廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

Steam 繋がりで

2015年04月12日 | Jazz LP (Verve)

Stan Getz / The Steamer  ( Verve MG V-8294 )


昔も今もなぜか人気のないレコードで、どこに行っても安い値段なのに売れ残っています。
チープなジャケットデザインのせいかもしれませんが、ワンホーンのゲッツが聴けるんだからもう少し褒められてもいいんじゃないでしょうか。

私がジャズを聴き始めたガキの頃に参考書として読んでいた大御所評論家がお書きになった名盤百選の類の本で取り上げられていた名盤と言えば
ルースト盤だったりプレスティッジ盤だったのですが、今思うとそれはないんじゃないかと思います。 あんな録音状態の悪くて演奏時間も短い
演奏でスタン・ゲッツの魅力がわかるはずないじゃないか、と呆れてしまう。

このレコードは1曲のバラード以外は全てアップテンポの曲で固められています。 ピアノはルー・レヴィーで、この人とはのちにコンコードで
再演してその音盤が絶品なのですが、この盤でも闊達な素晴らしい演奏をしています。 アップテンポといってもゲッツのテナーは終始なめらか
なのでうるさい感じはまったくなく、どの曲も上質でマイルドな印象です。 演奏時間も長く、録音も成熟したモノラル期なので問題なく、
ゲッツのテナーの魅力を思いっきり楽しめます。

"You're Blase" という曲が昔から好きで、買った音盤にこの曲が入っていると嬉しくなるのですが、好きになったきっかけはゲッツとレヴィーが
コンコード盤で録音したものを聴いたことでした。 このヴァーヴ盤にも収録されているのですが、これがコンコード盤と演奏がほぼ同じなのです。
どちらも同じみずみずしい感性で演奏されていて、20年という時の隔たりが感じられないことに驚いてしまいます。 
ゲッツの晩年のスタイルはヴァーヴのこの時代に出来上がったものなのだということが、これを聴けばよくわかります。



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