万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

菅政権のNHK改革の真の目的は?

2020年12月30日 13時13分11秒 | 日本政治

 菅政権発足当初、携帯料金の値下げと並んで国民受けの良い政策として打ち出したのが、NHK改革でした。しかしながら、同政策については、携帯料金の値下げほどにの熱意は見られず、どこか、有耶無耶にされそうな気配が漂っています。

 

 NHKは、公共放送として特別の地位が与えられ、広告料に頼る他の民放各社とは異なり、受信料強制徴収システムによって運営されています。ところが、この受信料、今年10月にわずかに値下げされたといえ、年間地上契約で凡そ14000円、衛生契約で24000円ほどのままです。一律料金であるため、所得が低いほどに家計の負担が重くなります。それでも、NHKの放送が国民の生活に必要不可欠であり、しかも、無駄なく運営されているのであれば、国民も納得するのでしょう。しかしながら、現実は、野放図な事業拡大、政治的偏向、フェイクニュースの報道、芸能プロダクション並びに特定の利益団体との癒着も目立ち、NHKに対する国民の不満が鬱積することとなったのです。

 

 「NHKから国民を守る党」が登場しても然程まで違和感がなかったのも、こうした国民の不満が広がっていたからであり、ネット上では、事あるごとにNHKは批判の対象となってきました。そうであるからこそ、発足間もない菅首相がNHK改革を掲げたのも、自らの内閣に対する支持率をアップさせるための‘アメ’であると理解されたのです。しかしながら、最近に至り、菅内閣の真の目的は別のところにあるようにも思えてきました。

 

 このような疑いが湧いたのは、先日、NHKが菅首相の動向を報じたニュースを見た時のことです。正午のニュースの時間であったと記憶していますが、NHKは、菅首相が都内のデパートで開催されていた報道写真展を訪問したとするニュースを報じていました。そして、同ニュースのアナウンサーの口調が、あたかも中国の習近平国家主席、あるいは、北朝鮮の金正恩委員長の動静を伝える国営放送を思い起こさせるほど、どこか‘首相よいしょ’なのです。もちろん、訪問先が報道写真展ですので、メディアの一社としてNHKも関心を寄せたのかもしれませんが、NHKが懸命に菅首相に媚びているようにも見えたのです。

 

 この頃から、NHK改革に対する菅政権の姿勢が後退しはじめたようにも思えます。もしかしますと、菅首相が掲げたNHK改革とは、国民の不満に応えるためのものではなく、NHKを懐柔するための政治的脅迫手段であったのかもしれません。‘同政権に好意的な報道に徹し、菅首相のイメージアップに協力しなければ、NHKは解体するぞ’という…。

 

仮に真の狙いが政府によるNHKのコントロールであるならば、民意が無視されるばかりか、政府による情報統制が強化され、また一歩、全体主義体制に近づくこととなりましょう。もっとも、その目指す方向性は、中国や北朝鮮のような‘自民族礼賛型’ではなく、その逆のリベラル・グローバリズム型なのかもしれません。因みに、イギリスのBBCは、大英帝国の歴史を背負っているためか、すっかり‘リベラル・グローバル放送局化’しています。イギリスの公共放送とはいえ、アナウンサーの大多数がアジアやアフリカ系、あるいは、コーカサイド系であっても移民系であり、伝統的な‘イギリスらしさ’は殆ど失われているのです。

 

菅政権も、そのバックには共産主義勢力をも包摂するリベラル・グローバリズム勢力の影が見え隠れしておりますので、NHK改革の最終目標は、同局の‘中国電視台化’かもしれませんし、あるいは、‘BBC化’なのかもしれません。近未来のディストピアを描いた『1984年』の著者であるジョージ・オーウェルが、イギリス人であったことも気になるところです。何れにしましても、国民は、菅政権によるNHK改革の本気度、そして、その方向性(真の目的)について、注意深くウォッチしてゆくべきではないかと思うのです。


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