世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。
昨日、今月27日に予定されているオバマ大統領の広島訪問について、アメリカのライス大統領補佐官は、米CNNのインタヴューにおいて謝罪を改めて否定しました。
ライス補佐官の発言には、謝罪に否定的なアメリカ世論への配慮が伺えますが、その一方で、日本国の政権内部でも、アメリカ側から真珠湾攻撃等への謝罪を求められるのではないか、とする疑心暗鬼があるそうです。日本側としては、民間人の多くが無残に命を失った原爆投下と、軍事基地を狙った真珠湾攻撃等が同列に論じられることには抵抗感がありますが、双方が相手方に対して謝罪を主張する謝罪論争は、一つ間違えますと、日米関係のさらなる強化どころか、双方において感情的な対立を煽る結果になりかねません。この点は、昔の人々の知恵に学ぶべきであるかもしれません。
17世紀に三十年戦争を終結させたウェストファリア条約等には、相互恩赦の条項が設けられていました。第二次世界大戦の講和条約であるサンフランシスコ講和条約(対日平和条約)には明文による規定はありませんが、相互恩赦の精神は、今日においても引き継がれるべきです。不毛な謝罪論争に終止符を打つためにも。
戦争とは、相互に敵と見なした相手に対して残酷になり得るものであり、多かれ少なかれ、双方ともが平時であれば謝罪すべき行為を行っているものです。しかしながら、戦争が終結した後においても、相手方に対する敵対感情が残されるのであれば、それは、将来において再び戦争の火種となることでしょう。そうであるからこそ、相手を許すという寛容の精神が尊ばれるのであり、当時の時代背景を斟酌した相互理解と恩赦は、平和への道なのです。半世紀を越えて同盟関係を築いてきた今日の日米間系であれば、相互恩赦は、言葉には出さなくとも、既に実現しているのではないかと思うのです。
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「合法的行動をわい曲」 中国が米報告書に反発
本日の日経新聞の読書欄に、ハーバード大学のピュエット教授が著した『ハーバードの人生が変わる東洋哲学』が紹介されておりました。原題は、『道(The Path)』なそうですが、著者の理解によりますと、東洋思想は危険思想となりそうなのです。
紹介記事の表現を借りますと、本書では、東洋思想の人生観を、「社会は不平等であり、努力が報われるとは限らない。善が敗れて悪が栄える。そんな世界で調和と理想を追い求めてもむなしい。」と捉え、こうした無秩序な世界における処世術とは、「状況の複雑さや不条理な運命に向き合いながら、一つ一つ決断し、人生を絶え間なく修繕し続けるべき」と説いているそうです。
日本国では、儒教は、徳に価値を置いた秩序正しい社会の形成を促し、道を説く老荘思想も、個人主義的な人生探求の思想ではなく、自然無為のうちに天の道を体得することを目指す思想として、一般的には理解されています。まずは、日本国における東洋思想の理解とのギャップに驚かされるのですが、このビュエット氏の東洋思想の解釈にもとづく人生観、あるいは、世界観に最もよく当て嵌まるのは、古代中国ではなく、現代中国の政治指導者の思想です。南シナ海の中国による傍若無人な行動は、世界は無秩序であると決め込み、その中で自己の利益を最大化するために、自分勝手に利己的な”道”を切り開いているとしか見えないからです。本書は、学生やビジネスマン向けに著されていますが、この書に啓発された人々が、実社会においてこの所謂”東洋哲学”通りに行動するとしますと、法秩序を無視し、自己中心的に行動する人がさぞかし増えることでしょう。他者の迷惑省みず、なのです。
孔子も、老子も、荘氏も、自らの生きた時代の中国の悲惨な現状を憂い、ペン、否、筆をもって人間らしい社会のあり方を人々に示そうとしたのでしょう(もっとも、これらの思想そのものにも欠点も指摘されておりますが…)。思想の原点に帰りましても、東洋哲学が、憂うべき”悲惨な現実”をそのまま肯定し、自分だけの道を歩め、と説いたとは思えないのです。
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国際仲裁は「ショー」=南シナ海問題で中国
