万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

非道なロシアと怪しいウクライナ

2022年03月23日 11時15分20秒 | 国際政治

 本日、3月23日の午後6時に、日本国の国会ではウクライナのゼレンスキー大統領がビデオ演説を行う予定です。アメリカ議会の演説にあって先の大戦における真珠湾攻撃に擬えたこともあり、同大統領の演説内容には、メディアのみならず多くの国民も関心を寄せています。演説は、コメディアン俳優出身のゼレンスキー大統領の得意とするところなのでしょうが、同大統領の国際社会に向けたメッセージを読みますと、自ずと疑問も湧いてくるのです。

 

 ロシアが非道であることは疑いようもなく、報道によれば、ウクライナでは’悪魔の仕業’としか言いようのない行為が行われているようです。ゼレンスキー大統領も、とりわけロシアの残虐性を強調しており、都市部の住宅施設をも攻撃したため、女性や子供を含む民間人の犠牲者も多数に上ると報じられています。ロシアは、意図的に家族を破壊・離散させ、大量の難民を意図的に生み出すべく、作戦を遂行しているようにさえ見えます。ロシアは、先の大戦のソ連軍と同様に戦時国際法を順守する意思はさらさらなく、一般の民間人も標的にされているのが現状のようです。

 

 このため、ロシアは国際社会から厳しい批判を浴びることとなったのですが、一方の当事国であるウクライナにつきましても、ここかしこに不審な点が見受けられます。その最たるのが、ゼレンスキー大統領が再三にわたって国際社会に訴えている第三次世界大戦誘発論です。これまで、同大統領は、各国がウクライナへの支援を控えれば、やがて第三次世界大戦に至ると力説してきました。しかしながら、よく考えてみますと、この主張、逆なのではないかと思うのです。

 

 ゼレンスキー大統領の予測する第三次世界大戦への道は、ロシアのウクライナ侵攻⇒国際社会のウクライナへの軍事上の無支援⇒ウクライナの降伏⇒ロシアによる他の周辺諸国への侵攻⇒第三次世界大戦(ロシア陣営VS西側陣営)というものです。このシナリオに従えば、国際社会がウクライナに支援の手を差し伸べませんと、第三次世界大戦という望ましくない結果を招いてしまいます。このため、第三次世界大戦を回避せんがために、同大統領の訴えに思わず賛同してしまう人も少なくないことでしょう。

 

 ところが、現実には、他の諸国、とりわけ、アメリカをはじめとするNATO諸国がウクライナに対して表立って軍事支援をしますと(もっとも、現在でも設備や武器供与等は実施している…)、上述したシナリオの中間プロセスを通り越して、即、第三次世界大戦へと直結してしまいます。つまり、ロシアのウクライナ侵攻⇒国際社会の対ウクライナ軍事支援⇒第三次世界大戦というふうに、一気に世界大戦にまで至ってしまうのです。各国政府がウクライナに対する軍事支援に一歩引いた姿勢を示しているのは、ウクライナ支援が第三次世界大戦を引き起こすからに他なりません。

 

 このように考えますと、ゼレンスキー大統領が、何故、自国への軍事支援を獲得するために、かくも第三次世界大戦の脅威を持ち出すのか、疑問を抱かざるを得ません。ロシア側も核兵器の使用や第三次世界大戦への発展を’脅し文句’として用いていますが、ウクライナ側も、各国に対して恐怖心を煽るという点において変わりはないのです。合理的な視点からしますと、世界大戦化を回避するには、軍事支援、あるいは、同盟を通じた連鎖性を断つのが最も効果的です。となりますと、先ずもってウクライナ危機を当事国の二国間に抑え込む方が、よほど、世界大戦化を防ぐことができます。

 

 ゼレンスキー大統領は、本日の国会での演説ではウクライナ支援を訴えるのでしょうが、同大統領の主張に潜む非論理性、即ち、現実にはウクライナ支援が第3次世界大戦をもたらすという点には注意を要するように思えます。対応を誤りますと、日本国もまた、第三次世界大戦に巻き込まれる事態に直面することとなりましょう。そして、ロシアの動きをも考慮しますと(ベラルーシの参戦も懸念されている…)、両国が、二方面から人類を第三次世界大戦へと追いつめているようにも見えてきてしまうのです。


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