万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

米民主党の‘組閣’に見る勝てない理由

2020年12月18日 13時27分15秒 | アメリカ

 アメリカ大統領は、未だに正式に決定されているわけではないのも拘わらず、バイデン氏は、早くも‘組閣’に取り掛かっております。仮にトランプ政権が二期目となれば‘シャドー・キャビネット’となる顔ぶれなのでしょうが、この‘組閣’から、米民主党が勝てない理由が見えてくるように思えます。

 

 マスメディアによれば、アメリカ史上初めてとなる黒人系副大統領候補のカマラ・ハリス氏をはじめ、米民主党の‘組閣’には、多様性の実現を看板として‘史上初’の登用が並んでいます。国防長官には黒人系のロイド・オースティン氏、通商代表には中国系のキャサリン・タイ氏、厚生長官にはヒスパニック系のザビエル・ベセラ氏が、そして、運輸長官には、LGBTにして大統領候補の座をバイデン氏と競ったブティジェッジ氏の名も挙がっています。さらには、今般、内務長官への起用が報じられている女性下院議員デブラ・ハーランドも、先住民系としては初めての閣僚となるというのですから、初めて尽くし言えましょう。もちろん、‘史上初’ではないにせよ、財務長官に指名されたジャネット・イエレン氏のようにユダヤ系の閣僚の名も少なくありません(人口比からすれば過大代表…)。米民主党の統合政策における基本方針はアファーマティブ・アクションですので、組閣にもマイノリティー優遇策が色濃く投影されているのです。

 

 もっとも、今では、アファーマティブ・アクションは、社会的に差別されてきた人々に対する救済策というより、多様性の尊重が強調されることで、弱者救済的な意味合いは薄れてきています。今では、多様性の尊重は、経済の分野にまで浸透しており、本ブログの昨日の記事で扱ったように、企業統治の分野にあってもグローバル・スタンダードとなりつつあります。しかしながら、この手法、人種差別を解消し、社会統合を実現するために始まったのですが、よく考えても見ますと、今日では、全く逆の作用として働いているように思えます。

 

 差別とは、人種、民族、LBGTなど、本人の努力によっては変えることができない生来の属性によって不平等に扱うことを意味します。しかしながら、この定義に照らしますと、アファーマティブ・アクションは、マジョリティーを重要なポストから除外し、不利益な待遇を与えることを許しますので、れっきとした差別ということになります。逆差別とも称されるのですが、マジョリティーに生まれたばかりに社会・経済的なチャンスが狭まり、いわゆる「頭打ち(ガラスの天井)」という不利益を被るからです。如何なる職種であれ、あるいは、学歴等にも関係なく、マジョリティーは、常に不遇をかこつしかなくなるのです。

 

グローバリズムのマイナス影響によって弱者となったマジョリティーの苦境に、民主党の政策がさらに追い打ちをかけており、マイノリティーを殊更に優遇するとなりますと、この手法は、当初の目的とは逆に、弱者ではなく強者の救済、かつ、統合ではなく分離の方向に逆作用しているのです(マイノリティーを組織した米民主党による、マジョリティー支配)。

 

 そして、米民主党の正体がグローバリストとそれに対する‘対抗勢力’を装う過激派(社会・共産主義者…)の実行部隊であるとしますと、同党の基本方針がマイノリティー重視に転換された理由も理解されます。従来の‘労働者の政党’のままでは、製造拠点を中国等の海外に移転したり、海外から安い移民労働力を招き入れるには不都合であるからです(定住してきたマイノリティーにとりましても、新来の移民増加は失業の原因に…)。つまり、これまでの‘労働者重視’ではグローバリズムを追求することはできませんので、‘多様性重視’に切り替えたと考えられるのです(また、移民やその高い出生率によるアメリカの人口構成の将来的な変化をも期待したのかもしれない…)。

 

 そして、米民主党は、マジョリティーを含む労働者一般ではなく、マイノリティー重視に軸足を移したからこそ、大多数のアメリカ国民からの支持を失ったのではないかと思うのです。今般のアメリカ大統領選挙では、バイデン氏の史上最多とされる得票数は不正選挙によるものであったとされています。言い換えますと、不正行為を働かなければ民主党はトランプ大統領を上回る票数を得ることはできなかったことになります。ここに、米民主党にあって不正選挙の動機が認められるのであり、アメリカのみならず、全世界の人々が不正選挙を疑う理由があるとも言えましょう。しかも、今日、グローバリズムの旗振り役を務めている中国とも手を組んでいたともなりますと、米民主党の背信行為に対する批判は、今後とも強まることは避けられません。今般の米民主党による‘組閣’は、図らずも、不正選挙の動機を自ら明かしてしまったのではないかと思うのです。

 


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