家の資質を欠いているとも言えましょう。

 

 政界では、既に衆議院の解散時期も議論されるに至っているようですが、次期国政選挙にあって最も必要とされ、かつ、日本国の民主主義が試される争点は、米中選択ではないかと思うのです。‘米中のどちらにつくのか、旗幟を鮮明にすべき’とする問いについては、政治家の多くが、両国から迫られている選択のように捉えがちなのでしょうが、実のところ、同選択への誠実なる回答は、主権者である国民が政府に対して求めている回答でもあるのではないでしょうか。


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