廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

1947年のルースト録音

2016年04月10日 | Jazz LP (Roost)

Bud Powell / Indiana, Everything Happens To Me, Off Minor, I'll Remember April  ( Royal Roost 2992, 2998, 2996, 2991 )


バド・パウエルの最高傑作といわれる1947年のルースト・セッションでは、8曲が世に出ている。 実際は何曲収録されたのかはよくわからないけれど、
それらは10inchのSP4枚という形で発売された。 その後、1951年頃に10inchのLPとして切り直されて、以降LPフォーマットで何度も再発されている。

ただこの時の10inchLPは盤の材質がSP盤よりも遥かに粗悪なもので、きれいなものでも材質起因のバックノイズが酷く、鑑賞にはおおよそ向かない。 
それに現在ではきれいな盤が市場に出てくることはなく、見かけるのは傷だらけの酷い物ばかり。 だから、この録音に関してはSPのきれいなものか、
後の再発盤で聴くのが一番いい、ということになる。 

私がSP盤に手を出す時に決めていることは、値段の高いものは絶対に買わないということだ。 SP盤は事実上転売することができず(DUも原則買取不可)、
処分するのが非常に難しい。 それが如何に歴史的な価値がある内容であっても、SPを日常的に聴く人はもはやいないし、仮にいたとしてもそういう人は
既に大抵のものは架蔵済みで、今頃売りに出しても買い手が現れることはまずない。 だから、SP盤を買うということはその代金は一部ですら回収が
できないということを前提にしなければならず、高い値段で買うという行為は自殺行為に等しい。 1万円を超えるものなんて、私には論外だ。

この2枚は何年か前にたまたま無傷で1枚1,000円強で出ていたから買ったのだが、これがバックノイズは一切なく、ナローレンジなのは仕方ないとしても
音質は十分で何も問題ない。 片面1曲で、2分程度で針をいちいち上げなければいけないので面倒なことこの上ないが、パウエルのここでの演奏に漂う
濃密さは強烈で、かえって1曲ごとに区切りがあるほうがその余韻に浸れていいくらいなのだ。

一般的には "インディアナ" のハイスピード演奏に称賛が集中するけれど、私は "Off Minor" や "I'll Remember April" のようなミッドテンポの曲での
歌わせ方の中に漂う芳香に酔わされる。 それに、"インディアナ" のスピード感を褒めるなら、カーリー・ラッセルをまず褒めなきゃいけないだろう。
太く大きな音で乱れることなくインテンポで疾走するこんなベースはなかなか聴けるもんじゃない。 モダンベースの轟音を録り切った史上最初のレコードは
たぶんこれなんだろうと思う。

残りの4曲が手に入るかどうかはわからないけれど、パウエルのレコードは他にもたくさんあるから特に気にはならない。 いつも言うように、パウエルは
どの時期を聴いてもパウエルなのだから。


コメント (2)
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