フィリピンの提訴により、今月中にも、常設仲裁裁判所から判断が示される予定の南シナ海。九段線が認められる可能性は殆どないため、中国は、国際仲裁を何としても潰そうと必死です。
しかしながら、中国が仲裁潰しに躍起になればなるほど、”無法者”のイメージがむしろ強調され、”悪あがき”の様相を呈してきます。”盗人にも三分の理”との諺もありますが、南シナ海問題については、国連海洋法条約が存在する限り、中国には、申し開きの余地がありません。また、同条約の第296条1項にも、「この節の規定に基づいて管轄権を有する裁判所が行う裁判は、最終的なものとし、すべての紛争当事者は、これに従う」とあります。この状態で、仲裁の判断に従わずに居座るとしますと中国は、フィリピンの権利を侵害し続けている国際法上の”侵略国家”となり、国際社会は、当然、何らかの行動に移ることが予測されます。国際社会における司法制度は、国内程には整備されてはいないものの、紛争の平和的解決を定めた国連憲章第6章の問題とされれば、安保理の多数決で対中制裁が決議される可能性もあります。否、国連レベルではなくとも、中国の違法行為を批判し、咎める個別の国家によって制裁が科されるかもしれません。第一段階の経済制裁の手段としては、中国製品に対する高率関税の設定、資本規制、中国籍船舶の入港禁止、さらには禁輸措置などが考えられます。全面的な対中経済封鎖もあり得ないことではありません。
国際レベルにおける経済制裁の発動により、曲がり角にある中国経済は、さらなる景気悪化に見舞われるかもしれません。中国は、仲裁の判断を無視した場合のマイナス影響を考慮すべきであり、国際社会もまた、経済制裁の可能性を示唆することで、中国を国際法秩序に従うよう圧力をかけるべきではないかと思うのです。
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『パナマ文書』の公開は、企業や富裕層の節税や脱税、並びに、国際的闇資金の流れに関するリーク事件の域を越えて、国際秩序のあり方をも問うているように思えます。何故ならば、『パナマ文書』問題こそが、新自由主義が世界レベルで進めてきた所謂”自由な世界”の象徴であるからです。
新自由主義の核となるコンセプトは、その名が示すように、徹底した自由化、しかも、国境の壁をできる限り低くし、もの、サービス、資本、人、情報、技術…の移動を自由化することです。全世界が一つの移動自由な市場となれば、企業は、自らの利益確保にとって最適な場所をピックアップし、分散的・効率的に事業を展開することができます。原材料の調達段階では、資源国とのパイプを構築し、製造段階では最も労働コストが低い国に製造拠点を設置するか、低コストの移民を受け入れ、販売段階では、高性能品は最も購買力の高い先進国市場に狙いを定めると共に、汎用品は新興国で販売し、技術開発分野では、最も技術力の高い国に開発拠点を設ける、あるいは、その国から人材をリクルートする…、といったことも可能なのです。否、実際に、既にこうした分散的で、効率的な事業展開は当然視されています。
国境が低ければ低いほど収益チャンスが拡大するため、まずは、国レベルにおいて国境を低くする政策を採用する必要があります。このために、新自由主義者の”伝道師達”は、日本国を含めて世界各国で自説を熱心に説き、国境に関する規制緩和に成功してきました。新自由主義的な政策こそ、国家の繁栄を約束すると…。
しかしながら、政府の誤算の一つは、国境を越えた移動の自由化が、納税者でもあり、雇用の源泉である企業や有能な人材といった、自らにプラスになるはずの要素が国外に逃避するチャンスをも提供することに気が付かなかったことです。企業の収益最適化行動のパターンからしますと、地球上に存在する限り納税義務から逃れられないのであるならば、最も税負担が低い場所に移動することは理に適っています。かくして、企業の多くは、”悪魔の見えざる手”に導かれるかのように、タックス・ヘイブンへと資金を逃避させたのです。
