ロシアによるウクライナ侵攻は、かつてないほど西側諸国の団結力を強めたとも評されています。アメリカを筆頭に各国は対ロシア制裁に踏み切っており、自由主義国の結束は揺るぎないように見えます。こうした中、ウクライナのゼレンスキー大統領は、リモート形式とはいえ、イギリス、カナダ、アメリカ、ドイツの順で議会演説の行脚を始めたのですが(次は日本の国会?)、同大統領の演説は、まことに不可解と言わざるを得ないのです。
本日(3月18日付)の日経新聞朝刊には、各国議会における同大統領の演説内容を纏めて紹介する記事が掲載されておりました。もちろん、演説の主たる目的は危機に直面しているウクライナ支援の訴えにあるのでしょうが、中には、首を傾げざるを得ないフレーズも散見されます。イギリス議会においてハムレットの名セリフを引用したのは、如何にも俳優から政治家に転身したゼレンスキー大統領らしい’台詞’なのですが、とりわけ、アメリカ上下両院並びにドイツ連邦議会でのスピーチとなりますと、自らの聞く耳を疑う議員も少なくなかったことでしょう。何故ならば、逆効果となりかねない言葉が並んでいたからです。
アメリカ議会にあって、ゼレンスキー大統領は、公民権運動のリーダーであったキング牧師の名言をもじるような形でウクライナへの支援の必要性を訴えると共に(I have a need…)、ロシア軍による攻撃を先の大戦における日本軍の真珠湾攻撃にも喩えています。前者を見ますと、キング牧師は、確かに教科書にあってもアメリカの歴史において誰もが知る偉人として扱われています。その一方で、敢えて公民権運動の英雄を議会演説において持ち出したことが、アメリカ国内において人種的分断を越えた結束を生む効果があったのか、と申しますと、この点についてはいささか疑問となりましょう。公民権運動とは、白人層に対して黒人層が異議を申し立て、平等な権利を勝ち取る運動でしたので、バイデン民主党政権に対するアピールとはなっても、アファーマティヴ・アクションへの批判、並びに、BLM運動に象徴されるような根深い対立が未だに解消されていない状況下にあって、この発言が、ウクライナ支援に向けたアメリカ国民の結束を促したとは思えないからです。
また、既に日本国内のネット上にあって批判が沸き上がっているように、同大統領が、ロシアによる侵攻を真珠湾攻撃に喩えた点も、日本国とアメリカとの間に隙間風を吹かせる要因ともなり得ましょう。仮に、同大統領の真珠湾攻撃の喩えに反応してアメリカ国民の多くが’愛国心’を燃え上がらせ、ウクライナ支援の誓いを新たにするならば、それは、日本国民にとりましては心地よい出来事ではありません。むしろ、アメリカには未だに反日感情が潜んでいるのではないか…と疑うこととなりましょう(日米間の信頼関係に亀裂が…)。
そして、ドイツ連邦議会における演説にあっても、積極的なウクライナ支援に向かうというよりも、議員達からは複雑な反応が返って来たようです。ゼレンスキー大統領は、ドイツの演説では、ベルリンの壁に擬えて「新しい壁壊して」と訴えています。もっとも、その全般的な内容は、「ノルドストリーム2(独ロ間の天然ガスパイプライン)」といったドイツとロシアとの過去の経済関係が戦争をもたらしたとする認識の上での、ドイツの煮え切らない態度への批判であったとされます。このため、上述した新聞記事によれば、「演説終了後、ドイツ側の議員たちは立ち上がって拍手したが、一様に厳しい表情だった」そうです。同演説もまた、ドイツにおけるウクライナ支援の機運に冷や水を浴びせてしまった観すらあるのです(真珠湾攻撃の喩えも、日本国民の多くにとりましては冷や水…)。
ゼレンスキー大統領は、コメディアンの俳優でしたので、人々の心を動かす言葉や話し方を心得ているはずです。そして、チャーチルやヒトラーなど、政治家の多くも演説術に長けているのですが、今般の演説を見る限り、むしろ、西側諸国におけるウクライナ支援の結束を弛緩させてしまうという、逆効果が見受けられるのです。日本国での演説にあっても、さすがに真珠湾攻撃の表現は控えるとしても、手厳しい対日批判が含まれる可能性はあり、同演説の実現の難易度は高まったかもしれません。とは申しますものの、国会での演説は、同大統領、あるいは、’演説原稿のライター’の真の意図や目的を見極める重要な判断材料になるかもしれず、敢えて申し出
