万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

アメリカ連邦最高裁判所の不可解な判決

2020年12月14日 12時52分29秒 | アメリカ

 本日、12月14日は、アメリカの大統領の選出手続きにあって各州が選んだ選挙人が投票する日なそうです。本来であれば、事実上、次期大統領が確定される日となるはずなのですが、前代未聞の不正選挙疑惑により、今般の選挙に限っては大統領が未確定の状態が続くこととなりそうです。

 

 ところで、不正選挙疑惑の主たる戦場は法廷なのですが、今般の一連の裁判においてとりわけ不可解に思えるのは、連邦最高裁判所がテキサス州の訴えをめぐって、原告適格性を欠くとして却下した一件です。同判決は、不正選挙そのものを争点とするものではないものの、被告4州の違法な選挙制度の変更は事実でしたので、トランプ陣営は、当然に、違憲判決が下るものと期待していました。ところが、蓋を開けますと、連邦最高裁判所は門前払いをしてしまったのです。

 

 しかしながら、アメリカ合衆国が連邦国家である点を考慮しますと、連邦最高裁判所の却下は、あり得ないように思えます。例えば、EUは連邦国家ではなく、独立国家によって構成される‘国家連合’ですが、EUの司法制度では、構成国に対して他の構成国を訴える権利を認めています。況してやアメリカのような連邦国家ともなりますと、当然に州間にあって争いが生じる事態を想定しているはずです。州間の紛争を平和裏に司法解決できないとなりますと、武力による解決、すなわち、内戦に至るリスクが高くなるからです。

 

 しかも、今般の不正選挙疑惑は、選挙自体は州法に基づいて州単位で実施されたとはいえ、大統領の選出は合衆国全体に関わる事項です。選挙人の数、即ち、多数決で決定されるわけですから、一つの州でも不正選挙が行われたとなりますと全体に影響を与えます。例えば、X候補とY候補が大統領の座を争う選挙において、割り当てられた選挙人数が4議席のA州、3議席のB州、そして2議席のC州という3つの州があったとします。この単純化されたモデルで説明すれば、B州がX候補を、C州がY候補を支持した場合、A州において不正選挙が行われれば当然に選挙結果は変わります。不正選挙の結果としてA州がY候補を支持した場合には、本来、X候補が選出されるはずが、Y候補が当選してしまうからです。

 

 現実の訴訟では、不正選挙そのものではなく、不正選挙を容易にした選挙制度の変更が問題視されましたので、上記の単純モデルの通りではありませんが、少なくとも、B州には、A州を訴える権利、即ち、原告適格が認められて然るべきです。大統領選挙とは、連邦レベルでの国家的な制度ですので、各州の専権事項とは言い難いのです。この点に鑑みますと、最高裁判所による原告不適格の判断は、不正疑惑問題から逃げるための‘口実’であったようにも思えてくるのです。不可解な最高裁判所の判決は、不正選挙疑惑を晴らすどころか、より一層疑惑を深めているとも言えましょう。

 

 同最高裁判所の却下を以って、ネット上などでもトランプ陣営は万事休すという見方が広がりました。しかしながら、トランプ大統領は法廷闘争を継続する方針を示しておりますので、並行して進行している他の訴訟の行方を見守ることとなりましょう。その一方で、連日のように報道していたバイデン前大統領に関する報道が殆ど見られなくなり(表現も‘バイデン氏’に変化している…)、マスメディアでは奇妙な現象も起きています。嵐の前の静けさなのでしょうか…。

コメント (2)
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