一見、合理的に見える企業の収益最適化行動が、実は、国家財政に寄生していながら、国家に対する公的義務の放棄、すなわち、企業のフリーライダー化であったことは、新自由主義思想には、国やそこに生きる人々の権利を一顧だにしない冷酷さの容認が含まれていることを示しています。新自由主義とは、国家のみならず、国際社会に対する責任をも切り捨てたところで成立する、自己中心的な思想でしかないのです。果たして、新自由主義者が描く世界は、人類にとりまして理想なのでしょうか。経済活動のグローバル化自体には経済成長を促し、人々の生活水準を高める効果が認められるものの、『パナマ文書』は、新自由主義の追求が、一部を富ませても、決して人類全体の発展には貢献しないことを示唆しているのではないでしょうか。
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中国は年内に200万人超の移住促す、貧困撲滅の一環で
『パナマ文書』で流出した凡そ21万件の情報において、抜きん出ているのは習近平国家主席の親族を含む中国であり、3万人を越えるとされています。その一方で、中国の14億人のうちの5%は極貧の生活を送っており、その数はで7000万人にも上っています。
これらの数字から単純計算しますと、共産主義を謳いながら、中国では、1%どころか0.000021%の富裕層が富を独占していることになり、恐るべき所得格差が固定化されている実態が垣間見えてきます。こうした中、中国政府は、貧困撲滅政策の一環として、200万人を越える貧困層の人々を生活環境が整った都市部に移住させる計画を立てていると報じられています。
この貧困対策、国民の多くが、パナマでの党幹部の蓄財を知ったならば、どのように反応するでしょうか。2000年以降に中国からタックス・ヘイブンへと流出した資金の総額は、日本円に換算して凡そ107兆から428兆円なそうです。これだけの巨額の資金があれば、貧困地帯の生活インフラ整備や生活水準の向上のための予算は確保できたはずです。移住促進を解決策としたのでは、貧困にある人々は、住み慣れた土地を離れざるを得ませんし、放棄地も増加して国土も荒廃します。しかも、中国政府は、AIIB等でも観察されるように、国策に適った海外案件には積極的に融資はしても、国内の貧困解消のための開発には見向きもしていません。また、過剰生産で有り余っている建築資材を、国内の貧困地帯における生活インフラの建設に振り向けるという発想も見られないのです。
中国政府が、『パナマ文書』に対して徹底的な報道統制を敷いている理由は、当文書によって中国の実態が暴かれれば、一般の国民の怒りを買うと確信しているからなのでしょう。一党独裁体制とは、共産党党幹部だけが莫大な私財を蓄えることができる独占システムであったのですから。習政権が大ナタを振るったとされる腐敗撲滅運動も、見る影もなく色褪せてしまいます。もしかしますと、後世の歴史の教科書には、”中国の共産主義体制を崩壊に導いたのは、強欲な共産党員達であった”と記述されることになるかもしれません。
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【オバマ氏広島訪問】中韓警戒「日本が被害者との印象を与える」
昨日、ホワイトハウスは、オバマ大統領の広島訪問を正式に発表しました。日程は、伊勢志摩サミットに合わせた今月27日ですが、中国と韓国では、批判的な意見も聞かれるようです。”日本が被害者との印象を与える”として。
広島と長崎における原爆被害は、既に、国際社会において人類が経験した悲劇の一つとして認識されております。平和記念資料館に展示されている被害状況を伝える写真や遺品等は、その場を訪れる人々の涙を誘います。核廃絶運動の原点も、無辜の人々を突然にこの世の地獄に突き落とした酷さにあるのです。ですから、オバマ大統領の訪問に対しては、反発が予測された当事国であるアメリカ国内でも、今のところは、訪問反対を訴える激しい抗議活動は報告されいないようです。犠牲者に対する慰霊という行為は、敵も味方もなく、非業の死を遂げた人々の魂を慰める人類共通の祈りなのです。ところが、中国も韓国も、日本国の原爆被害に対しては極めて冷酷です。この冷酷さは、日本国は、”敗戦国であるから、何をされても仕方がない”、あるいは、”酷い目に遭っても当然だ”とする、大陸や半島の歴史に由来する敗者に対する無慈悲な感情と、対日外交圧力ともなり得る”被害者カード”を何としても手放したくない政治的思惑によるものなのでしょう。両国は、自らの”歴史認識”を基準として、オバマ大統領の広島訪問をマイナスに評価しているのです。
