万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

‘前門の虎後門の狼’とは中国とIT大手?

2020年07月30日 11時59分34秒 | 国際政治

 新型コロナウイルス禍を自らの勢力拡大のチャンスとした勢力は、凡そ二つあります。その一つは、武漢を発祥地としながら同感染症のパンデミック化を放任し、他国の混乱に乗じて拡張主義政策に乗り出した中国であり、もう一つは、都市のロックダウンや自宅待機要請を機にオンライン化を社会全体に浸透させたGAFAといったIT大手です。

 

 新型コロナウイルスに関する謀略説の真偽は不明なものの、中国とGAFAとは、密接な関係にあります。グーグル社については、中国市場からは撤退しているものの、米軍統合参謀本部議長のジョセフ・ダンフォード氏は、議会において同社が中国からプロジェクトを受注していたと証言しています。この証言については同社が否定したために一旦は収まったものの、その後も、同社の急進左派的な政治スタンスが‘国家反逆的’であるとしてトランプ政権から批判を受けているそうです。

 

他の三社はより中国との関係が明白です。アップル社の世界最大の工場は中国に設けられてきましたし、今般の米中対立の流れにあって、今後、2割ほどはインド等に製造拠点を移すそうですが、昨日の報道によりますと(7月29日)、新たに中国の「舜宇光学(Sunny Optical Technology)」をサプライヤーに加えるそうですので、脱中国の本気度は疑われます。

 

一方、フェイスブック社と中国との関係は、同社の創始者であり、かつ、同社の株式の75%を保有するマーク・ザッカーバーグ氏と中国の習近平国家主席との間の個人的な繋がりに見出すことができます。同氏の夫人はベトナムに移住していた華僑出身であり、子供の名付け親は習主席その人であったとされます。中国人民元のデジタル化構想とリブラ構想が凡そ同時期に打ち上げられたのは、単なる偶然出会ったのでしょうか。

 

そしてアマゾンもまた、中国との間には密接な繋がりがあると言わざるを得ません。アマゾンの通販サイトを見ますと、とりわけ、IT機器や日用雑貨にあって商品の大半を占めているのは中国製品です。同社は、ネット通販事業についてはアリババに押されて中国から撤退することとなりましたが、今なお、中国に同国製品の輸出ルートを提供し続けているのです(しかも、ユーザーに対して中国製とは明記していない…)。

 

以上に述べましたように、中国とIT大手が強く結びついている故に、謀略説も実しやかに囁かれることとなったのでしょうが、今日、両者とも、日本国を含めた普通の国家や国民にとりましては看過し得ない脅威となりつつあります。中国の場合には、軍事面に関心が集まりがちですが、情報収集による国民監視システムの脅威については、両者は共通しています(この点、中国のIT大手も脅威…)。全体主義国であれ、自由主義国であれ、ITの急速な普及は、広範な個人情報をも掌握している国家、もしくは、民間のIT大手によって、全国民が厳格な監視体制に置かれる恐怖を与えているのです。この脅威は、IT大手のお膝元であるアメリカにおいても同様であり、米司法省がこれらの企業の寡占を問題視して規制強化に動いているのも、故なしとは言えないのです。

 

GAFAを4人の騎士に喩えて称賛する向きもありますが、4人の騎士が忠誠を誓い、仕えているのは中国なのでしょうか。それとも、中国の背後に潜む国際金融財閥といった影の組織なのでしょうか。マイクロソフト社も、新型コロナウイルスのパンデミック化を好機としてワクチン事業を世界大に展開しようとしていますが、同社は、5人目の騎士なのでしょうか。もっとも、新型コロナウイルスについては、中国とIT大手との間には何らの協力関係もないのかもしれませんが、少なくとも、人類の対する脅威と言う側面においては、中国が前門の虎であれば、IT大手は後門の狼のように思えるのです。


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