目下、ウクライナにあっては、東部のマウリポリをめぐる攻防戦が激化しています。ロシアによる同市の降伏要求は拒絶されたそうですが、マウリポリと申しますと、ネオナチともされるかのアゾフ大隊の本部の所在地でもあります。そして、このアゾフ大隊こそ、ウクライナ危機の真相解明の鍵を握る重要な存在となるかもしれません。何故ならば、今般の軍事行動においてロシアが唯一合法性を主張し得るとすれば、それは、同大隊によるロシア系住民、あるいは、ロシア人虐殺が紛れもない事実である必要があるからです。果たして、ロシアの正当防衛論(人道的介入)は成り立つのでしょうか。
ウクライナ危機を前にして、日本国政府を含め、自由主義国の政府の大半はウクライナ支持を表明しています。大手メディアが提供する情報のみを信じれば、ウクライナはロシアの一方的な侵略による被害国であり、ロシアは、戦争犯罪国家ということになりましょう。しかしながら、その一方で、ウクライナには、アゾフ大隊のネオナチ疑惑という、いわば‘とげ’が刺さっていることも見逃せない点です。
アゾフ大隊の設立過程を見ますと、確かにナチスの親衛隊と似通っています。もとより民間の組織であったものが、戦争を機として国家機関に正式に組み込まれているからです。アゾフ大隊も、クリミアをめぐるドンバス戦争を機に、民間の義勇兵部隊であったものが(前身はハルキウのサッカークラブ…)、2014年の国家親衛隊法によりウクライナ国軍組織であるウクライナ国家警備隊に編入されています。同組織のメンバーは、黒い制服に身を包んでいたとされますし(むしろ、ファシストの黒シャツ隊を思い起こさせる…)、そのエンブレムを見ますと、デフォルメされた鍵十字、並びに、黒い太陽が描かれています(黒い太陽はSSの創始者であったヒムラーと関連し、ネオナチ組織が使用している…)。
初代の司令官であるアンドリー・ビレツキー氏は、ウクライナの極右支持団体である社会民族会議の共同創設者ですので、同組織は、ナチスと同じく、ボランティアの民間警察・民兵組織の域を超えた政治団体でもあります。この点もナチスとの共通点なのですが、白人至上主義を掲げつつも(対ロシアでは無意味では…)、必ずしも反ユダヤ主義とも言えず、ナタン・カジン氏のようにアゾフ大隊の創設者の一人を自認するユダヤ人も存在しています(ゼレンスキー大統領もユダヤ人であり、イスラエルにアイアンドームなどの武器提供を求めている…)。ナチスの幹部の多く(凡そ70%とも)もユダヤ系であったとされていますので、水面下では、ユダヤ系の人脈が深く関わっている可能性も否定はできないのです。
以上に述べましたように、ウクライナには国家組織としてのアゾフ大隊は実在しますし、同組織が極右的な活動を行っていたことも事実のようです。そして、こうした日本国内では積極的に報道されない情報に接しますと、同組織がウクライナ東部でどのような行為を行ったのか、俄然、関心が高まります。否、ロシアの言い分にも耳を傾けるべき、との意見が現れてもおかしくはありません。言い換えますと、背後関係を含めてアゾフ大隊の実態を明らかにしないことには、ウクライナ危機の真相にたどり着くことは極めて難しいと言えましょう(ロシア、あるいは、超国家権力体がアゾフ大隊を操っている可能性も…)。
明日、23日には、日本国の国会でもウクライナ大統領のゼレンスキーによるビデオ演説が予定されているとのことですが、当事国の一方の言い分のみを鵜呑みにするのではなく、日本国側からもウクライナに対してアゾフ大隊等に関する事情説明を求めるべきではないでしょうか。そして、当事国双方、並びに、関係諸国が真に平和的解決を求めているのであれば、それは、国際社会に対する中立・公平的な調査委員会の設置、並びに、司法解決への道を開くのではないかと思うのです(仮に、茶番でなければ…)。