しかしながら、第二次世界大戦後の国際社会の基本的な流れは、恩讐を越えた敵味方の和解でした。オバマ大統領の広島訪問も、日米両国が、過去の対立を超克してゆく過程の一ページとして人類史に刻まれることでしょう。中国と韓国は、今一度、オバマ大統領の被爆地訪問の普遍的な意義を問うてみるべきではないかと思うのです。
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パナマ文書で人為的な課税逃れは防げるか 国際的な課税制度確立を目指す動きが加速
『パナマ文書』がリークされた動機は、人類を救うことにあります。リーク者とされる”ジョン・ドウ(”名無しの権兵衛”の意味らしい…)”氏は、”タックスヘイブンを利用するグループを為すがままにしておくと、「資本主義」という名前で呼ばれていながら、その実は、‘別の新たなシステム’が成立してしまい、世界の多くの人々が、奴隷化されてしまう…”といった趣旨の危機感を語っております。
『パナマ文書』の分析や犯罪調査などは、今後、各国の当局によって進められるのでしょうが、その一方で、タックスヘイブンを利用した企業の租税回避行為に対処するための国際的な取り組みも始まっております。ジョン・ドウ氏が危惧する”別の新たなシステム”とは、市場で得られた利益の大半が企業経営者や富裕層に流れ、それがタックスヘイブンで隠されてしまうため、市場への再投資や被雇用者への賃金支払いが細り、税収としても国民に還元されることもない、非循環型の分離型システムであり、それはもはや、資本主義とも市場経済とも呼べない代物である、ということなのでしょう。
このシステムでは、タックスヘイブンを利用する企業の従業員でさえ、”奴隷化”されてしまいかねないのです。それでは、こうした危機に対する有望な解決策はあるのでしょうか。タックへヘイブンの利用動機は、これらの諸国の法人税率がゼロ%、あるいは、極めて低率であるからです。タックスヘイブンの存在を念頭に、法人税率については、日本国を含めて税率の下げ競争が既に発生しております。しかしながら、たとえ20%代に引き下げたとしても、タックスヘイブン諸国に敵うはずもありません。仮に、タックスヘイブンの”魔力”に対抗しようとするならば、どの国も、法人税率を0%まで引き下げなければならないのです。これでは、所得税のみが国民に重くのしかかりますので、どの国も、財政が悪化すると共に、国民の不満も鬱積します。そこで考えられる方法とは、タックスヘイブン諸国を含め、世界のすべての国々が、同率、一定幅、あるいは、最低税率を定める国際共通法人税何時を導入することです。つまり、タックスヘイブンを消滅させれば、この問題は、一気に解決へと向かうのです。
市場のグローバル化に伴って、今や、企業の活動は国境を越えて広がっております。こうした現実を考慮しますと、国際共通法人税率の導入は、現代という時代の企業活動の形態に適応していますし、企業の競争条件を等しくする効果も期待できます。果たして『パナマ文書』は人類を救うのか、それは、今後の国際社会の努力にかかっていると思うのです。
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オバマ氏、トランプ氏に懸念…「娯楽ではない」
トランプ氏が共和党の指名候補の座を手にした背景に、根強い国民の政治不信と失望感があったことは、既に各方面から指摘されております。トランプ現象の分析は、既存の政党が何に失敗したのかを検証する機会ともなります。
トランプ氏を支持している層は、経済のグローバル化の煽りを受けた中低所得の白人男性層であるとされております。その一方で、アメリカ国民の二極化は、共和党と民主党の間ではなく、伝統的なマジョリティーと今や総数においてマジョリティーに迫りつつあるマイノリティの間にあるようにも見えます。そしてこの分極化の原因については、思い当たる節があります。オバマ大統領当選時の国民統合の期待が萎んでしまい、逆に分裂が、何故これほどまでに深刻化したのかを考える時、ホワイトハウスが発信したある動画が思い出されるのです。