ロシアによるウクライナ侵攻は、かつてないほど西側諸国の団結力を強めたとも評されています。アメリカを筆頭に各国は対ロシア制裁に踏み切っており、自由主義国の結束は揺るぎないように見えます。こうした中、ウクライナのゼレンスキー大統領は、リモート形式とはいえ、イギリス、カナダ、アメリカ、ドイツの順で議会演説の行脚を始めたのですが(次は日本の国会?)、同大統領の演説は、まことに不可解と言わざるを得ないのです。
本日(3月18日付)の日経新聞朝刊には、各国議会における同大統領の演説内容を纏めて紹介する記事が掲載されておりました。もちろん、演説の主たる目的は危機に直面しているウクライナ支援の訴えにあるのでしょうが、中には、首を傾げざるを得ないフレーズも散見されます。イギリス議会においてハムレットの名セリフを引用したのは、如何にも俳優から政治家に転身したゼレンスキー大統領らしい’台詞’なのですが、とりわけ、アメリカ上下両院並びにドイツ連邦議会でのスピーチとなりますと、自らの聞く耳を疑う議員も少なくなかったことでしょう。何故ならば、逆効果となりかねない言葉が並んでいたからです。
アメリカ議会にあって、ゼレンスキー大統領は、公民権運動のリーダーであったキング牧師の名言をもじるような形でウクライナへの支援の必要性を訴えると共に(I have a need…)、ロシア軍による攻撃を先の大戦における日本軍の真珠湾攻撃にも喩えています。前者を見ますと、キング牧師は、確かに教科書にあってもアメリカの歴史において誰もが知る偉人として扱われています。その一方で、敢えて公民権運動の英雄を議会演説において持ち出したことが、アメリカ国内において人種的分断を越えた結束を生む効果があったのか、と申しますと、この点についてはいささか疑問となりましょう。公民権運動とは、白人層に対して黒人層が異議を申し立て、平等な権利を勝ち取る運動でしたので、バイデン民主党政権に対するアピールとはなっても、アファーマティヴ・アクションへの批判、並びに、BLM運動に象徴されるような根深い対立が未だに解消されていない状況下にあって、この発言が、ウクライナ支援に向けたアメリカ国民の結束を促したとは思えないからです。
また、既に日本国内のネット上にあって批判が沸き上がっているように、同大統領が、ロシアによる侵攻を真珠湾攻撃に喩えた点も、日本国とアメリカとの間に隙間風を吹かせる要因ともなり得ましょう。仮に、同大統領の真珠湾攻撃の喩えに反応してアメリカ国民の多くが’愛国心’を燃え上がらせ、ウクライナ支援の誓いを新たにするならば、それは、日本国民にとりましては心地よい出来事ではありません。むしろ、アメリカには未だに反日感情が潜んでいるのではないか…と疑うこととなりましょう(日米間の信頼関係に亀裂が…)。
そして、ドイツ連邦議会における演説にあっても、積極的なウクライナ支援に向かうというよりも、議員達からは複雑な反応が返って来たようです。ゼレンスキー大統領は、ドイツの演説では、ベルリンの壁に擬えて「新しい壁壊して」と訴えています。もっとも、その全般的な内容は、「ノルドストリーム2(独ロ間の天然ガスパイプライン)」といったドイツとロシアとの過去の経済関係が戦争をもたらしたとする認識の上での、ドイツの煮え切らない態度への批判であったとされます。このため、上述した新聞記事によれば、「演説終了後、ドイツ側の議員たちは立ち上がって拍手したが、一様に厳しい表情だった」そうです。同演説もまた、ドイツにおけるウクライナ支援の機運に冷や水を浴びせてしまった観すらあるのです(真珠湾攻撃の喩えも、日本国民の多くにとりましては冷や水…)。
ゼレンスキー大統領は、コメディアンの俳優でしたので、人々の心を動かす言葉や話し方を心得ているはずです。そして、チャーチルやヒトラーなど、政治家の多くも演説術に長けているのですが、今般の演説を見る限り、むしろ、西側諸国におけるウクライナ支援の結束を弛緩させてしまうという、逆効果が見受けられるのです。日本国での演説にあっても、さすがに真珠湾攻撃の表現は控えるとしても、手厳しい対日批判が含まれる可能性はあり、同演説の実現の難易度はさらに高まったとも言えましょう。とは申しますものの、国会での演説は、同大統領、あるいは、’演説原稿のライター’の真の意図や目的を見極める重要な判断材料になるかもしれず、敢えて申し出を受け入れるという選択もあるのではないかとも思うのです。
を受け入れるというのも、一つの選択肢なのではないかと思うのです。