万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

暴走する菅政権―ガソリン車新車販売禁止法の成立は阻止できるのか?

2020年12月03日 10時58分00秒 | 日本政治

 報道によりますと、日本国政府は、2050年に設定した温暖化ガス排出ゼロ目標を達成するために、2030年半ばまでに「ガソリン車新車販売ゼロ」を目指す方向で最終調整に入ったそうです。寝耳に水の公表と同時に‘最終調整’というのですから、菅首相、あるいは、政府による独断としか言いようがありません。

 

 2050年のゼロ目標は、具体的な政策が添えられていたわけではありませんので、国民の多くは、地球温暖化に対する日本国の国際協力を示すものとして好意的に受け止めたかもしれません。しかしながら、今般の‘ガソリン車販売ゼロ目標’は、抽象的な宣言の域を超えており、ガソリン車の製造や販売の禁止という立法措置を伴います。新車の販売禁止とは製造の禁止と同義ですので、法律が制定されたが最後、ガソリン車は、日本国内から消えてしまうのです。中古車が残るとする意見もありますが、化石燃料であるガソリンを販売するガソリンスタンドの多くも廃業となりましょうし、エンジンの故障や部品の摩滅等を考慮すれば中古車が永遠に使用できるわけでもありません。日本の自動車メーカーが強みを持つハイブリッド車については禁止対象から除外されるものの、排出ゼロの目標年である2050年までには、ハイブリッド車も製造・販売禁止となり、中国企業をはじめ海外メーカーが先行しているEVに全て置き換わることとなりましょう。

 

 ネット上の意見を読みますと、政府のガソリン車禁止方針については、批判の嵐が巻き起こっているようです。諸手を挙げて賛成の意見は殆どなく、政府の非現実的な方針に数多くの懸念の声が寄せられています。供給電力の問題、二酸化炭素削減効果への疑問、日本の自動車産業崩壊の危機、自動車価格の上昇、軽自動車への影響、経済全体に対するマイナス効果、農村部における移動手段の喪失、災害多発国における電気依存のリスク…など、国民の声の方が、政府よりもよほど現実を見据えています。何れの意見も合理性があり、誰もが、同方針の先行きに不安を覚えているのです。そして、菅政権は、EVにおいて世界市場の掌握を目指す中国、あるいは、脱炭素化に巨額の利権を有する国際組織に協力しているのではないか、とする疑いも、一層強まってくるのです。

 

 それでは、日本国政府の暴走を止める手立てはあるのでしょうか。国民の大多数が同方針に異議を唱えているのですから、政府は、禁止措置を見直して然るべきです。しかしながら、おそらく菅政権は‘世界計画’の実行のために擁立された傀儡政権なのでしょうから(サポートと引き換えに課された‘ミッション’かもしれない…)、反対の声を押し切って同方針を頑なに貫くことも予測されます。そこで、考えられる最も効果的な方法は、今後、政府から国会に上程される禁止法案の成立を阻止することです。菅政権は、総選挙を経て国民の信任の下で成立したわけではありませんし、ガソリン車新車販売禁止法は、何れの政党にあっても公約として掲げられたわけでもないからです。

 

この点を考慮しますと、与党の議員であっても、同法案に賛成票を投じる義務はないはずです。つまり、仮に、菅政権が総選挙を待つまでもなく同法案を国会で奇襲的に可決成立させようとする場合、日本国は、民主主義国家なのですから、与野党を問わずに何れの政党の国会議員も、自らを選出した国民の意向に応えた判断を行うのが筋ということになりましょう。もっとも、菅政権は、自民党に対して、全所属議員が賛成票を投じるように党議拘束をかけるように要請するかもしれません。しかしながら、首相とバックを同じくする二階幹事長が応諾したとしても、次期選挙での落選を恐れ、自民党議員の中には造反者が現れるかもしれません。

 

何れにいたしましても、今日の菅政権の暴走ぶりは、過去に前例を見ないほどに異常性が際立っています。国会も日本国民も、‘暴走車’と化している政府に対するブレーキのかけ方、あるいは、国家運営の民主的で安全な運転方法について真剣に考えるべき時に至っているのではないかと思うのです。


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