それは、今年2月に、アメリカ議会図書館の図書館長(Librarian of Congress)に、初めてアフリカ系の女性、カルラ・ハイデン氏が指名された際の紹介ビデオです。アフリカ系の図書館長の誕生もまた史上初の出来事なのですが、図書館内での様子が映しだされた当動画には、白人の人々が僅かしか映っておらず、図書館を利用する人々の殆どがアフリカ系の人々なのです。この動画、”図書館は全ての人々に開かれている”とする言葉で締めくくられているのですが、この編成は、あまりにも不自然です。おそらく、白人の人々がこの動画を見たら、自らの存在が消去されたかのようで不快に感じたことでしょう。アメリカ建国以来、荒れ地を開拓し、アメリカ議会図書館に収蔵されている書物や資料といった知的遺産も含めて、国造りに努力してきたとする自負があるでしょうから、内心において深く誇りを傷つけられたかもしれません。
この動画を視聴した時、アメリカの分極化の理由の一つが分かったように感じたのは、オバマ政権によるアフリカ系、あるいは、マイノリティーへの優遇策が、マジョリティーの反感を招くほどにまで行き過ぎていたからです。数においてマイノリティーとマジョリティが拮抗する微妙な時期においては、相手の存在を故意に無視するような姿勢や態度は、両者間の感情的な対立を煽るのみです。アフリカ系の人々にとりましては、その苦難に満ちた歴史を顧みれば溜飲を下げる思いなのでしょうが、国民統合という面からしますと、この逆差別的な手法は、反動と国民分裂を招くリスクに満ちていたと思うのです。
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「責任ある核保有国」強調=非核化・不拡散に努力―北朝鮮党大会で金第1書記
昨日から平壌で開催されている第7回労働党大会において述べられた金正恩第一書記の発言に、世界は唖然とさせられることとなりました。”責任ある核保有国として非核化に努める”と宣言したというのですから。
北朝鮮は、NPT体制において合法的な核保有国として承認されていないどころか、同条約に違反し、核・ミサイル開発を継続したことから、国連の制裁を受けております。いわば、国際社会における札付きの無法国家であると共に、自己中心の無責任国家でもあるのです。NPTは、確かに欠陥を内在させた条約ですが、それでも、核保有国の立場は、表向きは安保理常任理事国である五カ国に限られています。これらの諸国は、国連発足時に”世界の警察官”の役割を果たすことが期待された諸国であり、核保有国の地位も、核不拡散の義務とのバランスによって成り立っています。ところが、北朝鮮は、自らが違法行為を働いた”犯人”側に位置しながら開き直り、”警察官”の役割を自称しているのです。言い換えますと、北朝鮮は、”世界の警察官”を詐称し、他の諸国に対して”非核化や不拡散”という名の”取締”を行おうとしているのです。もちろん、核保有による軍事的な優位性と脅迫効果を高めるために。
アメリカのオバマ大統領は、世界の警察官から身を引くことを宣言しておりますが、その代わりに、北朝鮮という”偽警察官”が登場するのでは、国際社会の秩序は崩壊の危機に瀕します。それとも、北朝鮮は、党大会を舞台に犯罪者と警察が入れ替わるという誰も笑えないコメディー、あるいは、パロディを演じることで、核保有国の義務不履行やご都合主義を暗に揶揄しているのでしょうか。北朝鮮の”世界の偽警察官”宣言は、悪い冗談としか思えないのです。
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ロンドン市長に初のイスラム教徒=労働党が奪還
本日、ロンドン市長選挙において、イスラム教徒のサディク・カーン氏の当選を伝えるニュースが飛び込んできました。パキスタン出身の父を持つとのことですが、氏は、当選受託演説において、「ロンドンが不和ではなく団結を、恐怖ではなく希望を選択したことを誇りに思う」と述べております。
イスラム教徒のロンドン市長の誕生は、移民問題に揺れる混沌とした現代という時代の象徴のようにも見えます。イスラム過激派による地下鉄テロ事件を経験し、移民問題をめぐってEU離脱の賛否が拮抗する中、首都ロンドンの市民は、イスラム教徒を市長に選んだのですから。氏の当選には、ロンドンの人口に占める移民系住民が、既に過半数を越えたことも影響しているのでしょう。住宅不足の解消、治安の改善、並びに交通渋滞の緩和といった比較的宗教色の薄い行政問題が選挙の争点となったそうですが、民主的選挙は数の勝負となりますので、移民人口が増えるほど、移民系候補者の当選確率は高まります。イスラム教徒のロンドン市長は、イギリス史上初めてのケースとなりますが、果たして、カーン市長は、ロンドン市民に団結と希望を与えるのでしょうか。アメリカで史上初のアフリカ系としてオバマ大統領が誕生した時、国民の多くは、人種や政治的立場の違いを越えた国民統合の実現を期待したそうです。しかしながら、二期目の任期も残り僅かとなった今日、アメリカ社会の亀裂は逆に深まり、就任当初の国民の高揚感も今や冷めています。アメリカの事例は、言葉で言うほどには、”団結”が容易ではないことを示しているのです。
今般の選挙結果に対するロンドン市民の様子を見ますと、オバマ大統領の当選時のような楽観的で晴れやかな雰囲気もなく、どこかしら不安げにも見えます。カーン市長は、”市民は団結を選んだ”と断言しておりますが、イスラム教徒の市長当選が、どの程度、その多数がキリスト教徒である一般のイギリス国民と、移民であるイスラム教徒との団結を促すことになるのかは、今後の推移を見守るしかないのではないかと思うのです。
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今後も主導的役割=AIIBとは補完関係―アジア開銀総裁・年次総会が閉幕
不透明な決定手続きや中国のコントロールへの懸念から、日米ともにAIIBへの参加を見送ってきましたが、今般、アジア開発銀行は、年次総会の席で、AIIBと協調融資の覚書を交わしたと報じられております。アジア開発銀行とAIIBは”相互補完関係”と位置付けられておりますが、その行く先には何が待っているのでしょうか。
協調融資の第一号は、パキスタンの高速道路整備プロジェクトなそうです。中国によるパキスタンのインフラ整備と言えば、欧州まで繋がる「一帯一路構想」の”旗艦プロジェクト”、あるいは、”生命線”とまで称されており、この融資決定が、中国の意向に沿ったものであることは確かなことです。中国政府は、パキスタンへの5.5兆円ものインフラ融資計画を既に発表しており、43年間のグワダル湾の租借権をパキスタンから獲得しているのですから。すなわち、中国は、パキスタンを中核拠点として、陸路と海路の要所を同時に抑えようとしているのです。インドが、この融資案に反対したのかどうかは不明ですが、今年の4月には、中国は、ギリシャのピレウス港も租借しておりますので、一帯一路構想の実現に向けて、一気に動きが加速しております。
こうした中国の国策への傾斜への危惧に加え、パキスタンでは、ISの活動も活発化しいます。融資先のインフラがテロの対象となり、破壊されるリスクもあります(将来的には、人民解放軍のパキスタン駐留の可能性も…)。世銀にせよ、アジア開発銀行にせよ、本来の目的は、経済的に苦境にある国や地域の経済復興や生活水準の向上にありますので、協調融資を試みるならば、AIIBの案件であるパキスタンよりも、地震被害から立ち直れず、国民の生活環境も悪化しているネパールの復興支援を優先すべきです。
中国の強硬姿勢が際立つ南シナ海問題も、その動機の根源を探れば、インド洋を経て地中海に至る一帯一路構想の一環という実態が見えてきます。アジア開発銀行とAIIBの協調融資が、間接的に地域の緊張を高めているとしますと、日本国政府には、危機感が薄すぎます。アジア開発銀行とAIIBの”相互補完関係”は、AIIBがアジア開発銀行を踏み台とし、中国の覇権実現に手を貸すことになりかねないのです。そしてそれは、AIIBに引き摺られる形での国際機関のモラルの低下をも意味しているのではないでしょうか。
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【米大統領選】共和党、トランプ氏の指名確実 クルーズ氏に続きケーシック氏も撤退へ
共和党の指名争いからクルーズ氏とケーシック氏が相次いで撤退したことで、トランプ氏の指名が確実になったと報じられております。”異端児”とされてきた氏の指名については、ナチスの台頭に擬えて危惧する声も少なくありません。
トランプ旋風がアメリカを席巻した理由は、はっきりしております。トランプ氏は、”米国第一主義”を唱えておりますが、氏の主張は、アメリカの国家というよりも、”米国民第一主義”なのです。”米国第一主義”と”米国民第一主義”とでは、似ているようで、かなり違っています。既存のアメリカ政界の主流派は、共和党であれ、民主党であれ、前者に比重を置いた政策を追求してきました。共和党が軍事面を含めたナショナル・インタレストを重視し、民主党は、ウォール街とも密接に結び付いたよりリベラルな国際主義という違いがあったとしても…。ところが、トランプ氏は、これらのどちらとも与せず、第三の道を選択します。
それは、アメリカン・ドリームの夢に破れ、従来の自由化政策や移民政策等によって安定した生活を失った米国民の前に、一種の”救世主”として立ち現れることでした。民主主義国家では、1%の富裕層の1票とその他の人々の1票は同価値ですので、中間層崩壊の危機に直面している今日のアメリカにおいて、トランプ氏が”時代の寵児”になり得たのには、それなりに理由があるのです。否、苦境にある米国民を顧みなかった既存の政治が、トランプ氏出現の土壌を準備したとも言えるのです。排外主義に聞えようとも、”自国の国民を一番大事にする”と宣言する候補者は、他にいなかったのですから。
アメリカの大統領選挙は、いよいよ本選へと向かいますが、トランプ現象は、国民本位の政治という、これまで見過ごされてきた観点を浮き彫りにすることにもなりました。そして、この民主主義の原点とでもいうべき観点が大統領選の盲点であったことに、アメリカに限らず、今日の政治状況の危うさを意識せざるを得ないのです。
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尖閣、竹島は日本領…政府、資料を英語で公開
ネット情報によりますと、近頃、韓国では、日本国の国会における1956年の重光外相の発言を取り上げて、日本国政府が、李承晩ラインを認めた証拠とした上で、竹島の韓国帰属をも承認したかのような説が唱えられているそうです。しかしながら、この説、”藪蛇”となるのではないかと思うのです。
韓国側の論理は、”竹島は李承晩ラインの韓国側に位置するため、李承晩ラインの承認は、竹島の韓国領有の承認である”とする、三段論法なのですが、韓国側は、李承晩ラインが、米英をはじめ、海洋法に違反するとして国際的な批判を受けた事実を忘れております。しかも、1965年の日韓基本条約の締結時において、このラインは、既に消滅しているのです。同時に締結された日韓漁業協定と両立しないために自動的に消滅したとされていますが、もう一つ、韓国側が、李承晩ラインの不法性を認めた証拠があります。それは、同じく基本条約と同時に締結された日韓請求権協定に際して作成された議事録です。当議事録の2(h)において、「…この協定の署名の日までに大韓民国による日本漁船拿捕から生じた全ての請求権が含まれており…」とあり、この合意によって、日本国政府は、李承晩ラインの設定によって被害を受けた日本国の漁船や漁民の被害に対して補償を行っているのです(この協定は、日本国側の一方的請求権の放棄に近い内容であったが、双方が請求権の存在を認めた上で”解決”している…)。日本国側の韓国に対する請求権は、韓国側の李承晩ライン内の拿捕を不法とする立場から生じたものですので、韓国側が、この補償について合意したことは、即ち、李承晩ラインが違法であることを認めたことに他ならないのです。
以上の点から、韓国側の論理に従えば、”李承晩ラインが不法であれば、韓国による竹島の占領も不法である”ということになります。当時の国会答弁でも、日韓基本条約締結時の日本国政府は、竹島問題は、日韓紛争解決交換公文に従って解決されるとの認識していますので、竹島問題が今日まで未解決であるのは、その後、同公文の解決手続きに付すことを拒否した韓国側に責任があると言わざるを得ないのです。
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トランプ氏の発言によって蓋が開いてしまった日本国の核武装論については、戦前と同様の道を辿り、国際社会における孤立化を招くとする批判があります。”ABCD作戦”の再来を恐れる議論ですが、果たして現実は、この説通りの展開となるのでしょうか。
国際関係アナリストである北野幸伯氏が唱える孤立化論の最大の根拠は、NPTの制定目的が日独の核武装阻止にあった、というものです。しかも、70年代には、ニクソン・キッシンジャー外交における米中協調の流れの中で、米中両国間に”日本国に核兵器を持たせない”とする密約も存在したと指摘されています。つまり、孤立化論は、70年代の時代状況から、日本国の核武装は孤立化を招くと予想しているのです。しかしながら、既に、米中密約から半世紀近くが経過し、今日のアジア、否、国際社会の最大の脅威は、もはや日本国ではなく、軍事大国と化した中国です。ソ連邦が超大国として君臨した70年代においては、対ソ戦略上、米中接近には利害の一致が見られ、中国の軍事力も低レベルにありました。今やソ連邦は消滅し、ピルズベリー氏が『China2049』で暴露したように、中国は、覇権主義的な野心を露わにしております。国際情勢は著しく変化したのですから、日本国の核武装につきましても、その是非の判断は、国際社会全体の平和の維持を念頭になされるはずです。すなわち、中国の軍事的脅威と日本国の核武装を比較考量し、前者の危険性が後者を上回り、かつ、日本国の核武装が前者に対する抑止力として働くならば、国際社会は、必ずしも頭から日本国の核武装を否定するとは限らないのではないと推測されるのです。
北野氏は、アメリカとのニュークリアシェアリング条約締結の可能性に触れつつも、中国、ロシア、北朝鮮の反発を想定し、その必要性にも疑問を呈しております。おそらく、”西側諸国”が日本国の核武装を認めたとしても、”東側諸国”は、許さない、というロシア側のメッセージを伝えているのでしょう。しかしながら、この脅迫とも言える反応こそ、実は、核を保有する”東側諸国”が最も恐れている事態が、核による対日威嚇効果、あるいは、軍事的優位性の減滅であることを表わしております。氏は、ニュークリアシェアリングが実現すれば、北方領土は軍事要塞化され、日本国には戻ってこないだろうと述べておりますが、それでは、日本国が、ニュークリアシェアリングを諦めたならば、ロシアは、その見返りとして北方領土を返還するのでしょうか。何れにいたしましても、ニュークリアシェアリングの可能性も含めて、日本国は、現下の日本国の防衛、並びに、国際社会の平和にとって何が必要なのか、という問題意識を基本軸として、安全保障政策については、タブーなき議論を進めてゆくべきではないかと思うのです。
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漁船保護の巡視船派遣=沖ノ鳥島周辺へ出港―台湾
日本国の沖ノ鳥島を、EEZを設定し得る島ではなく「岩」であると主張する台湾は、漁船保護を名目として巡視船の派遣を決定しました。既に高雄を出港したとのことですが、この問題、危機であると共にチャンスでもあります。
台湾の馬政権は、国連海洋法条約を根拠として沖ノ鳥島の島としての地位を否定しておりますが、実のところ、台湾は、同条約の締約国ではありません。しかしながら、島か、岩か、という条約上の解釈や適用が争点となっているのですから、非締約国であっても、同条約が定める紛争の解決手段を利用できるはずです。第291条にも、「この部の定める紛争解決手続きは、この条約に定めるところによってのみ、締約国以外の主体に開放する」とあります。つまり、日台双方のどちらかが相手方を仲裁裁判に訴える、あるいは、日台両国が、紛争の解決を同条約に列挙されている裁判所に委託する道もないわけではないのです。両国間で平和的な司法解決が実現すれば、南シナ海等での紛争解決のモデル・ケースとなりますし、フィリピンが提訴している仲裁裁判の判断に対して拒否する構えを見せる中国に対しも、国際的な圧力となることは言うまでもないことです。また、台湾は、国際裁判の当事国になるのですから、独立国家としての地位を固める効果も期待できます。アジアにおける法の支配の確立は、力の支配を追求したい中国を除いて、全ての諸国に恩恵が及ぶはずです。
何れにしましても、日本国政府は、台湾に司法解決案を打診してみてはどうでしょうか。馬政権の間は拒絶されるかもしれませんが、蔡政権に交代すれば、台湾側が柔軟姿勢に転じる可能性もないとは言えないように思えるのです。
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